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カラーゴーレムゲーム

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《5・誰かは誰かに見られてる》

 再び時間はゲーム開始直後まで戻る。
 鬼龍貴仁、常闇夜月、鬼龍白羽、医心方房内たちは、
 最初に遭遇した茶色のゴーレムに対し、ひとつのことを試していた。
「気概転身!」
 気合いを入れるため(?)の掛け声とともに、貴仁は魔鎧の白羽をまとい。そのうえで攻撃を行なってみたのだ。これで同時攻撃になるのか否か、気になるところだったが結果は。
「やったぁ! 倒せたよ、貴仁!!」
 どうやら魔鎧との合体状態なら、同時攻撃判定になるらしかった。
 実は一度モニターに問いかけてもみたのだが、実際にやってのお楽しみと言わんばかりに沈黙を保って教えてくれなかったのである。
「ヘルアンドヘブン!!」
 核を高々と頭上にかかげ、決めセリフを叫ぶ貴仁。どうも白羽を纏った状態だと、テンションが高ぶるらしい。
 それに白羽はきゃいきゃいと喜んでいたが、夜月は微妙な表情。房内に至っては、
「毎度思うんじゃが、ああして一心同体となるのはどうもエロイ感じがするのう。本人同士は気にしておらんようじゃが」
 そんなことを呟いていた。
 しかしそんな余裕も、また新たなゴーレムが姿を見せたことで変わる。
 貴仁はいつになく神妙な顔つきになって。
「みんな、最初のひとつ目はどうしても賭けになるけど。いいかな?」
「わたくしは貴仁様に従います」
「きっとへーきだって! やっちゃえ、貴仁!」
「運も実力のうち。リスクを考えない勝負などつまらんだけじゃ」
 確認をとるなり、貴仁は赤色のそいつに至近距離まで近づいていき。
 目測5mまできたところで持っていた核を叩き壊した。
「よし!」
 色も変化せず、自分たちがゲーム終了となることもなかったことに、ガッツポーズをとる貴仁。
 このゲームのポイントのひとつに、コピーゴーレムを見分ける方法で、
【他のゴーレムの『核』を半径5m以内で破壊すれば、体の色が変化する】
 というものがある。
 つまりはいちばん最初のリスクさえ無視すれば、この方法で芋づる式にゴーレムの色を調べ続けることが出来る。もちろんコピーに当たってしまえばそれまでだが、博士と助手を探す間、破壊数のポイントを稼がないのはあまりにもったいない。
 だからこその賭けであり、それに勝ったのだった。
 あとは、貴仁が房内の激励を受けながら心置きなく叩き壊し。新しく核をゲットできた。

 そこから四人は博士と助手を探しつつ、同時進行で白羽が殺気看破で青色を、房内がトレジャーセンスで黄色を捜索していった。ちなみに夜月は手に入れた核を奪われないように守っている。
 各々の役割を担いながらしばらく進んだところで、房内が通路の陰に隠れていた黄色ゴーレムを発見し。いざ倒そうとしたところで。
「貴仁様、後ろからも来ています!」
 背後から白色のゴーレムまで近づいてきた。
 どうするか、と考えることもなく貴仁は白のほうめがけて走った。
 それを受けて夜月は貴仁がかなり接近する頃合まで見計らって、核を投げ渡し。貴仁は道場破りの刀で、白ゴーレムとの距離1mのところで核を破壊する。さすがに今回は叫ぶ余裕は持っていなかった。
 すると白ゴーレムはガクガクと震動しはじめ。やがて体から核を出して動かなくなった。
「あ、そっか。白色は戦わずに核をゲットできるんだから、かなりお得だね♪」
 貴仁に纏われたままの白羽が、今更のように納得するなかで貴仁はすぐに黄色ゴーレムのほうにとって返し。手に入れたばかりの核を、ほぼ叩きつける勢いで壊す。
「おっと、さすがにラッキーも打ち止めのようじゃな」
 房内の言葉どおり、黄ゴーレムの色が迷彩塗装ごと変化し、今度は紫色に変わった。
 それを見て貴仁は核ごと壊さないように、相手へ攻撃を加えていく。
 白羽を纏った状態だと、地球人の攻撃と見なされるかどうかわずかに疑問だったが。そいつは刀で何度か斬られた末に倒れ。核をコトリと床に落として動かなくなった。
「さて。どうするかのう? 壊せる核がなくなってしまったわけじゃが」
「何度もリスクを冒す必要はないし、ここからは博士と助手さん探しを優先しよう。しばらく歩いて見つからなければ、また最初の作戦でいく。これでどうかな」
 一同に否はなく、コピーの核は房内が預かって捜索を再開する貴仁たち。
 そこからは幸か不幸か、しばらくゴーレムとも誰とも遭遇することなく迷路を進んでいくことになったが。
 ゲーム開始から30分が経ったくらいのところで、
「みんな。ちょっと止まって」
 先頭を歩いていた貴仁が、戦闘の音に気がついて足を止め。
 全員立ち止まってこっそり先の通路を覗きこむと、
 戦っていたのは氷室カイと黄色のゴーレムだった。
 四人にとっては彼が自分たちの脅威になるかどうかが気になるところだったが、それを判断するのにうってつけの材料が、彼の顔に存在していた。
「あれは、もしかして例の眼鏡か?」
「おそらくそうでしょう」
「うん。なんかファッションと似合ってないカンジだし」
「ふむ。とすれば、わらわたちより一歩先をいっているのは確かじゃのう」
 房内は『どうする?』という視線を、コピーの核を持ち上げながら、貴仁に投げかける。
 貴仁はわずかに迷う仕草をしたが。最終的には頷いて、房内にある指示を出した。
「ここまでだな。とどめをささせてもらう」
 当のカイは四人には気づかぬまま、ある程度痛めつけた黄色ゴーレムへ向けて、いままさに歴戦の武術を活用しつつ妖刀村雨丸で斬り捨てようとしていた。
 その瞬間を狙って、房内はコピーの核を投げつけた。
「!?」
 カイが驚愕に目をむいた時には、ゴーレムをその核もろともに一刀両断してしまって、
『アナタはコピーの核を破壊してしまいました。残念ながらゲーム終了です。手持ちの核とメガネはその場に置いて、こちらの案内に従い一旦ここから退席をお願いします』
 直後どこからともなく非情のアナウンスが流れてきてしまった。
「くっ。他の参加者からの妨害か、俺としたことがうかつだった」
 貴仁たちの姿を見て唇を噛み締めるが。敵チームに腹を立ててもしかたないと、カイはメガネをその場に置いて潔く去っていった。
 貴仁たちはそれを見送ったあと、破壊されたゴーレムの残骸からこぼれ落ちた核と、判別するメガネを手に取る。
「これ、俺たちがもらってもいいのかな?」
「いけないならそのようにアナウンスがくるでしょうし、構わないのではないでしょうか」
「うーん。でもちょっと気がひけるよね」
「いいではないか。使えるものは使ってなにが悪いんじゃ」
 判別のメガネは手に入ったが、白のゴーレム対策として夜月が核を持つことにして再度迷路内の捜索にうつる四人だが。
「ところで、当たり前のように俺がつけてるけど構わないのか?」
「はい。貴仁様を差し置いてわたくしが貰うわけにはいきません」
「べつにコピーがわかればいいだけだしね。正直そのメガネ、ダサいもーん」
 悪気のない白羽の言葉に、貴仁はなんだか切ない気分になった。
 とはいえ。相手がコピーかどうかを気にしながら戦うというのは、メンタルな部分でもそれなりに負担がかかる。その辺りの苦労がなくなったのは大きいので、ダサいのも我慢することにする貴仁であった。
「おっと。言っているそばから新たな敵じゃな」
 ものの数m歩いた程度で、今度は緑色をしたゴーレムが、貴仁を狙い近寄ってくる。
 さっそく貴仁は目をこらすが。特になにが変わっている様子もない。
「こいつはコピーじゃないな。でも、緑色となると厄介かもしれないな」
 つぶやき、試しに刀で斬りつけてみる。
 ガィンという音とともに手に震動が伝わってくるが、なんだか通常より帰ってくる手ごたえが薄い感じがして。ゴーレムのほうも表情はわからないが、すこし動きを止めただけであまり効いている様子がない。
「魔鎧装着の状態だから、地球人の俺が攻撃しても一応はダメージがあるみたいだけど。威力は半減してるのかな?」
「それじゃあ、今度はボクがやってみるよ!」
 鎧状態の白羽がパイロキネシスを発動させると、緑ゴーレムはその火をくらってわずかに後ろへよろめいた。やはり地球人以外の攻撃こそが効果的らしい。
「それでは、ここはわらわたちだけで片づけるかの」「サポートは任せてください」
 房内は怒りの歌で、仲間たちの攻撃力を向上させ。
 夜闇がサイコキネシスで逃げられないように相手を押さえておく。
 その間に白羽は、もう一度パイロキネシスで発生させた真紅の火炎を頭上に掲げ、一気にゴーレムへとぶつけるべく放った。
(いい感じだ。めんどくさがってたけど、このぶんならいいところまで行けるかもしれない)
 貴仁が、わずかな期待感を抱きながらゴーレムへと真っ直ぐに飛ぶ炎の塊を眺めていると、
 唐突に横かなにかがら飛んできたのを見た。
 それの正体が鉄の球だとわかり。
 一秒後にどう見てもゴーレムの核であるとわかって。
 二秒後に自分たちがさきほど行なったことが脳裏に浮かんで。
「しまった!」
 人を呪わば穴ふたつ。
 投げ込まれた核は、ゴーレムもろとも炎に包まれ。
 衝撃でバキリと音を立てて砕けた。もちろん、その核の種類は言うまでもない。
『アナタはコピーの核を破壊してしまいました。残念ながらゲーム終了です。手持ちの核とメガネはその場に置いて、こちらの案内に従い一旦ここから退席をお願いします……』
 淡白なアナウンスと共に、鬼龍貴仁たち四人のゲームはここまでとなった。

 落ち込む白羽と、それをなだめる貴仁たちが退場していったあと、
「悪く思わないでくれよ。こちとら単独参加なんで、優勝のためには手段を選べないんでな」
 隠れていたエヴァルトは彼らが持ち歩いていた核ひとつと、飛び出たまま放置された緑ゴーレムの核をまとめて壊して。しっかりメガネも貰いうけて去っていった。