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ザナドゥの方から来ました シナリオ2

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第7章


 Dトゥルーとの戦いは、いよいよ混迷を極めていた。

「へっへーっ!! つかまらないよーっ!!」
 Dトゥルーの剣を素早い動きでかいくぐって、鬼崎 朔は歴戦の武術を叩き込む。
「えーいっ! 月光蝶キーック!!」
「ぬうっ!!」
「でやあああぁぁぁーっ!!!」
 そこに、小鳥遊 美羽のヴォルケーノ・ハンマーがうなりを上げた。
 Dトゥルーはそれを辛うじて盾で受け止めるが、怪力の籠手で強化された一撃は、盾ごとDトゥルーの動きを封じる。
「ふん!!」
 その盾から美羽に向けて闇の弾を発射するDトゥルー。そこに、コハク・ソーロッドが横っ飛びに抱きついて、攻撃を回避させる。
「大丈夫かい!?」
「え、ええ……」
 美羽と同じく『若返りの茶』でおじいちゃん状態から抜け出したコハクは、若かりし頃の体力を取り戻していた。

「さあ、いくよーっ!!!」
 ティア・ユースティがブリザードで氷の嵐を呼び出した。
 それを盾で防ぐDトゥルーだが、ティアはブリザードの手を緩めずに、Dトゥルーの盾と鎧は徐々に凍り付いていく
「ぬ……」
 Dトゥルーの動きが止まったその隙を、朔は見逃さず『我は射す光の閃刃』を放つ。


「輝け、月光蝶!! ムーンライト・ビィィィムッ!!!」


 朔が身に着けた正義マスクから、まばゆい光が放たれてDトゥルーを直撃した。
 そこにタイミングを合わせ、もう一度美羽のヴォルケーノ・ハンマーが風を切る。
「これで、終わりよーっ!!!」
 美羽のフルスイングは、凍りついたDトゥルーの胴体に直撃し、鎧の一部を破壊した。
「見えたっ!!」
 その鎧の中から、Dトゥルーの内部が見える。ブラックタワーの前で戦ったときと同じだ。そこには、Dトゥルーの肉体を維持する『核』がある。


「くらえーーーっ!!!」



 コハクのライトニングランスがDトゥルーの中核を貫く。
「ぐはぁっ!!!」
 Dトゥルーは、口から緑色の血を吐いた。コハクが突き刺さった飛竜の槍を抜くと、Dトゥルーは苦しげに口を開いた。


「――見事だ」
 と。


                    ☆


 緋柱 透乃は、荒い息を整えて、呟いた。
「……はあっ、はあっ……そろそろ……かな」
 それに合わせて、Dトゥルーも一時、攻撃の手を緩めた。
 長時間に及ぶDトゥルーとの戦いは、互いを激しく疲弊させていた。
 Dトゥルーの剣の攻撃力は凄まじい、もしまともに喰らえば一撃で致命傷を喰らう可能性もある。
 そのような極限の状態での叩き合いは互いに精神力を著しく消耗させるものだが、これこそが実力が拮抗した相手との戦いの醍醐味でもある。
「……どうした、意気込んできたわりには防戦一方ではないか。まさか、これで終わりというわけではあるまい」
 だが、スピードに関しては透乃に一日の長がある。回避と防御に重点を置いた序盤戦で、透乃はDトゥルーの攻撃のクセを読み始めていた。
 そこに緋柱 陽子が中距離から凶刃の鎖【訃韻】で援護することで回避率を上げている。
「へへっ、まさか!!」
 とはいえ、もちろん透乃とて無傷なわけではない。
 Dトゥルーの攻撃は剣術以外にも闇の弾や触手と幅広い。必殺の一撃を喰らうことだけは避けていたが、触手や魔法のダメージは次第に蓄積されていく。
「……っ!!」
 額から流れる血を、目に入らないように拭い払う。腕から伝う赤い飛沫が床に模様を作った。
 透乃もそろそろ感じていた。
 戦いを終わらせるべき局面の、訪れが近いことを。

「……透乃ちゃん!!」
 陽子が透乃を狙ったDトゥルーの剣に、鎖を絡ませる。それが反撃の合図。
「くらえ、必殺の闇黒戦技――ダークブリンガー!!」
 未だにザナドゥ時空に取り込まれたままの泰宏が、膠着したバランスを崩すために動いた。
 いままで遠距離からの援護に徹していた泰宏は、一気にDトゥルーとの距離をつめ、ライトブリンガーを放つ。

「ぬうっ!?」
 つい、目の前の透乃と中距離の陽子の攻撃に集中していたDトゥルーは泰宏に対する対処が遅れ、そのライトブリンガーを盾で受け止めざるを得ず、動きを止める。
 そして、その隙を見逃す透乃ではなかった。

「――チャンス!!!」
 透乃が高く跳ね上がり、Dトゥルーを頭上から狙う。Dトゥルーは迎え撃つために剣を振るうが、それもまたフェイントの一環だったことをすぐに知ることになる。


「――失礼します」


 上方向に気を取られたDトゥルーの死角を縫って、いつまにか陽子が接近していた。
 Dトゥルーの盾の内側に滑り込んだ陽子は、自らの光条兵器『緋想』を装着した左拳で、渾身の正拳突きを放つ!!
「ぐううっ!?」
 その正拳と同時にアルティマ・テューレが放たれ、それと同時にDトゥルーの頭上に跳ねた透乃の攻撃が炸裂する!!
「これで、どうだーっ!!」
 烈火の戦気をによる強力な炎熱攻撃、そこに等活地獄の組み合わせで、陽子との属性間の反発作用を狙った攻撃だった。

「ぐわあぁーーーっ!!!」

 Dトゥルーの叫び声が響く。透乃と陽子の4属性同時攻撃はその威力をいかんなく発揮し、Dトゥルーの体内で駆け巡ったエネルギーは内側からDトゥルーを破壊した。


「――」
 やがて、Dトゥルーは鎧の内側から緑色の血を噴き出しつつ、重々しく口を開く。


「――見事だ」
 と。


                    ☆


 Dトゥルーとの戦いの決着が着けられようとしている。

「へっ、こりゃあいい。刀としちゃあ使えねぇが、魔法の杖としちゃあ上出来だぜ!!」
 カルキトス・シュトロエンデは『対神刀』を掲げ、強力なブリザードで『王の間』を埋め尽くした。

「行け、ルカ!!」
 部屋中に蔓延する触手の動きが鈍ったところで、夏侯 淵のレーザーガトリングが弾幕を張り、次々に触手を封じていく。

「――ふん!!!」
 だが、それでやすやすと倒される魔王・Dトゥルーではない。
 手にした剣を大きく振るうと、衝撃波が部屋中を襲い、カルキノスと淵を直撃した。
「――ちっ!!」
 舌打ちをひとつしたカルキノスと淵は、しかし攻撃の手を緩めない。強大な敵に対する必殺の布陣。ルカルカ・ルーとダリル・ガイザックたち4人が導き出した結論は、短期決戦。

「どうした……国を護るというのは口だけか!?」
 さらに、Dトゥルーの盾からは闇の弾が乱射され、部屋中を埋め尽くした。

「垂っ!!」
 その場にいたライゼ・エンブは朝霧 垂を守る為、我は射す光の閃刃で闇の弾を相殺する。
 未だにザナドゥ時空に引き込まれたままの垂は、ひたすら弱気になりながらも、王の間の激戦に打ち震えた。

「や、やっぱり魔族になんて勝てるわけないんだよ!!
 そもそも魔族なのに機晶姫とか花妖精とか地祇とか、種族がめちゃくちゃすぎるんだよっ!! 無茶言うなよ!!」


 それに関しては、正直すまんかったとしか。


 やけっぱちになった垂は、手にしたマシンガンを乱射した。
「うりゃあああぁぁぁっ!!!」
「何ぃっ!?」
 マシンガンの弾は、部屋中に跳弾を繰り返してDトゥルーへと向かって飛んでいく。メンタルアサルト、その跳弾は予想もつかない角度からヒットし、さすがのDトゥルーにも一瞬の隙を作った。
「――見せてやろう、口だけではないということを」
 ダリルのアクセルギアが発動した。垂の跳弾が示したDトゥルーの死角を見逃さず、鼓動銃を連続で発射する。
「――!!」
 鼓動銃はコントラクターの心臓と銃を繋げて威力を上げる武器。あまり連続で使用することは心臓に強い負担を与え、危険な状態を引き起こすこともある。
 だが、ダリルもまた一歩も退かない。己の目的と使命のため、すべてを賭ける覚悟。
 その目的とは。

「――やあああぁぁぁっ!!!」

 ルカルカ・ルーをDトゥルーの元へと届けること。
 カルキノスと淵、そしてダリルの強力な援護を受けて、ルカルカはDトゥルーの眼前に迫った。
 英霊である淵との契約の証、ヒロイックアサルト。さらにカルキノスとからもたらされた力、ドラゴンアーツの肉体の強化。そのふたつの力を得て、ルカルカはDトゥルーの間合いの外から一気に接近する。
「よかろう……やってみろ!!」
 Dトゥルーは盾を捨て、ルカルカの渾身の一撃を剣で受け流した。
「……ふっ!!」
 そう、一撃目は囮。振り抜いたハイアンドマイティーを、遠心力を利用して体勢の崩れたDトゥルーへと叩きつける!!
「なんのっ!!」
 しかしDトゥルーの狙いもそこにあった。自由になった左手から触手を一気に伸ばしてルカルカの手元を狙う。
「あうっ!!」
 その触手はルカルカの武器を弾き飛ばし、その体勢を大きく崩させた。その隙を狙って、Dトゥルーの剣が振り下ろされる。
 だが。

「――残念ね、私は一人に見えても――この身体には4人分の想いと力が詰まっているのよ」

 触手による反撃までも、ルカルカたちの予想通りだった。必殺の武器であるはずのハイアンドマイティーを手放し、大きく身を屈めてDトゥルーの剣の内側に入り込んだルカルカは、そこから最後の武器を繰り出した。

「――ぐうっ!?」
 それは、ダリルとの絆――光条兵器。鼓動銃を撃ちながら接近していたダリルが、ルカルカの武器が失われるであろうタイミングで光条兵器を投げ渡したのだ。
 Dトゥルーの鎧は、カルキノスのブリザードや淵のレーザー、そして垂のマシンガンとダリルの鼓動銃で大きなダメージを受けていた。
 そこにルカルカの光条兵器が深く突き刺さり、鎧に入ったヒビが一気に広がった。

「――見事だ」
 Dトゥルーの口元が歪み、その言葉が王の間に響いた。


                              ☆