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リアクション
☆
ライカ・フィーニスはレイコール・グランツに言った。
「あ、ありのまま……今起こっていることを話すよ!!
爆発がしたのでボスがいると思って意気込んで来てみたら、コントラクター同士が戦っている!!」
とはいえ、特定の知り合いもいないこの状況では、どちらが敵なのか、味方なのか判断がつかない。
「あ、あの人、知ってる人だ」
「ライカ、人を指差すのはよくないぞ」
レイコールの呟きを無視して、ライカが指差したのは匿名 某だった。何か、以前誘拐犯を追いかけている時、そういえば見かけた気がする。
「よし、あの人はいい人みたいだったから、戦っているあの触手レディが敵に違いないよっ!!」
そう言って、ライカはレイコールと共に参戦した。
「――いい加減になさいませ、しつこい殿方は嫌われますよ?」
つかさは、某に向かって言い放った。しかし、某はまったく動じずに言う。
「どうぞ。嫌われることは怖くない。俺は自分がやってることも別に正しいとか言うつもりもない」
つかさの貼り付けたような笑みが無表情に変わっていく。
「それなら……いいじゃありませんか、私のことは放っておいてください。
私のことなんて、どうでもいいでしょう……死のうが捕まろうが……関係ないじゃないですか」
「そんなことはない、俺とつかささんは知り合いだ。だから助ける。
どんな理由であれ、地球人同士が争うことはもうイヤなんだ、理由は――それだけさ」
そこに、逆さ吊りになった康之が叫んだ。
「そうだ!! 死んでもいい命なんてあるワケない!! 人の命は無限の未来だ!! 地球とパラミタの未来なんだ!!
それを自分で潰すことなんて、許されない!!」
逆さの状態から、康之は剣を振り回して触手を切り裂いた。そのまま、つかさを取り巻く触手に剣を向ける。
「助けるっつってんだから、つべこべ言わずに助けられろっ!!!」
いよいよ宮殿の崩壊が始まった。セリオスはエアカーにクローラを押し込めて言った。
「クローラ、もうここも危険だ!! 早く乗って!!」
「しかし!!」
まだ秋葉 つかさの身柄を確保していない。クローラは歯噛みするが、自分が堅持することでセリオスを危険に巻き込むことも本意ではない。
「――仕方ない」
この場は退いてまたチャンスを狙うかと、クローラはエアカーに乗り込んだ。あれほどの相手なら、またどこかで出会うだろう。
「よし、行くよ!!」
セリオスは、エアカーを操作して、雲の中へと突っ込んだ。いつの間にか、宮殿の高度が下がって、雲の真下あたりに出てしまっている。下を見下ろすと、ツァンダの街と、ブラックタワーのある山を一望することができた。
「行くぞ、ブレイズ!!」
「でやあぁぁぁっ!!!」
レン・オズワルドとブレイズは『正義マスク』の力で共に高く跳ね上がった。レンは両手を組んでブレイズの足を上に乗せ、更に高く跳ね上げる。
「――ふんっ!!」
レンの力でブレイズはさらに高く跳ね上がり、かなり高い高度を得た。そのまま、つかさを取り巻く触手、ひいてはつかさ自身を攻撃しようとキックの体勢を取った。
「あ、あれはブレイズさん!?」
ライカはその様子を見上げて、ブレイズの意図を理解した。某に気を取られているつかさに攻撃しようとしている。仲間であるブレイズが攻撃しようとしているし、某とも戦っているようだから、やはりあの女性は敵なのだ。
ならば、超弩級一般人の自分としては、可能な限りの手助けをするしかあるまい。
「レイ、やろう」
「うむ」
二人は頷いて、つかさへと走り出す。
ライカは、某と対峙しているつかさへ野生の蹂躙を放った!!
「えーいっ!! わんにゃんパラダイスッ!!」
どこからともなく魔獣が現れ、つかさに襲いかかった。
「――え?」
某との会話に気を取られていたつかさは、辛うじてその野生の蹂躙を避けた。しかし、そこまでは想定内。
「今だよっ、レイ!! パワーをサンダーに!!」
ライカが合図すると、レイコールはウィンターから貰い受けた『雪だるマー』を装着した。
その効果である天候の力、雷の力を解き放つ!!
「いいですとも、轟雷のブースト!!」
雷の力で強化されたサンダーブラストが、つかさにヒットする。
「きゃあああっ!!!」
咄嗟に触手でカバーしたものの、ノーダメージというわけにはいかない。そこに、上空から降ってきたブレイズが、必殺のキックを放った。
「てりゃあああぁぁぁっ!!!」
レイの攻撃で身動きの取れないつかさは、そのままブレイズのキックを触手の塊で受け止めるが、ブレイズはそのまま構わずに力を込める。
「お前は、何でこんなことをしてるんだっ!!
人間に何か恨みでもあるのか!?」
つかさは、そのブレイズに触手で応戦しながら応えた。
「ふん……別に恨みなんて……ありません。ただ……私は、自分が面白いことをしてるだけ……」
ブレイズは、そのままもう一度、語りかける。
「……こんなことが、面白いのか」
「そうですよ……とても面白いでしょう?」
微笑むつかさ。ブレイズは、その表情を見据えたまま、呟いた。
「そうか……悪い。俺、アタマ悪いからよ……あんたの言ってること、理解できねぇ」
「――!?」
キックの体勢をとったまま、ブレイズの身体が輝き始めている。
つかさは身の危険を感じるが、キックで押し込まれているので逃げることはできない。
「――正義ダイナマイト!!」
ブレイズの『正義ダイナマイト』が炸裂した。自分の中に闘気の内圧を高め、一気に解放させることで大爆発を引き起こす技だが、一度使えば自分もただではすまない自爆技である。
「きゃあああっ!!」
大爆発に巻き込まれたつかさ。そして、至近距離にいた某と康之も巻き込まれる。ブレイズ自身は爆心地で黒コゲになってひっくり返っているが、とりあえず意識はあるようだ。
「ルオシンさん、今です――っ!!」
コトノハが叫んだ。ルオシンは光条兵器『エターナルディバイダー』を構え、武器の聖化とスプリングから貰った『破邪の花びら』で強化して、コトノハと二人で大きく振りかざした。
「いきますよっ、つかささん!!」
ザナドゥ時空の影響だろうか、ルオシンの光条兵器はやたらと大きく、数十mの大きさに変化していた。
とはいえ、もとより重さの概念がない光条兵器。しかも斬る対象を選べるのだから、仲間を傷つける心配はない。
「――!!」
振り下ろされた光条兵器。しかし、斬ったものは触手やつかさ本人ではなかった。
「これは……」
つかさから生えていた触手がごそりと抜け落ちる。ルオシンとコトノハが斬ったのはつかさと、Dトゥルーの魔力との繋がり。
それを切り離すことで、Dトゥルーから吸い取った魔力は元に戻り、つかさはただのコントラクターに戻ったことになる。
「よかって……つかささん……」
喜びの声を上げるコトノハだが、もはや事態はそれどろこではないことに気付いた。
そろそろ宮殿の崩壊が激しいのだ、このままでは事情はどうあれ地面に叩きつけられて、宮殿ごと瓦礫に埋もれて死んでしまう。
「これは……ヤバいんじゃないかな」
と、ライカは呟いた。
宮殿はいよいよ落下のスピードを速め、そろそろ街の様子が見えるほどになってきていた。
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