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ザナドゥの方から来ました シナリオ2

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ザナドゥの方から来ました シナリオ2
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                              ☆


 その『庭園』を、迷宮の窓から見下ろしていたのが、緋桜 ケイ(ひおう・けい)ソア・ウェンボリス(そあ・うぇんぼりす)である。
「……ケイ、どうしたの?」
 ソアの声に、ケイは振り向いた。
 窓からは空が見え、下を見下ろすと美しい花が咲き乱れる『庭園』が見える。
「どうして、この宮殿にあんな美しい庭園があるんだろうって、考えてたんだ。
 Dトゥルーは……あくまで自分の目的は『殺し合い』だと言っていた……それを楽しむための手段としてのブラックタワーや、宮殿だと……」
 基本的に、その『殺し合い』に賛同するつもりはないケイとソア。しかし、言葉や条件による交渉はタワー前ではっきりと決裂した後だった。
「うん……」
 ともあれ、二人は再びDトゥルーと対峙するつもりでいた。まずは『王の間』を目指さなければならない。
 他にも宮殿に乗り込んでいるコントラクターは大勢いる、戦闘が開始されてしまってからでは、ろくに話もできないという状況は容易に想像できた。
 ケイとソアは庭園から視線を通路に戻し、先を急いだ。
 走りながらも、ケイは呟く。
「どうして……あんな庭園がある。
 ここが単純な戦いの場であるなら……あんな場所は必要ないはずだ。
 仮に何らかの秘密を隠しているのだとしても……あんな花で飾る必要はないはずじゃないか……」
「ケイ……」

 その呟きは、通路の壁に吸い込まれて、消えた。


                    ☆


 その頃、Dトゥルーが待つ『王の間』では。


 焼肉が行なわれていた。


「……」
 王の間にある玉座に座るDトゥルー。その傍らで呆然と安物の肉や野菜が焼かれていく様を見つめる秋葉 つかさ(あきば・つかさ)
 つかさは、ブラックタワー前でDトゥルーに触手の使い方がなってない、とダメ出しをしにきたところ、
「じゃあ手本を見せてみろ」
 と、妙に気に入られてしまい、身体から触手を生やされてしまい、宮殿を自由に行動する権利を与えられていた。
 しかし、その状況をまったく動じずに楽しんでいるのだから、大したものである。
 そうして、内心楽しみながら可愛いコントラクターでもやってこないだろうか、と思っていたのだが。

 まさか最初に訪れたコントラクターがDトゥルーの前で肉を焼き始めるとは想像もつかなかったのである。

「ふっふっふ……どうかな?」
 と、その来訪者、司馬懿 仲達(しばい・ちゅうたつ)は自信に満ちた笑顔をDトゥルーに向けた。
「どうもこうもあるか」
 と、Dトゥルーは呆れ顔を見せる。
 仲達の後ろでは、アルツール・ライヘンベルガー(あるつーる・らいへんべるがー)が頭を抱えていた。
「……自信満々に策があるというから、任せてみれば……」

 だが、仲達は自信満々に肉や野菜を持参した携帯コンロで焼き続け、持論を展開した。
「良いかね? このザナドゥ時空においては知的生命体の自己認識を狂わせる効果があるという……。
 ならば、それを逆手に取ってこのように思い込めば、安物の肉も神戸牛に!! 刺身はトロに!! 野菜はどこまでも甘く!! 更に調理具合だって常に最高の焼き加減として味わうことができるのだ!!」
 そう言って、仲達は少し焼きすぎた肉を自分の口に放り込んだ。
「おお……本当に美味く感じるぞ……」
 その様子を眺めていたDトゥルー。口元の触手を少しだけ動かして、言葉を発した。
「ほう……それが我の目的とどう関係あるのかね?」
 話に乗ってきた、とばかりに仲達は畳み掛ける。
「要するに……貴公の目的は強者との飽くなき闘争であろう。
 ならばこんな場所ではなく、もっと治安の悪い大荒野あたりに引っ越せば良いのだよ。
 このザナドゥ時空を利用すれば安く美味い物を味わえるし、運が良ければ想いを形にすることもできるかもしれない……。
 それ自体は嘘ではないのだし、ザナドゥ時空の効果を求めてやってくる、血の気の多い大荒野の連中を相手に戦いを楽しめば良いではないか」
 その焼肉を、横からひょいとつまみ食いしたのが、アルツールのパートナー、アスタロト・シャイターン(あすたろと・しゃいたーん)である。
「うんまあ、コウベとか言われましてもわたくしなどは、ちょっと分からないですけどね。
 ……もぐもぐ、やっぱ硬いですよ、これ」
 安物の肉片を飲み込んで、アスタロトはDトゥルーに向けて、一礼する。
「お初にお目にかかります……アスタロト・シャイターンと申します」
 その礼に対し、Dトゥルーも名乗りを返す。
「Dトゥルーだ。少しはまともに話ができそうだな……お主は……悪魔か」
「ええ……些か不恰好ではありますが……現魔王陛下にただ従うしか能のない若い悪魔たちよりよほど骨があるではありませんか、そなたは。
 わたくし、そのような無骨な殿方は嫌いではありませんので……よろしければそなたが眠っていた間のザナドゥの情報でもお教えして差し上げようと思いましてね」
 硬いと文句を言いながらも、焼肉をつつきながらアスタロトはDトゥルーに現ザナドゥの情勢などを簡単に説明する。

「……ふむ、別に現ザナドゥなどにさほどの興味はないが……そこの人間は、ただついて来ただけか?」
 後ろで沈黙を守っていたアルツールに、Dトゥルーは声をかけた。
 仲達とアスタロトの様子を見ていたアルツールは、Dトゥルーの声に、一歩前へ出る。
「いや……俺は、君達に忠告をしに来たのだ」
「ほう」
 ぴくり、とDトゥルーの口元が動く。
「いいかね、このツァンダのように初めから治安の良い土地では、このようにすぐに地域の住民から抗議を受けるであろう?
 それに、事態が長引けばすぐに軍隊が派遣され、そちらが嫌う戦争状態になってしまう。
 それならば、もとより治安が悪く、さらに血の気の多い連中がいる地域ならば、存分に、しかも長く戦いを楽しめるのではないかね?」
 アルツールは、仲達の広げた焼肉セットを視界に入れないように話を続けた。
「まあ、焼肉の例えは置いておいてだな。
 ツァンダ側としては、ブラックタワーのような建設物があるから迷惑、というのがそもそもの始まり。
 別にそちら側、魔族がパラミタに住むことに頭から反対しているわけではないのだから、どうだろうか、ここはひとつ穏便に引越しをしては。
 そちらも労せずして闘争に明け暮れる環境を手に入れることができるのだ、悪い話ではなかろう」
 アルツールの話を一通り聞いたDトゥルーは、やれやれとため息をついた。

「ふん……ならば聞こう……。戦いによって我が望む環境を入手するのと、戦わずして入手するのとでは、どちらがより多く戦えるのだ?
 ついでに言えば、戦争は確かに好かんが、できないわけではない。
 そしてもうひとつ……その大荒野の連中というのは、お主たちにとってパラミタに暮らす人間であることに代わりはないはず……それなのに、皆殺しにしても構わんというのかね?」
 それに対し、アルツールは冷静に返した。
「先ほど、司馬先生が言った通りだ。
 ザナドゥ時空をエサにすれば戦いたい奴らはいくらでもいる……そういう連中だけを相手にすればいいではないか」

 だが、その言葉を聞いたDトゥルーは高笑いで返した。

「ハハハハハ、これは愉快だ!! お主らは侵略者に対し、『客寄せパンダにしてやるから侵略をやめろ』と忠告しに来たのか!!
 これは大層な侮辱だ、なんと素晴らしい!! 怒る気も失せるぞ!! ハハハハハ!!!」
 王の間に、孤独な嘲笑がこだました。それに対し、アルツールはあくまでも冷静に言葉を返す。
「ふむ、別に侮辱などという無益なことをしに来たわけではない。……これは真剣な提案だ。
 俺はきわめて理性的、かつ効率的な提案をしている。
 この土地が欲しいのではなく、あくまでも戦い続けることが目的ならば、相手は誰でも構わんのだろう。大荒野で存分に『トゥ・ザナドゥ』とやらを建設するが良かろう」
 だが、Dトゥルーはその言葉にずい、と身を乗り出し、言った。


「そうか……残念だったな。我はそこまで理性的かつ合理的に生きる存在ではない――交渉は決裂だ、人間よ」


 そこに、迷宮を通ってケイとソアが現れた。
「先生!!」
 その声に振り向きもせずに、アルツールは呟いた。
「――ふむ、どうやら私の生徒達が来たようだ――ならばここは、お手並み拝見といくとしようか」
 その言葉通り、ケイとパートナーの悠久ノ カナタ(とわの・かなた)、そしてソアと雪国 ベア(ゆきぐに・べあ)が前に出る。
「先生……Dトゥルーさんは、まともな説得に応じてはくれませんでした……。
 まずは私達の力、そして意志を見せるためにここは戦うべきだと思います!!」
 ソアの周囲を魔力が取り巻き、魔法少女へと変身させていく。
 あっという間に魔法少女コスチュームへと変身を遂げたソアは、魔砲ステッキを構え、宣言した。
「人間も魔族も関係ありません!!
 みんなに迷惑かける悪い子は、お仕置きして反省してもらうまでです!!
 魔法少女、ストレイ☆ソア!! ただいま参上です!!」
 ケイもまた、ソアの横に並ぶ。
「俺も戦うつもりはある……あんたがそれで納得するというのなら……。
 だがな、俺もソアもあんたの言う『殺し合い』をするつもりはないんだ。俺は誰も殺すつもりなんてないし、死んで欲しくもない!!」

 まるで、血を吐くようなケイの叫び。だが、柱の物陰からそれを笑う声があった。
「やれやれ……どなた様もおめでたいことだな、まったく」
 冷酷で皮肉な笑みを貼り付けたその男、七枷 陣(ななかせ・じん)は、先ほどから王の間に潜入し、アルツールたちのやりとりを聞いていたのだが、いよいよ戦闘開始という段になって、その姿を現したのだ。
 正確には陣に憑依した奈落人、七誌乃 刹貴(ななしの・さつき)は言う。
「言葉や交渉で篭絡できる相手ならばそれも良かろうがな……やつが求めているのは、闘争。ただそれだけだろう。
 ただそれだけの相手に、いくら言葉を重ねたところで戦いを避けられるわけもなし」
 刹貴は、自らの獲物である短刀を構え、続ける。
「ならば、この俺のような戦闘狂を以って、その望みをかなえてやる他あるまい。
 奴は俺達にとっては完全に悪――事情も条件も関係あるものか、これぞ正に勧善懲悪。何の後腐れなく、ただ魂を削りあって殺しあえる。
 ――実に素晴らしい。そうは思わないか?」
 刹貴の嘲笑も、しかしケイやソアの心を折るには至らない。

 ケイは、まっすぐな瞳でDトゥルーを見据え、言った。

「……主義主張は人それぞれで違って当然……ならば、俺達は俺達の主張を貫き通すまでだ……行くぞ!!」
 ケイとカナタ、ソアとベアはそれぞれ戦闘態勢に入り、Dトゥルーとつかさはそれを迎え撃つ。
 再び宙に舞い、着物の裾から触手を無数に伸ばしたつかさは、妖艶で蕩けたような笑みを浮かべる。
「ふふふ……結局、理由をつけてのこのこ現れるなんて……やっぱり期待してるのね……」
 触手は、特にソアを重点的に狙い始めている。タワー前でソアに絡んだ時の反応が良かったのだろう。
 だが、ソアはそれを予想した上で戦いに挑んでいた。
「……いいえ、私は負けません。この触手さんを成敗することこそ、魔法少女しての使命……!!」

 ケイとカナタはDトゥルーに向かい、そこに刹貴も加わる。
「くくく……!! さあ、脳髄が焼き切れるほど殺し合おうか!!!」
 ところで、いち早く王の間にたどり着いていたはずの刹貴が、真っ先に襲い掛からなかったのはなぜか。
 それは、彼の宿主である陣の精神状態が影響していた。

「ああ……大きな星が飛び交ってるな……あれは、彗星……?
 いや……ちゃうなぁ……彗星はもっとこぅ……パァって輝くもんなぁ……」


 ザナドゥ時空の影響で、かなりレベルの高い前後不覚状態だった、という。