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リアクション
第16章 短期間の修理・・・過酷なスケジュール
いったんメタルトータスに戻ったガランは、たまたまつぐむの部屋の前を通りがかり、見てはいけないものをみてしまった。
戻ってきたつぐむがすぐ眠れるように、支度をしている竹野夜 真珠(たけのや・しんじゅ)を発見した。
支度だけなら問題はない。
ベットメイキング中に、つぐむの香りが残っているのに気づいた彼女が、匂いを嗅いで悦に浸っている。
「つぐむちゃんの匂い〜。むふふっ、これは真珠だけの特権よ♪」
それを目撃したガランは・・・。
つぐむに報告する。
黙っておく・・・。
彼は後者の黙っておく、の大人の対応の選択をし、そっとしておくことにした。
「(無駄にことを荒立てる必要もない・・・)」
音を立てないようにそっと、外へ出て行った。
その頃、一睡もしていないつぐむのために、ミゼは彼の飲み物に精力剤を混ぜる。
「(つぐむ様には、もっと頑張っていだければいきませんからね)」
「ふぅ・・・屋根の修理までは終わったな」
それを知らずに彼はスポーツドリンクを飲み干しているが、修繕を行う活力として消費されているようだ。
「内装担当は確か5人だけだったよな。不審者の侵入を防止するセキュリティも考えないといけないか」
「フフフ、それならディテクトエビルのスキルを参考にするといいですわ。その術を使える者を何人か見て閃きましたの」
「思想犯を判別するような感じがするな・・・」
笑みを浮かべるエリシアにそこまでするのか!というふうに言う。
「カゲノ鉄道会社や出資者の3人に伝わるようにするといいですわ。そこまでの対処はしなくとも、普通の電車にもあるでしょうし。あって当然のものですのよ」
「なんかしようとしたら、それこそ半分ナラカへ逝った状態になってもらうしかないだろう」
「つぐむ様っ、このワタシを半分・・・・・・。あぁっ、なんて冷ややかな目!もっと睨んでくださいっ」
彼の冷たい眼差しにミゼが息を荒げる。
彼女のことはさておき、2人は基盤造りを始める。
部品の先の余りそうな部分をパチパチと切り、黙々とはんだ付けをしていく。
「エリシアおねえちゃん、もう起きたの?」
「あらノーン、まだ眠っていてもいいですわよ」
「ううん、ワタシも手伝うよ」
「それじゃあ造った基盤を機械に設置してもらいますわ」
「は〜い」
3人でセキュリティ作業を行うこと1時間・・・。
「わぁ〜、完成したね」
「後は・・・プログラムをいろいろと組んでいきましょう」
エリシアは仮の電源をつなぐと、パネルを操作してプログラムを組む。
「運転車両の中が広いし、客車の照明とかに必要なエネルギーを送る配分も、ここで制御すればよさそうだな」
「予備のエンジンの置き場などもあるから安心ですわね。それとドアの開閉の設定は・・・別のマシーンで行うようにしておきましたわ」
ドアの開閉操作を行う運転車両にある機械が、設置した基盤に反応するように、先端テクノロジーで追加する。
「まだ修理用の金属がいるなら、俺たちが溶かそうか?」
アダマンタイトが必要なら協力しようか?と、和輝がエリシアたちに声をかける。
「車輪の方がまだですからお願いしますわ」
「俺の方は精錬したやつをここに運ぶだけなんだけどな。作業はアニスがやってくれる。って、ちゃんと顔を出せって」
さっそく自分の白衣の中に隠れる少女を見て、彼は呆れ顔をする。
「他の者に頼んだほうがよさそうですわね」
「いや、待ってくれ!―・・・なぁアニス、顔出してくれよ」
「悪いが俺は他を探してくる」
手伝ってくれるのかはっきりしない様子に、痺れを切らせたつぐむはその場から去ってしまった。
「えっ!?」
「わたくしも嫌がる人に無理をさせたくありませんわ」
「そんな、行かないでくれよ!あぁ〜、なんてこった・・・」
「和輝、アニスが溶かしたら私が届けに行ってやる」
「それしかないか。皆、溶かすまでの作業はやってるのに、俺たちだけやらないっていうのもな・・・」
そんな・・・こんなで、エリシアたちと距離を置いて溶かす作業が開始された。
さすがに白衣の中に隠れたまま、溶かして渡すなんてことは出来そうにないからだ。
「(誰ともアニスと仲良くなれなかったな・・・。まぁ、まだ完全に計画が完了したわけじゃないし、優しそうな人もいたからな)」
エリシアの傍にいたノーンや、加夜とならちゃんと話せるようになるかな、と考える。
「凍てつく炎の熱だけを加えたり、冷気だけを加えるようにも出来るんだね?おもしろーい♪」
彼のそんな考えにまったく気づかない少女は、興味津々に炉を使ってみる。
「すごーく高い温度で溶かさなきゃいけないのに、1000度くらいまで下げて固まらないなんて不思議だね。これで冷やしたからなのかな?」
「とはいえ、安全とはいえないレベルの温度だな。終わったら私に渡せ」
「どーぞ」
「渡してくるか」
アニスの代わりにリオンがエリシアのところへ行くと、すでにメシエとエースが手伝っている。
「なんかうっかり蓋を開けたら、どうなるんだろうな」
「溶かしてくれたのを私が冷やすって流れかな」
コテで持っていられる温度まで冷やした金属を、メシエがエリシアとノーンに渡す。
「うっかり取れたりなんてしないよ。自動ロック機能だってあるんだし」
「アゾートさんが貸してくれたものだから、故障とかしないから心配いらないか」
「ちょっとずつしか使えないのが難点ですわね」
「安全第一だよ、列車を運転する時もね」
「まぁ、それはそうだけど・・・。リオン?どうしたんですの」
「いや・・・アニスが溶かしてくれたから持ってきたんだ」
「ありがとうございます、使わせてもらいますわね」
リオンの手から受け取るとコテで細かい傷を修復する。
「丁寧に運んでもらえたようですし、この分だと数日で直せそうですわね」
「朝から大変そうですね。せめて炉に溶かしておいてあげます」
加夜は気を利かせて炉の中へアダマンタイトと熱量となる液体を入れる。
「どれくらいいるんですか?」
「車輪の方はあまり傷がないから、そんなにいっぱいはいりませんわ」
「私の魔力で温度をキープしてあげて、シートの上に置いてあげますね」
「そういう使い方も出来るんですの?」
「えぇ、それなりにSPが必要だけど、私で出来ることならお手伝いしてあげたいと思いまして・・・」
「列車が出来れば、いろんな旅が出来そうですわ」
「そうですね・・・。一緒に行けたら楽しいでしょうし・・・」
エリシアの言葉に、私も好きな人と一緒にいけたらいいな、と心の中で思ってしまった。
「エリザベートちゃんが起きたので、私もとろとろに溶かしてあげますよ♪ねぇエリザベートちゃんもやってみましょう?」
「アダマンタイトと液体化させたビリジアン・アルジーを炉の中に入れてあげますぅ〜」
「じゃあこの中に、ポンッと入れてくださいね♪中は触っちゃいけませんよ」
「はいですぅ〜」
明日香を手伝ってあげることにしたが、そこへ入れるだけの簡単な作業だ。
「エリザベートちゃんは、夜遅くまで精錬してくれたんですよ。金属に他の物質が混ざっていないか見たり、それはもうてきぱきとこなしていたんです♪」
自分の功績を彼女のものにしてあげようと、エリシアたちに話してみせる。
「ううん、明日香が頑張ってくれたんですぅ〜。私は人の手柄をもらっちゃうような人間ではありません〜」
「さすがエリザベートちゃん!嘘をつかないのはイイ子の証ですねぇ♪」
本当は彼女のものにしてあげたかったけど、2人だけのべったりの空間に満足した様子で少女の頭を撫でる。
「もうすぐ終わる感じかな?」
ヴァイスは火術の気を炉に送り、取っ手を回して溶かしつつ、列車の修復度合いを見る。
「このぶんだと後、数日くらいだと思いますわ」
「(まぁ、後4両もあるから過酷なのには変わりないけど)」
氷術の冷気で徐々に温度を下げながら心の中で呟いた。
「ちょっと他の人より熱めの2000度だけど、触らなきゃ大丈夫だと思う」
「そのようなミスはいたしませんから大丈夫ですわよ。さて、そろそろ修理完了の頃合いですわ」
車体の下に潜り込み、暗がりでも鮮明に見えるダークビジョンで、その下を修繕していく。
修復作業に10日もつかわないうちに、魔列車の客車の方は見事に修繕された。
車体はアキラのピヨによってヴァイシャリー湖南の駅の、レールの上に運ばれ、運転席の車両もひとまず、そこへ運搬される。
5日ぶっとおしで作業していたつぐむはというと・・・。
「眠らなければこうなるわけだな」
ガランに背負われてメタルトータスへ運ばれた。
「つぐむちゃんのために、いっぱい手料理を用意したよ!」
「あぐあぐっ」
食事をとっていなかったとはいえ、どんだけ胃袋が銀河なのかと思うほど24時間食べ続け、ぱたっと眠ってしまった。
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