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少年探偵 CASE OF ISHIN KAWAI 2/3

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少年探偵 CASE OF ISHIN KAWAI 2/3

リアクション


早川呼雪(はやかわ・こゆき) 雪汐月(すすぎ・しづく)

運営団体からのヘルのコリィベルへの受け入れの申し出はきっぱり断らせてもらった。当然だ。
俺とパートナーのヘル・ラージャ(へる・らーじゃ)は、慰問の名目でコリィベルへとむかった。
入所手続きをすませた後、現地で最初に会ったのは、友人の黒崎天音(くろさき・あまね)と彼のパートナーのドラゴニュート、ブルーズ・アッシュワース(ぶるーず・あっしゅわーす)だ。
「僕は囚人として収監されてもよかったんだけどね、呼雪が嫌がるから慰問にきたってわけ。黒崎くんたちは、なにかめぼしいものは見つけたの。かわいい男の子とかいるのかな。
少年探偵のくるとくんもきてるんでしょ。僕、彼と会ったことないんだよね。どんな感じの子なの」
「くるとはおまえとは違い内向的な少年だ。ちと、おとなしすぎるがな。会っても余計なてだしはするでないぞ」
「どうかな。心の動きは予想がつかないしろものだからね。僕が無関心でもくるとくんが僕に興味深々になるとか」
ブルーズに釘をさされても、ヘルはまるで気にしていない。
「ブルーズは弓月のいいお兄さんだからね。
ついさっきも別れ際に、教導団でしか売ってないお菓子を買ってきて欲しいと頼まれてたばかりなんだ。
古森はどんなものでもおいしく食べられるって言ったけど、偏食の子供が喜ぶお菓子なんて、教導団のミリメシにあるのかな。
僕は外で調べ物をしてくるつもり。ここの医療チームがsolntse(太陽)とveter(風)だから、orla(鷲)を名乗って動いてみるよ。正体がバレないように、女装をしてさ
医療チームのメンバーの過去にも興味があるしね。特にリーダーの二人」
刑務所での潜入捜査がそんなに愉快だったのか黒崎はとても楽しげにみえる。今日もとらえどころのない男だ。
「運営と接触した俺の大雑把な印象だが、犯罪者いやアウトサイダーを集め、想いを結集させて世界をどうとか、ここはそんな陳腐な発想でつくられた施設ではないのか」
「早川は機嫌が悪そうだね。たしかに正体がそれなら、独創性にかけてて僕もあまり評価できないな」
「呼雪は、運営が僕を収監しようとしたから、怒ってるんだよ。ね」
ヘルに同意を求められたので、俺は、小さく頷く。
そして情報交換をした後、黒崎たちは俺たちと入れ替わるように、コリィベルを去っていった。

さっそく迷子になったヘルを探すためにあてもなく歩いていて、すぐに彼女と出会うとは、なるほど、黒崎の話通りの剣呑な場所らしいな。
俺は、目の前で、ふらふらと足を進め、壁に寄りかかり、そのまま、床に倒れこんでしまった少女に駆け寄った。
そっと抱き起こして、手触りから服の下に、たぶん、包帯が巻かれているのに気づく。
「……ギターを抱えたお兄さん、あなたは…」
「このギターは慰問のためのものだ。ケガをしているようだな。
俺は、薔薇の学舎の早川呼雪(はやかわ・こゆき)
きみは、ここに収容されているのか」
「私は、 雪汐月(すすぎ・しづく)
パートナーのカレヴィが捕らえられているの…私は、カレヴィを、助けたい」
息をするのも苦しげなほどに衰弱しているのに、汐月はたどたどしく唇を動かす。
「カレヴィは、コリィベルの囚人なのか。
無理にしゃべろうとしなくていい。
できるのなら、わずかでいいから、首を縦か横に動かして教えてくれ」
汐月は首を横に振った。
「俺の知り合いたちも奇妙な目にあっているようだし、俺への電話といい、ここでは、ずいぶんとおかしな出来事が起こっているらしいな。
ちょうど俺もパートナーを探しているところだ。
汐月。一緒に探そう。
どこか安全な場所があれば、汐月にはそこで待っていてもらって、俺がヘルとカレヴィを見つけてくる」
「…そんな…」
やはり自分の力では立っているのも難しいらしい汐月を俺は、抱き上げた。
いわゆるお姫様だっこと言うやつだ。
「すまんな。
二人で移動するには、これが一番早いと思う
我慢してくれると助かる」
しかし、俺は、どこを探せばいいのかまるで見当がつかないのだが。
「ありがとう……ごめんなさい…。
天ヶ原明を探して。
あの人は、知ってる。
…ここの、メカニックスタッフとして働いているの」
「わかった」
天ヶ原明、か。
聞きおぼえのある名前だ。学舎から資料を盗んだ人物だったか。
やつがからんでいるとすると、エネルギー関連のなにかがここには、ある、ということか。