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少年探偵 CASE OF ISHIN KAWAI 2/3

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少年探偵 CASE OF ISHIN KAWAI 2/3

リアクション


ペルディータ・マイナ(ぺるでぃーた・まいな)ブリジット・パウエル(ぶりじっと・ぱうえる)

シュリンプさんの衣裳部屋にはなにもありませんでした。
新しい居入者を待つアパートメントの一室みたいに、きれいに片付いていて、まっさらだったのです。
「仙姫さんも、おかしいと言っていたけど、たしかに、これはヘンね」
「シュリンプ自身が自分の衣裳をどこかへ移動させたんじゃないのか。
なら、ここが空き部屋なのも納得できる。
新しい衣裳部屋が別の場所にあるとか」
「可能性としてはそれもあるかもしれないけれど」
あたしのパートナーの蒼也の意見は根拠がなさすぎです。
「そうじゃな。
演芸会の開演前にわらわはコリィベルスタッフから、シュリンプ専用の衣裳部屋なので、立ち入り禁止だと直接、説明されたのじゃ。
わずか二時間ほど前の話じゃぞ。
蒼也の説が正しければ、演芸大会の最中に誰かがここから他の部屋へ膨大な衣裳を運んでいたことになるのう。
目と鼻の先でステージが行われている時に、なぜ、そんなことをする必要があるのじゃ。
シュリンプによる付き人へのいじめか?
ステージ裏にあたるこの通路は他の演者や観客が通る可能性も高いぞ。
衣裳の引っ越しをするにしても、もう少し時期をみて行うのではないのかのう」
あたしたちと一緒に大講堂内を調査していた推理研究のメンバーの金仙姫(きむ・そに)さんも、首を傾げています。
歌姫である彼女は、出演者として演芸会に参加していてシュリンプ殺害事件に遭遇しました。
「わらわは、開演前に、この部屋にぎっしり衣裳、小道具があるのをみたのじゃ。
間違いないぞ。
運びだしたのでないとすれば、部屋が移動したのかのう。
コリィベルは常にガタゴト揺れておるし、歌や楽器演奏、芝居などを演っておってにぎやかじゃったから、積木パズルのように、部屋自体が移動して他の部屋と場所が入れ替わっても、案外、みな気づかぬかもしれぬな」
「それ、名推理かもしれません。
さすがブリジット代表のパートナーさんですね」
彼女の推理にあたしは単純に感心したのですが、仙姫さんは顔をしかめました。
「ちょっと待て。わらわは舞のパートナーじゃ。
ブリは舞とわらわの番犬じゃぞ。
ブリのパートナーだなどと言われるとショックじゃのう。
常日頃から側におるので、わらわも知らないうちにアホブリに毒されておるのかもしれん。
おそろしいことじゃな」

□□□□□

「シュリンプさんの衣裳部屋と独房を調べた後、あたしたちはコリィベル内のB○系の人たちがいるというエリアへ行ったんです。彼はあっち系の人たちと関係があったんじゃないかと思って」
「話はわかったわ。
それがこの映像ね」
百合園女学院推理研究会代表のブリジット・パウエル(ぶりじっと・ぱうえる)さんは、あたしが撮影した、蒼也があっち系の囚人の方に誘われている様子を眺め、頷きました。
あたしたち推理研のメンバーと協力者のみなさんは、情報交換かねた食事会のためにコリィベルの食堂に集合しています。
とりあえず、参加メンバーが揃ったところで、あたしはメモリプロジェクターを壁に投影して、みんなにここまでの調査の様子をみてもらったのでした。
蒼也はまだここにはきていません。いま頃、どこにいるんでしょう。
「蒼也は潜入捜査中なのね。男子だからこそいくことのできる新しい世界を切り開いてくるのを期待するわ。
ところで、みんなにお願いがあるの」
代表は、席についた一同の顔を眺めると、びしっ! と人差し指をつきだし、テーブルの横に置かれた給仕用のカートをさしました。
「この食事会のために持ってきたあなたちみんなの昼食をこのカートにのせて頂戴。
まず、私から」
代表がプラスチックのかわいらしいランチボックスを置き、次に橘舞さんがたくさんの手作りパンの入ったバスケットを。
あのー、これはどういうゲームなんでしょうか。
代表に従ってみなさんが次々に食べ物を載せていきます。
あたしは、店長をしているイルミンの温泉食堂「いる民」で試作した、空京万博用の和洋中豪華幕の内弁当「万博弁当(仮)」を世界樹模様の風呂敷包みのまま、カートに置きました。
全員が置き終わるとマイト・レストレイド(まいと・れすとれいど)警部の隣にいる、銀髪の壮年紳士が席を立ち、カートの方へ。
高そうなスーツを優雅に着こなしたこの人が、警部のおじさんでしょうか。
「諸君。
材料の提供に感謝する。
私が料理、盛り付けを終えるまで、しばしここでお待ちいただくとしよう。
リラックスして歓談してくれたまえ。
クライマックスはもう少し後だからね。
では、失礼」
彼はコロ付きのカートを押し、調理室へと去っていきました。
「どうなってるんです。
あの人がみんなの食べ物を料理し直すんですか。
あたし、料理なら少しは自信ありますし、お手伝いにいこうかな」
「ごめん。ペルディータ。みんな」
代表に急に頭をさげられて、あたしは意味がわからなくて。
「私が賭けに負けたの。
賭けの代償として、ハムの人は、この食事会で私たちが食べる料理を作る権利を得たわ。
私たちのお弁当と彼自身がここで用意した食材が材料よ」