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イルミンスールの怪物

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イルミンスールの怪物

リアクション

「そろそろ片が付きそうね」

 魔鎧ベルディエッタ・ゲルナルドを装着して戦う天貴彩羽は残り少ない敵の数を見てそう言った。
 だが彼女の側で一緒に戦っていた『アル・アジフ』は表情を強ばらせる。

「いや、まだだよ」
「えっ、他にまだ敵がいるっていうの?」

 彩羽が『アル・アジフ」の言葉に疑問の声を上げると、もうひとりのパートナー・アルラナ・ホップトイテが言った。

「感じマス。ミーに似たような気配デス」

 アルラナが目を細める。
 彼の視線の先にある木々が大きな音を立てながら倒れていく。
 そして重量感のある足音を響かせて、ソレは現れた。

「現れましたか」

 姿を見せぬ協力者として敵の掃討に手を貸していた坂上来栖は、ソレの姿を見て眉をひそめる。

「おっ、おいおい! なんだよ、アレ!?」

 地上からソレを見上げた三途川幽は、思わず呪文の詠唱を中断して叫んだ。

「――あれが禁術により生み出されたモノ」

 逃げ出そうとしていた鏖殺寺院をまたひとり土に還したグラルダ・アマティーは、武器を構えてすぐに戦闘態勢を整える。

「これはまた……おおきな魔物ですね」

 急造拠点の土壁から顔を覗かせる非不未予異無亡病近遠は、巨大なソレの姿に思わず苦笑いを浮かべた。

「チッ、雑魚の次は怪物のお出ましってか」

 そんな近遠の横で仲間のサポートをしていた国頭武尊は、森の中から現れたソレを怪物と称して血煙爪雷降の銃口を向ける。

「イルミスールの怪物――ってのは、見たまんま過ぎるか?」

 巨大な怪物の上空をフレアライダーで旋回している新風燕馬がそうつぶやいた。
 契約者にイルミンスールの怪物と名付けられたN‐1は、たくさんの獲物の匂いを嗅ぎつけて雄叫びを上げる。
 その叫びに、大地や森は大きく震え上がった。


                   ◇


 突然重厚な雄叫びが響き、地下アジト全体が揺れる。

「何事ですか!?」

 白衣の男を探してアジトの中を進んでいたザカコ・グーメル(ざかこ・ぐーめる)は、異変に気づいて足を止めた。
 そして一緒に行動していた他の契約者たちも足を止める。

「今のすげぇ声は外から聞こえてきたみたいだな」

 ザカコのパートナー強盗 ヘル(ごうとう・へる)は、そう言いながら顔を上へ向けた。

「外で何か起こったということですか……ヘル」
「わかってる、外の連中と連絡を取れってんだろ」

 ザカコの意を介してそう言ったヘルは、銃型HCを取り出して外の仲間と連絡を取る。
 そんなヘルの通信に応えたのはメティス。
 彼女の話によれば、巨大な怪物が姿を現し、皆で応戦をしてはいるものの、雑兵との戦いで消耗した後なのでかなり苦戦していると言う。
 ヘルは”必ず助けに行く、それをみんなに伝えてくれ”と言うと、通信を切った。
 そんな彼が視線を上げると、通信内容を聞いていた契約者たちは皆顔を強ばらせていた。

「どうやら内部の探索にあまり時間はかけられないようですね」

 ザカコがそうつぶやく。
 その言葉に反論するものはいない。少し話し合った彼らは、探索をより効率よく行うために、別れて敵を探すことにした。

「何かわかったら、情報は共有しよう」

 ヘルは皆にそう言うと、契約者たちはうなずいて応える。
 そして彼らは白衣の男を探して散らばっていった。
 ほぼ時を同じくして生徒の救出に向かった契約者たちも外の状況を知る。
 彼らも各々に別れ、アジトに捕らえられた生徒たちの居場所を探して駆けていくのだった。