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「……ふーむ、何やら集まってきましたねぇ」
 応援を呼ばれたのか、再度集まりだす警官達。
「ど、どうするの?」
「仕方ありません。また愛注入で――む?」
 その時、何者かが伝道師達の前に飛び出し、
「ふっ!」
【光術】を放つ。
「うおっ!? まぶしっ!」
 警官達はその光に目が眩み、動きを止める。
「今の内だ! こっちへ!」
 【光術】を放った大谷地 康之(おおやち・やすゆき)が伝道師に向かって言う。
「……どうする?」
「迷っている暇はなさそうです。彼の誘いに乗りましょうか」
 伝道師とアゾートは康之の後へ続いた。

「ここまでくれば大丈夫だろ。悪かったないきなり」
「いえいえ、まああの数を相手にするのは少々面倒ですから」
「少々なんだ……それより、なんでボク達を助けたの?」
「ああ……それは、その……な?」
 アゾートに問われ、少し言いにくそうに康之は言葉を濁しつつ、ちらちらと伝道師の方を見る。
「ふむ、私に聞きたい事でも?」
「……実はそうなんだ。聞いてくれるか?」
「先程の礼、と言ってはなんですが、私で宜しければ」
 伝道師が頷くと、康之は言葉を選びつつぽつりぽつりと話し出す。
――康之が語りだしたのは、とある少女の事だった。
「その子はおっとりぽわぽわ柔らかい雰囲気を持ってて、ちょっと気が小さくて大人しいんだけど、最近は自分のやりたい事はちゃんと言うようになってきた優しい女の子だ」
 少し誇らしげに語る康之。だが、次は表情を真剣にして口を開いた。
「だけど、最近色々な事に巻き込まれて怖がったり泣いたりしてるのが多くて、それが俺は凄く嫌だ。その子に降りかかる不幸とか全部ぶっ飛ばして……心の底から笑って欲しいって思うんだ」
「ふむ……その子が大事なんですね」
「ああ」
 康之がゆっくりと、力強く頷く。
「だけど、今まで過ごした中で誰かをこんな風に思ったことが無いんだ。男も女もダチはいるけどさ、こんな風になるのは初めてなんだ……教えてくれ。これが、『愛』っていうのかな?」
「私はそうだと思います」
「そう、なのか?」
「ええ、その子を想う気持ち。それを表現する言葉は恐らく『愛』という物がピッタリかと」
「そっか……そうなのか」
 伝道師の返答に康之は何度か頷くと、
「サンキュー! なんだかわかんねぇけどわかったかもしんない!」
と『どっちだよ』と言いたくなるような事を言って、走っていった。

「あれ、康之お前何処行ってたんだ?」
 匿名 某(とくな・なにがし)が走ってくる康之に言う。
「ちょっと人生相談!」
 康之が、超いい笑顔でサムズアップすると、呆れたように某が溜息を吐く。
「何言ってんだお前……それより、なんか街に変態がうろついてるらしいから帰ろうぜ」
「変態? 2月だってのにおかしな話だなー!」
 康之は知らない。某が言う変態と、先程まで会話していた者が同一人物を示しているということを。