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【冬季ろくりんピック】イコン スキージャンプ(生身もあるよ!)

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【冬季ろくりんピック】イコン スキージャンプ(生身もあるよ!)

リアクション


■イコン部門・個人戦 序盤戦
 会場の熱気渦巻くスキージャンプ特設会場。この熱気で雪や氷が解けてしまわないか心配ではありますが、きっと大丈夫でしょう。そんな熱い会場では、これから『イコン部門・個人戦』が行われようとしています。
「このイコン個人戦では全部門最多の十四組が参加してくれたワヨ。どの選手も見ごたえあると思うカラ、楽しみダワ」
 そうですね、キャンディスさん。このイコン個人戦ではイコン一機――中には一体ですが……による、ジャンプ演技が行われます。計算はあくまでもイコンの数ですので、パイロットが複座式などの場合でも問題はありません。


 ――っと、どうやら最初の選手が競技開始地点に着いた模様です。どのような面持ちで競技に挑むのでしょうか。選手インタビュアーのヴィゼントさーん!
「こちらヴィゼント。今、こっちでは斎賀 昌毅(さいが・まさき)選手とマイア・コロチナ(まいあ・ころちな)選手の二人が、愛機のフレスヴェルグの調整をおこなっているところだ。マイア選手、どのような演技か気になるところだが、その後ろにある氷塊はなんなんだい?」
「あ、えっとこれは滑走と演技に使うんです。どんな演技かは……見てからのお楽しみ、ということで」
「こんなでかい氷塊を滑走に使うのか? フレスヴェルグの見た目に似て、ワイルドな方法だ。じゃあ、演技のほうも楽しみにさせてもらうぜ!」
 ……氷塊を使った滑走と演技、ですか。これはとても期待できそうですね。
「今競技のコンセプトに則った、なんでもありなジャンプと演技を見れそうダワ。昌毅選手とマイア選手は天御柱学院出身、フレスヴェルグも昌毅選手のパートナーの一人が天御柱学院仕様のクルキアータを魔改造シタ、スペシャルなカスタム機なのヨ」
 なるほど、だから見た目に荒々しさが見え隠れするわけですか。――さぁ、いよいよ滑走です。
 ……おっと、これは先ほどのインタビュー通り、フレスヴェルグが氷塊を滑走の道具にするべく、氷塊の上に乗った。安定性のほうは大丈夫なのでしょうか?
「それに関しても問題ないワ。フレスヴェルグの足部にはクローアームが配備されてるノ。本来は射撃の安定性を高めるために使うんダケド、こういう使い方もあるのネ」
 確かに氷塊を足部のクローアームでしっかりと掴んでいますね。これなら勢いに負けることはないでしょう。
 滑走開始。氷同士の摩擦はほぼ皆無、勢いあるスタートとなりました。その勢いをフレスヴェルグのブースターでさらに高め、加速をつけたまま……飛びました! ぐんぐんと高度を上げていく! さぁここからが見せ場だ、どう魅せる!?
 おおっと、上昇中にバック宙だ! 綺麗な円の形を描くとともに、滑走に使っていた氷塊をさらに上空へ、まっすぐ放り投げた! 主から離れていった氷塊は……まぶしてあった雪が氷と共に太陽光を浴びて輝きを乱反射、これは――うぉ、まぶしっ!!
 まだ滞空時間はある、さぁ何をやる! ……銃だ! 銃を取り出しました! あれは銃剣付きのビームアサルトライフル! その切っ先を光まき散らす氷塊へと向け……撃ったぁぁぁっ! 滑走を共にした朋友に対し、容赦のない乱射! 氷塊が昌毅選手に何をしたぁぁぁっ!?
 ――いや、お待ちください! これは……氷像だ! 朋友への処刑ではない、これはお色直し! 氷塊だったものは銃弾掘削によって氷像……しかもあれは、ろくりんくんだ! ろくりんくんの氷像です! キャンディスさん、これはうれしいサプライズ演技ですね!
「あんな短時間であれだけのものを作り上げるナンテ、すっごくビューティフルネ! 既存品として飾っておきたいくらいダワ!」
 さぁ、まっすぐ落下してくるろくりんくん氷像の位置へサイドブースターを使って調整しながら待ちかまえ……割れ物注意の美術品を、無事キャッチ! 勢いそのままに、クローアームで着地点をえぐりつつ確実な着地を決めました! ……これでフレスヴェルグの演技は終了となります!
 ――いやぁ、見事な銃弾掘削による氷像彫刻でしたね。下手をしたら落としておじゃん、という危険もはらんでいた分、技の巧妙さがうかがえます。氷像の出来もとてもよく、高度も問題ありませんでした。
 しかし、氷像の出来……まるで業者の人が削ったかのような精密さを誇っています。ですが、事前に仕込むには難しそうですし、仕込みの可能性は低いでしょう。もし仕込みだと判明すれば、点数は激減すると思われ――あれ、コックピットから出てくるマイア選手の顔色が一瞬悪く見えたのですが……気のせいですね、うん。
 ……得点が出ました。――70点。フレスヴェルグの演技は、70点のようです。西シャンバラ陣営、幸先のいいスタートを切れたようです。


「カタリ、こちら競技開始地点では{ICN0003887#シュヴァルツ?}を駆るグラキエス・エンドロア(ぐらきえす・えんどろあ)選手、ロア・キープセイク(ろあ・きーぷせいく)選手、エルデネスト・ヴァッサゴー(えるでねすと・う゛ぁっさごー)選手の三人が準備を整えたようだ。グラキエス選手が操縦、ロア選手は本来の姿に戻って機器類に接続されてモーションなどの管理を、そしてコックピット内に自分のくつろぎ空間を作っているエルデネスト選手はバランサーなどの調整担当らしい。グラキエス選手、これから競技に挑む心境をボンバーに頼むぜ!」
「――ツヴァイは空中戦が得意だから、このジャンプで色々なモーションデータを取れればいいと思っている。そのためにもツヴァイ、よろしく頼むよ」
「自らのイコンを、ツヴァイという愛称をつけて人と同じように接する……これは熱い鋼の絆だ! 演技の時はその辺りをチェックだぜ!」
 ……はい、ヴィゼントさんありがとうございました。続いてはグラキエス選手たちが操縦するシュヴァルツ?の演技。インタビューでも言っていたように、主たちとイコンの織りなす鋼の絆が見所といったところでしょうか。
「シュヴァルツ?はジェファルコンのカスタム機ネ。グラキエス選手の言うように空中戦を得意とする機体デ、二刀流の戦闘スタイルを持つワ。その二刀流をどう生かすか、期待しちゃうワネ」
 二刀流スタイル、ですか。果たしてどのような演技を見せてくれるか、非常に楽しみです。さぁ、準備が整ったシュヴァルツ?が滑走を開始しました。
 『加速』『高速機動』『回避上昇』と、イコンの機動力をひたすらに上げ、滑走スピードを上げていく。そして――高く飛んだぁっ!
 上昇する中、背部に取り付けられた赤い翼を大きく広げ、両手にはソードブレイカーと新型ビームサーベルを携え、振り抜く! そして刃の号令と共に、空中にて戦闘モーションを披露し始めた! 剣道の型とも思える実直な印象を見せる演舞っ! その演舞に合わせ、シュヴァルツ?の周囲で爆発が起こる! まるで透明の敵を斬り捨て、大立ち回りを見せているかのようです!
 どうやらあの爆発は、シュヴァルツ?の腰部に武装されたクラッカーを使ってるとのこと。中身は危なくない花火のようですが、気迫のこもり具合と重なって、臨場感あふれる演出になっているようです!
 空中で繰り広げられる、大演舞! 下降状態となった今も続き――最後の敵を、追撃するかのごとく頭上から二刀の牙が襲いかかって……フィニッシュです!
 実直さと迫力が重なり合って生まれた、熱意あふれる演技……いえ、演舞でしたね。激しいモーションの動きだったにも関わらず、乱れもほとんどなかったのも、サブパイロットのエルデネスト選手や機器管制を務めたロア選手という、グラキエス選手のパートナーたちの働きあってのものでしょう。
 ――得点が出ました。60点のようです。どうやら、着地の部分で少し減点されたようですね。ですが、十分高い得点と言えるでしょう。


 ……三組目の準備が整ったようです。三組目は東シャンバラ陣営、薔薇の学舎在学の清泉 北都(いずみ・ほくと)選手とクナイ・アヤシ(くない・あやし)選手が搭乗するアシュラムが演技を行います。この機体は薔薇の学舎専用のイコンであるシパーヒーで、華麗さをどう表現するのが非常に楽しみです。
 先ほどまで行われてました選手インタビューでは「なんとしてでも自分の陣営に勝利をもたらしたい」と答えてくれました。確かに現在の得点差がかなり開いているので、東シャンバラ陣営は頑張りたいところでしょう。
「北都選手は夏季ろくりんピックの時も参加していたカラ、自分の陣営の勝利を望む気持ちは強いワネ。それが原動力になりそうダワ」
 さらに、インタビューによればアシュラムの装着している巨大スキー板には薔薇の香りがするロウソクを塗ってあるとのこと。たとえ香りがここまで届かずとも、にじみ出る華麗な雰囲気で魅了してくれるでしょう。
 しかもアシュラムは古代ローマ……オリンピックの発祥地にあやかってか、白い布を腰と上半身に巻いています。着こなしもさりげない華麗さを見せるあたり、さすがは薔薇学。期待が持てます。
 ――さぁ、滑走開始です。どうやら『加速』を使ってスピードを上げている模様。高く飛べるか、華麗に優雅なハイジャンプを……飛んだぁっ! 記録されている最高高度までは届きそうにないが、十分な高さ!
 その高さまで向かう中、アシュラムは回転を始めました! 両手を広げて、大きな回転! これは――スケートだ、空中で氷上のスケート演技だっ! 寸分ぶれぬ機体の姿勢、これも美しさが生み出したものなのか!?
 滞空時間は十分、次はどんな――またしても回転! 今度は身体を抱くようにしての高速回転! 空で奏でるトリプルアクセルッ! 巻いている布が浮き上がってチラリズムになりそうだ、ロボチラだっ!
 指の先までまっすぐ伸ばし、美しさを重点に置いています! 『高速機動』を使っているのにも関わらず、これだけの精密な姿勢制御ができるのも、クナイ選手の姿勢制御能力が高い証拠でしょう!
 回転している間にも下降は始まる、もうすぐ着地準備をしなくてはいけませんが……これはすごいっ! 下降しながらのムーンサルトです! 月面宙返りで体勢を入れ替えながら――着地点に対し『急所狙い』をしてのフィニッシュ! ビシッと決まったが……『急所狙い』に何の意味があったのか!?
 薔薇学の生徒らしい、華麗な演技。実に堪能させていただきました――っと、得点が出た模様です。
 得点は……65点です。全体的な華麗さに評価があったようですが、最後の急所狙いの意図が掴めず、うっすらとした減点になったようです。ただ、得点としては高めですし、十分な結果と言えるのではないでしょうか。東シャンバラ陣営も幸先のいいスタートを切れた模様です。


 さぁ、アキラさんとジャイアントピヨを中心とした着地点の軽い整地が終わり、競技が再開されます。四番目は火村 加夜(ひむら・かや)選手とノア・サフィルス(のあ・さふぃるす)選手が乗り込むイコン、アクア・スノーの登場です。ヴィゼントさん、選手はいまどのような感じなのでしょうか?
「こっちのほうはやや緊張気味、といったところだ。そんな二人の緊張を吹っ飛ばす特別ゲスト、来てくれてるぜ」
 はい、その通りです。ちょうど今、こちら実況席に特別ゲストとして卜部 泪(うらべ・るい)さんに来ていただいております。泪さん、よろしくお願いします。
「はい、よろしくお願いします。こういった競技の解説、というのもなかなかにない機会ですので、楽しんでいきたいと思います」
 うーん、さすがは看板女子アナ。この笑顔だけで中継の視聴率がぐんぐん上がっているような気がします。さて、泪さん。今回は解説と共に加夜選手の応援も兼ねている、とのことですが……。
「そうなんです、加夜さんから『ぜひ応援に来てください』って言われたので応援しに来ました! 加夜さん、頑張ってくださーい!」
「は、はいっ! 頑張りますっ!」
 実に嬉しそうな声です。泪さんの応援で、加夜選手とノア選手の気合も十分入ったようですね。
 加夜選手たちが乗っている機体、アクア・スノーはイーグリット・アサルト。その名にふさわしい白色のペイントが施されており、さながら雪の妖精といったところでしょうか。
 さぁ、コックピットに乗り込んで、いよいよ滑走開始です。踏切台までの滑走路を『加速』して助走をつけ、踏切台へ……おおっと、煙が出始めました。これは故障か!?
「いいえ……これは増設スモークディスチャージャーです。それを使ってたくさんの煙をまとわせ……あ、雲に見立ててるのかもしれませんね」
 雲ですか、なるほど。さて、踏切台周辺は完全に煙雲に包まれ、アクア・スノーの姿が確認できませんが――出てきたっ、出てきました! 雲の中から白雪の精が姿を見せたぞぉっ!
 しかし煙雲の中からの登場からか、高さは厳しいところ。しかし下降状態になっても流れるような動きで前方宙返り、二回半ひねり、後方宙返りを決めていく!
「すごいです、これだけの流れる技の流れ――まるで雪! 雪が風に流されて空中に舞うかのような、自然体の技ですよこれ! まさに粉雪、雪に頼らないスノーホワイトの誕生かもしれませんよ!」
 思わず泪さんもテンションを上げるスキージャンプ! 最後は――足を抱え込んでの宙返りを披露し、両足を揃えた綺麗な着地! 無難なフィニッシュを決めましたっ!
 最後の宙返りは言うならば固い雪か雹! 雪は優しいだけではないことを知らしめました!
 いやぁ、綺麗な演技でしたね。おっと、コックピットからノア選手が泪さんに向かって手を振っているようです。加夜選手たちも満足いく演技ができたのでしょう。
「表情もすごく清々しい感じでした。あれは確実にやりきった、という現れにも見えますね」
 泪さんの応援もあってか、演技にも気合が入っていた模様です……おっと、点数が出たようです。その得点は――55点。どうやら高さの部分で引っかかったようですね。とはいえ、まだまだ問題ない点数と言えるでしょう。頑張りが実を結びました。


 ――さて、泪さんはお仕事の収録があるため実況席をあとにしましたが、まだまだ競技は始まったばかり。チャンネルはそのままでお願いします。
 次の選手は……ええと、ヴィゼントさーん?
「こちらヴィゼント。次は聖剣勇者 カリバーン(せいけんゆうしゃ・かりばーん)選手と天樹 十六凪(あまぎ・いざなぎ)選手なんだが――って、おい!?」
「フハハハハハ!! 我が名は秘密結社オリュンポスの大幹部、天才科学者ドクター・ハデス(どくたー・はです)! 今回は我々の知名度を上げるため、優秀な部下の一人であるカリバーンにこの競技に参加してもらい、優勝をいただいていく! 我々の活動に興味がある者は――あっ」
「いきなりマイクを取るんじゃねぇ! ――ともかくだ、俺のボンバーヘッド並みのボンバーな頭脳を持ってるハデスが聞きたいことを勝手に話してくれたからいいが……その、カリバーンのイコンはどうしたんだ?」
 そうですねぇ。確かに見たところ、ジャンプ台にはイコンらしき影は見えませんが……ただ、登録してあるイコン名が神剣勇者エクス・カリバーンとのことなので、カリバーン選手と関係があるのは確かなようですが。
「秘密結社オリュンポスの科学力をあまり舐めないほうがいい、そしてこの演技を見て我々にひれ伏すのだ! フハハハハハ……!!」
 ……えーと、なんか言いたいこと言って帰ってしまいましたね。肝心の選手インタビューができずに開始の時間となってしまった模様です。
「未知数のイコンであることには間違いないワネ。情報ではさっきのハデスがカリバーン選手に演技内容を施してたらしいケド……」
 ……ど、どうなるんでしょうかね。色々と、期待と不安が入り乱れます。さぁ、結局3メートルほどの生身(?)の巨体のまま、滑走が開始されるようです。
 ――おっとぉ、いきなりカリバーン選手が変形した!? これは……剣だ! 剣の姿に変形という荒技をいきなり出したぞ! そしてそのまま滑走を開始、勢いのある滑り出しですっ! ――勇気ある剣が、空を舞う!
 いきなり無茶苦茶な展開を見せてますが、この空中では許された行為! 上昇するカリバーン選手、再び人型へとその形態を戻し、高めの高度を保つ――おおっと、何か飛んできた! 何かが太陽を背に飛んできたぞ! あれは……なんでしょうか!?
 ――あれは、カリバーン選手のEXユニットだ! 魔道書形態であるタブレットPCの姿になってる十六凪選手がコントロールしているようです!
 位置合わせ、タイミング合わせを終わらせてカリバーン選手とEXユニットが最高高度で神・剣・合・体!! 私たちが望んだ勝利の剣、神剣勇者エクス・カリバーンに合体完了! 決めポーズも太陽を背に、ばっちり決まったぁぁぁ! まばゆく光る剣の勇者、ここに推参!
 さぁ、下降状態に入りエクス・カリバーンが演技を――!
「割り込み失礼するぜ! こちら競技開始地点、準備を進めていたボンバーな奴が熱くなりすぎて滑走を始めやがった! コンクリート モモ(こんくりーと・もも)選手とハロー ギルティ(はろー・ぎるてぃ)選手の乗るジェファルコンカスタムだ! 氷の盾に乗ったまま滑走部分に冷凍ビームかけて準備してたんだが、待ちきれずに『加速2』を使って――!」
『あーあー、前方のイコンへ緊急連絡……ミーのマスターが『空中で合体したい』とか言って頭おかしくなったから適当にリアクションを頼むにゃ』
 おおっと、これはトラブルか? 次の滑走準備をしていたはずのモモ選手が独断で滑走を始めてしまった模様。すでに上昇シークエンスの最中であり、このままではイコン格闘技パフォーマンス中のカリバーン選手とぶつかってしまう!
『――了解です。そちらの速度なら着地直前にぶつかる計算になります。こちらの着地点を少しずらして対応しますので、安心してください。私たちが欲しいのは勝利ではなく、知名度なのですから』
 ジェファルコンカスタム、最高速度でエクス・カリバーンに両手をまっすぐ伸ばしたまま、接触してしまうのか――おっと、そのエクス・カリバーンは飛び蹴りという形で前方へ大きく避難! しかしこれでは着地地点が大幅にずれてしまうぞ!?
 ――出た、変形だ! 勝利を生み出す光輝の刃、神剣エクス・カリバーンに変形すると、重力に引かれて真下に落下! そのまま地面に突き刺さる形でフィニッシュ! ジェファルコンカスタムは合体する相手がいなくなり、両腕は空を掴んで――雪の上に不時着だーーっ!!
「天樹 十六凪、とっさの指示のおかげで大事故にならずに済んだようだ。助かったぞ!」
 どうやら、着地点がずれたのは十六凪選手のとっさの判断だったようです。なんにせよ、大きな事故は起こらなかったようなので安心しました!
 っと……不時着したジェファルコンカスタムが起き上がったようです。雪のおかげで大破は免れたものの、どうやら指が折れてる程度の破損みたいですね。あれだけ勢いよく着地点に突っ込んだのに、あの程度で済んだことがまるで奇跡としか言いようがありませんね。
「――その無謀さ、ほめられたものではないが勇気だけは本物のようだ。その勇気を称え、もしまだ腕が動くというのならば、俺を抜くがいい!」
「ふふ、うへへへへ――だったら……!」
 なにやらジェファルコンカスタム、何とか腕を動かして……神剣エクス・カリバーンの柄を両手で握り、抜いたっ! そして――このポーズはっ!?
「これは――かの有名な“勇者パース”と呼ばれる剣の持ち方ヨ! あの持ち方をすることデ、迫力を見せることができると言われているワ!」
 これは見事な決めポーズですが……着地後のポーズなので得点には影響されませんね。ちょっとその点は残念だと思います。
 ……さて、得点が出ました。今回、競技前に滑走してしまったためモモ選手たちのジェファルコンカスタムは失格となり、得点は入りません。カリバーン選手たちのエクス・カリバーンは予定着地点を大きくずらしてしまったこと、演技の途中でトラブルに巻き込まれたこと、そのトラブルにうまく対応したこと……それらすべてを考慮し、演技なども見て計算したところ、30点とのことです。
 とはいえ、これだけの事態になったことで秘密結社オリュンポスの知名度は少しは上がったようにも思えます。
 そして場内連絡です、今のトラブルでかなり着地点がボロボロになってしまったので、これより着地点の軽い整地作業に入ります。会場の皆様は競技の再開まで少しの間お待ちください。テレビの前の皆様には、その間CMをご覧ください。