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リアクション
■生身部門・個人戦 中盤戦
――ジャンプ台の修復と着地地点の整地が終わり、競技が再開されます。やはり何でもありという面もあって、こういったトラブルもあるものなんですね。
「怪我だけは本当気を付けてほしいワ。デモ、そういった怪我寸前のスリルというのも楽しみの一つなのかもしれないワネ」
タイトロープの快感、というものかもしれませんね。さて、次の競技者の準備が整ったのでその様子を見て見ましょう。ヴィゼントさん、よろしくお願いします。
「了解だ。現在、競技開始地点には小鳥遊 美羽(たかなし・みわ)選手と美羽選手のパートナーであり、アシスタント兼応援のベアトリーチェ・アイブリンガー(べあとりーちぇ・あいぶりんがー)さんがいるぜ。美羽選手、今日も元気いっぱいだな!」
「もっちろん! こんなに目立てる競技もそうそうないもん! みんなの注目を集めて、優勝狙っちゃうよ!」
「今回は私が特製のスキー板を作りました。機晶技術を使った、七色に輝く――」
「わー! 言っちゃダメだって! みんなを驚かせるんだから!」
「美羽選手の着ているスキーウェアでだいたいの想像はつくが……まぁいい、どんな演技か期待していてくれよ!」
ありがとうございました。どうやら美羽選手、スキーウェアも七色に光ってましたから、テーマとしては虹でしょうかね?
「だと思うワ。元気いっぱい目立ちたがり屋の彼女だからこそのチョイスネ。……そういえば、この競技に優勝の概念はなかったはずヨ。代わりに審査員特別賞というのがアッテ、それを獲得した陣営にはボーナス点として200点追加されるワヨ」
200点は大きいですね。負けてる陣営にしてみれば、それで逆転も夢ではなさそうですよ。……さぁ、美羽選手の準備が整った模様です。ベアトリーチェさんは一足先に着地地点付近の応援席に戻って応援しているようですね。
滑走開始、七色に輝くスキーウェアにスキー板。ちょっと目が痛くなりそうですが、その目立ちたがり精神は見事なもの。しかし速い! 『ゴッドスピード』と『バーストダッシュ』を併用した超加速で、あっという間に踏み切り台へ! そしてそこから『光術』を使って光り輝きながらのジャンプ! ぐんぐんと天高く上昇していきます! さらに光精の指輪を使ったのか、周囲には一緒に飛ぶ光の精霊たちの姿もあります! これは目立つ! 夜ならば美羽選手の周囲だけ昼状態! 目立ってなんぼの精神だ!
さらにその輝きを周りへおすそ分けするかのように、ダンスのような様々な回転を披露! これはいろんな意味で魅了されてしまうぞ!
さぁ現在の記録を大きく塗り替える高度にまで達し、いよいよ下降に――おおっと! ここでまさかのメタモルブローチを使用! 美羽選手、スキーウェアから可愛いアイドル衣装へ大変身! この衣装も虹色で、まさに虹色ミラクルだ! そして下降を開始し、こちらでもダンス回転による虹のおすそ分け! 虹を架ける箒を改造したというストックからは、七色のアーチが空中に架けられております!
これだけのジャンプだ、着地も相当難しいところだが――おおおお! これはすごい、見事な着地を決めてフィニッシュ! あれだけの高高度ジャンプを成功させたのはさすがです!
その秘密はどうやら、ブレイブの持つ『段差に強い』特性を着地に生かしたためでしょう。こういう形で高高度ジャンプを成功させるとは、目から鱗が落ちそうだ!
さぁ、これは高得点が期待できそうです! ――得点が出ました! その得点は――70点! 超高高度ジャンプの成功や衣装などに評価が得られましたが、技部分で物足りなさがあった、という評価が出てしまったようです。しかし、これは実に大きい得点だ!
興奮も冷め切らぬ中、六番目の選手が準備している模様です。続いてのジャンパーは佐々木 弥十郎(ささき・やじゅうろう)選手。応援席には熊谷 直実(くまがや・なおざね)さんが黙したまま競技開始地点を見つめています。その姿、とてもダンディです。
「その直実さんだが、弥十郎選手を見送る際に「本当にその恰好で大丈夫なのか」と心配していたな。だが、弥十郎選手は「これで大丈夫」と返答し、直実さんの『クライ・ハヴォック』による活を入れてもらい、今に至っている。どうやら弥十郎選手、相当自信があるようだな。ただ、インタビューしようとしたが『存じ上げません』の一点張りで詳しい話は聞けなかったのは残念だ」
おおっと、ヴィゼントさん。珍しいですね先に話しかけてくるとは。
「ずっと同じパターンだったからな、たまにはいいだろう?」
ええ、これはこれで悪くないですね。さてキャンディスさん、弥十郎選手のあの恰好……どう見ても、キノコ……ですね。
「その原因はあのキノコハットネ。あれ被っちゃったらほとんどキノコにしか見えないワヨ。エンペラーローブも着込んでるみたいダケド、中はどうなってるか気になるところネ」
果たしてどのような演技を披露してくれるのでしょうか。未知数の考えを解放するようにして、弥十郎選手が滑走を開始しました!
――と思ったら、なんと滑走せずにその場で浮遊を開始! どうやらこれは『ふわふわ気分』を使って飛んでいるようだが……? ――おっと、『ふわふわ気分』の効果が切れたらしく自由落下を開始しました。弥十郎選手、いったい何を……そういうことか! これは重力を使った加速! 自由落下から得られるスピードをそのまま加速に使って、ジャンプの高さを得ようとしています!
これは面白い加速方法! かなり練習してきたのか、滑走路に勢い残したまま着地し、ジャンプ台まで一気に滑走! 空気抵抗を減らした滑り方でさらにスピードを上げ、そのままジャンプした!
さぁ、ここからどう出る! ……いや、出した! あれは『超感覚』か!? オナガサルの尻尾をピョロンッと出した! シルエットだけ見るとロケット花火のように見えるぞ!
そしてキノコハットから胞子だ! キラキラと光る胞子のようなものをまき散らしながら、最高高度まで上昇していく! 花火感満点! 冬空にロケット花火が飛んでいく!
弥十郎選手、下降を始めると共にキノコハットとエンペラーローブを脱いだ! その下から現れたのは、振り袖姿! その振り袖の袂を蝶の羽のように動かし、そのままゆっくり着地! だがこれは禁止行為、大きく減点されてしまいます!
何でしょうかね……弥十郎選手、なんというか非常に予測しづらい演技の流れだったような気がします。
「おそらくは『メンタルアサルト』による意表を突く作戦だったのかもしれないワ。キノコからロケット花火、そして蝶へと至る予測不能な流れハ、これを生かすためのものだったかもしれないワネ」
なるほど……そう考えると納得できますね。さて得点ですが……うーん、これは厳しい45点。発想は良かったがやはり最後の着地で減点を食らっているようですね。
どうやら着地地点では直実さんが弥十郎選手の肩を叩いて、健闘をたたえているようです。失敗したとはいえ、叱咤せずに頑張ったと褒める。こういったことも重要なのでしょうね。
さぁ、どんどん参りましょう。折り返しを過ぎた七番目の登場となりますはダリル・ガイザック選手! どうやらダリル選手、羽純選手と個人的に勝負を持ちかけているようですね。
「羽純選手は無理やり連れてこられての参加、と聞いているワ。でも、仲がいいのネ〜」
さて、このダリル選手の演技には特別解説者がおります。ここの実況席にはいないのですが、ヴィゼントさんが代わりにその方のほうにおりますので中継を繋いでみましょう。ヴィゼントさん!
「こちらVIPテント。ダリル選手の演技解説者として、バァル氏が解説をやってくれることになったぜ! バァル氏、観戦だけではなくこんなことまでやってもらえるとは!」
「大事な友人たちの頼みだ、断るほうがおかしい。だがこういったノリはあまりやったことがなくてな……その、あの実況者のようにやればいいのか?」
ああいや、わたくしのはただテンション上がってああなるだけなのでご心配なく。どうやらバァル氏の他にも応援として何人かいるみたいですね。
「ああ、そうだな。バァル氏の他に親善団のみんなも東西の隔てなく応援している。こんな感じでな」
「ダリルさんも頑張ってー!」
……歌菜さん、いつものように魔法少女アイドルに『変身!』して『マジカルステージ♪』での応援に励んでいるようですね。
「……なるほど。ああいう風に応援をすればいいのだな」
いやいや、バァル氏のイメージが大きく崩れてしまうので控えていただけると。――さて、そうこうしている間にもダリル選手の準備が整い、滑走開始の時間を迎えたようです。ダリル選手はサンドボードをスノーボードのようにして乗り、滑走を開始しました!
『風術』で加速を加え、スピードを保ったまま離陸! その瞬間に『飛行魔法↑↑』を使い上昇加速をさらに上げていった! これは高い高度を期待できそうだ!
「ああいう使い方ができるのか。発想の柔軟さには感服してしまうな……わたしももっと勉強をしなければ」
さぁ、最高高度を通り過ぎて下降を開始すると、二本のマフラーと衣を翼のように躍らせ、閉脚による縦四回転と開脚による縦四回転を一度ずつ! 長布が綺麗な円を描いているぞ!
さらにそこから横の閉脚四回転! 回転の軌跡は『氷術』『光術』を併用した綺麗な円の軌跡を描く! これはまさに円のアーティスト!
そして軌跡を描き終わると左手から生えている光条兵器でブレイブの剣技演舞! 美しさを追求した素晴らしい演舞だ!
「これは実に美しい……空中で姿勢を保ったままあのように演舞をするだけでもひと苦労するものだ、ダリルは相当の練習を積んだと見えるよ」
『飛行魔法↑↑』を逆噴射させながら着地してフィニッシュ! 華麗な演技を周りにばっちりと見せつけましたが……勢いを弱める着地方法が少しネックでしょうか。
「きゃーダリルさーん!」
「ダリルー、よくやったー!」
とはいえ、歌菜さんやルカルカさんの応援も気合入ったものになっています。バァル氏、今の演技はいかがでしたでしょうか?
「華麗さを前面に押し出した、素晴らしい演技だった。砂地を雪面のように走れるサンドボードを、本当の雪面で使ったという点も実にユニークだったな」
なるほど、ありがとうございます。さて得点のほうが出ましたが――65点です。やはり着地時の『飛行魔法↑↑』の逆噴射で勢いを弱めたのが主な減点部分になってしまったようです。
バァル氏、解説のほうありがとうございました。引き続き競技のほうをお楽しみください。
生身個人戦も佳境を迎えてきました。続いての選手は湯島 茜(ゆしま・あかね)選手です。……茜選手、生身個人での出場なのですが、どういうわけか緋羅丹賦螺列車砲……ひらにぷられっしゃほう、でしょうか。それを持ち込んできているようですね。なんというか……不思議な印象のある選手ですよね。
「そうネー、どんな演技をするのかすごく気になるところではあるワ。何かとんでもないことをしでかしてくれそうな気がするのヨ」
予感……ですか。ではその辺り、ヴィゼントさんに探ってもらいましょう。ヴィゼントさーん?
「こちらヴィゼント……なんだが、肝心の茜選手はインタビューに対してはノーコメントを貫き通した。こうなってくるとどんな演技を見せるのかに注目するしかなさそうだな」
なるほど、ありがとうございました。……さぁ、滑走開始となります! 茜選手はどのようなジャンプを、演技を決めるのでしょうか!
滑走を始めた茜選手、『疾風迅雷』で加速して最大スピードを保つ! まるで何度も重ねがけをするかのように『疾風迅雷』を使い、天に向けてジャンプ台を踏み切った!
とにかく高く、高く飛ぶ! ……これは、あれでしょうか? 最高高度を目指そうとしているのでしょうか! 技を行うつもりは一切なし! ただ純粋に高さを目指す、チャレンジャーだ!!
――が、ダメッ! 美羽選手の叩き出した高度記録には届かなかった! 下降する茜選手、その胸中はいかほどのものか!
そのまま着地の態勢に入るが、高さを追求した代償か、姿勢制御がままならない! ――ダメだっ、不時着! 着地できず、体が激しく投げ出される形になってしまう! しかしなんとか河馬吸虎のキャロリーヌがキャッチし、なんとか大きな被害にはならずに済んだようです!
……完全に高さだけを追求した、危ない演技になってしまいましたね。茜選手に大きな怪我などはなかったようですが、念のため救護テントへ運ばれていった模様です。
さて点数のほうですが……10点だそうです。高さの追求は評価できるものの、技もなく危険な着地になってしまったのが仇となってしまったようですね……。
残り四組となり、個人戦も終盤を迎えようとしています。個人戦が終わりますと、生身団体戦を残すばかりになります。それでは、ここで一旦CMをご覧ください。
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