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【祓魔師のカリキュラム】一人前のエクソシストを目指す授業 1

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【祓魔師のカリキュラム】一人前のエクソシストを目指す授業 1

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第12章 3時間目・質問&回答@説明タイム

 授業の前日に魔列車でザンスカールへ赴き、宿に宿泊していたエリシア・ボック(えりしあ・ぼっく)は、身支度を整えて夕方の授業に参加する。
 ノーン・クリスタリア(のーん・くりすたりあ)を連れて、聖杯と使い魔の扱いについて学ぶ。
 御神楽 陽太(みかぐら・ようた)の方はというと…。
 愛しい妻と仕事から帰宅し、ツァンダの自宅でくつろいでいる。
 パラミタ横断鉄道の実現を目指す御神楽夫妻は、鉄道事業で大忙しなので、2人だけで来た。
「眠いよー…」
 ノーンは昨日の夜から明け方まで、戦争シミュレーションゲームでエリシアと遊んでいたため、今にも瞼を閉じて眠りそうだ。
「(早めに寝かせるべきでしたわね)」
 遊びに夢中になりすぎ、睡眠不足のノーンを横目で見る。
「だけど授業は受けたい…っ、ふぁあ〜…」
「眠気を我慢してまで来るなんて、ずいぶんと勉強熱心ですわね。使い魔に興味があるんですの?」
 後ろの席にいる中願寺 綾瀬(ちゅうがんじ・あやせ)が、ノーンに声をかける。
「おねーちゃんと一緒にきてるんだよ」
「そのお姉様の方は、どのような使い魔に興味ありますの?」
「例えば…ゴーレムとどう違うのか。祓魔師の使い魔に関心がありますわ」
「教室の外にいるのは、あなたのですのね」
 ゴーレムがドアの傍に佇んでいたため、少しだけ触れたが、それが何なのかまでは分からなかった。
「えぇ、そうですわ」
「その辺りは、扱い方の説明の中にあるかもしれませんわよ」
 そう言うと綾瀬は2人の教師の方へ視線を移す。
「ではでは〜3時間目の授業を始めますぅ〜!!授業中、疑問・質問などがありましたらぁ〜、遠慮なく聞いてください〜!まず始めに、聖杯や使い魔を使役する方法ですがぁ、幻獣の主のスキルを習得しなければ扱えません〜」
「綾瀬は習得済みよね?」
 漆黒の ドレス(しっこくの・どれす)が小さな声音で綾瀬に話しかける。
「えぇ、問題ありませんわ。お話の続きを聞きましょう、ドレス」
「どのように呼び出すのか楽しみね」
 そう言うとドレスと綾瀬は黙り、静かに教師の話を聞く。
「精神力が尽きてしまうと〜帰還してしまいますからぁ、気をつけてくださいねぇ。ニュンフェグラールを両手で掲げた術者は、祈りの言葉を唱えますぅ〜。言葉は使い魔と術者の繋がりをつくる感じのものなら、ある程度なんでもいいんですよぉ♪」
「例えば、オレが校長の使い魔だとして、お菓子が欲しいとか言われても、呼び出しに応じないってことだよ」
「ラスコット先生が言うように〜、目的から外れた扱いは出来ないというこですぅ〜。私が気に入らない人がいるから、葬って欲しいなどという命令も実行してくれません〜」
「ただ相手がムカツクからとか、そういった理由などでは動いてくれないんですね。目的を隠した場合、悪事を見抜かれることはありますか?」
「使術者がよくないことを考えたり、わるぃ〜い精神は〜、使い魔がすぐに察知しちゃいますぅ。清らかな精神力を保てないと、使い魔はその場から消えちゃうんですぅ、ロザリンドさん」
 ロザリンド・セリナ(ろざりんど・せりな)のような者は、そういう事態を起こさないだろうが、時に間違ったことに使役する者もいないとは限らないのだ。
「校長、念のため確認しますが、魔性は実体をもっていなかったり、人や物に憑依して行動したりするのですよね?その中でも人などに悪影響を及ぼす相手を祓っても、何度も罪を重ねて説得しきれない場合、消滅させないといけない相手もいるということでしたよね?」
「はい、そうですぅ〜」
「使い魔もそういった魔性の一つですが、私たちの手助けもしてくれるという意味では、良い魔性ということなのでしょうか?」
 悪事を手伝うような存在ではなく、使役する者に力を貸す存在と考えると、使い魔は良い魔性なのかと問う。
「これから皆さんが扱う使い魔は、とーってもよい子たちなのですよぉ〜♪ただし、呼び出す前まではどこにいるか分かりませんし〜、教えてくれません〜」
「自分のことをあまり詮索されるのは好まない…ということでしょうか?」
「えぇ、おそらくそのような感じですねぇ」
「魔性も聞いた感じでは私たちと同じく、良い人悪い人がいて、犯罪を犯した人を逮捕したりするという感じなのでしょうか?」
「更生させるためには〜、まず捕まえる必要がありますよぉ〜」
「そうなると、軽犯でもいったん捕まえなきゃいけないでしょうね」
 ロザリンドはなるほどと頷き、悪事をやめるように説得するには、やはり捕まえなければいけないようだ。
「サイコメトリで物から残留思念を読み取れたりしますが、残留思念に魔性と関連があったりしますか?」
「関連がないこともありますがぁ〜。時には、相手に悪意や恨みの感情を抱く者もいますぅ〜。大切なオルゴールを奪い合ったとか…そんな感じですねぇ〜」
「分かりました、説明ありがとうございます」
「では、聖杯と使い魔についての話に戻りますぅ。術者の祈りにより聖杯に使い魔の涙が落ちたら〜、自分の血を混ぜてくださいねぇ。地面や紙のどちらかに魔方陣を描いて、それに落とすのですぅ〜」
「クローリスなら花をイメージした図柄で、ポレヴィークは草や樹のイメージだね」
「呼び出すことが出来ましたら〜。修練を積むことで、治療に必要な分だけポレヴィークが薬草を出したりしてくれますぅ〜」
 口頭だけでなく、エリザベートはチョークで黒板に書きながら説明する。
「一瞬で治療出来る即効性のある薬草などを求めたり、必要以上の要求などには答えてくれないよ」
「ラスコット先生。この聖杯でやってはいけないことや、それをやってしまったら使い魔を呼び出せなくなるとはありますか?」
 扱う者の精神を乱すと守りに影響すると、深夜のカリキュラムで説明してもらっていたが、NG行動があるなら今のうち聞いておこうと五月葉 終夏(さつきば・おりが)が質問する。
「聖杯の中にある涙を、他の者の聖杯に移しても効果がないよ」
「自分が相手からもらうのも、無効なんですね」
「うん、そういうこと。聖杯は熱などに強いけど、それをラーメンの器代わりとか、飲食用に使ったら怒って何日も出てこないこともあるね」
「自分だけじゃなく、他人も間違った使い方すると怒られますか?」
「管理が出来ないと思われて、怒るだろうな。当然、投げたりとかするのもいけないけど。後は、ケースバイケースだよ」
 敵地などにいる場合わざとでなく、相手から攻撃を受けて落としたりすることもあるだろう。
 そういった時は、へそを曲げたりはしないようだ。
「歪んだ精神の持ち主だったりすると、まず呼び出すことすら出来ないね」
「扱う者の精神に影響するということは、そういうことも含まれているんですね」
 どうやら使い魔は、罪の片棒を背負うようなことは好まないらしい…。
「恐怖心の感情などの感情で、精神を乱すとポレヴィークが樹木の守りの壁を補強したりする時、遅くなったりするよ。上手く扱う自信がないと思ったりすると、呼び出してもすぐに消えてしまったりね」
「暴れたり、襲ってくることはなさそうですけど、消えてしまうと不利な状況に陥るでしょうね…。それと…使い魔は術者のことをどう思っているんでしょう?」
「たいていは主従関係だね。術者を主とする、しもべのような感じかな」
「うーん…私は仲間とか相棒とか、そっちのほうがいいんですが…」
「呼び出した時に、自分の考えを伝えればいいよ。ある程度は応じてくれると思うし」
「分かりました、クローリスに聞いてみます」
「あなた、本当にそれでいいんですの?」
 従順に従わせるほうが扱いやすいのでは?と綾瀬が言う。
「私は、しもべとかそういう関係は好まないんだよ」
「へぇ〜…そういう考えも面白いですわね」
「えー…面白いの?」
「笑えるとか、そういう意味ではありませんわ。仲間や相棒として扱うと、意思を持って意見するようになるかもしれませんのに。それでも、そうありたいだなんて、とてもユニークな方ですわね」
「うん、私にはそっちの方が合っているかな」
 終夏は使い魔をしもべとして見るよりも、支え合う者の方が合うらしい。
 彼女の思いが吉となるか、それとも凶となるか。
 どちらの目が出るかは終夏次第だ。



 魔法学校で新しい科目が増えると知り、リゼネリ・べルザァート(りぜねり・べるざぁーと)は大学から足を運んでみたものの、魔道具を上手く圧得そうにない。
 ならば仲間内で誰か扱えるようになればよいかと、多少の心得があるパートナーを連れてきた。
 あまり興味がないのか、熱心に先生の話を聞いたりしているようには見えない。
「おいルヴェ、居眠りでもしたらぶっとばすからな。てめぇのために来てんだからしっかり聞いとけよ」
 ベリアリリス・ルヴェルゼ(べりありりす・るう゛ぇるぜ)が真面目に説明を聞き、ノートに書き込んでいるのか、リゼネリは彼の方へ顔を向ける。
「あー、もう分かってるって。このくらい聞き流せば勝手に頭に入るから。人間と同じ基準で考えないでよ」
「後でできねぇなんてほざいたら殺すぞ。まぁ出来ても殺すが」
「えぇ〜…。ちゃんと出来た場合くらい、生きさせてよっ」
 成功でも失敗でも死亡フラグを立てるぞと言われ、生存させてと抗議の声をあげる。
「他のパートナー同士は殺伐としていないのに、僕の扱いって…」
 隣の芝生は青く見えるという言葉を耳にした記憶はあるが、扱いの差が違いすぎる。
「おい、何か言ったか?」
 まさに地獄耳の如く、小さな声も聞き漏らさず、視線だけで殺しそうなほどベリアリリスを睨みつける。
「なんでもないよっ」
 彼は慌てて顔を隠し、ため息をついた。
「(僕が好んで操るのって、蜘蛛や百足なんかの虫か或いは蛇とかだし…)」
 召喚系はそもそも得意ではないし、他に専門といったら、動物由来の毒などだ。
「ていうか質問くらいしろよな」
「そう言われても、聖杯や使い魔について、あまり聞きたいことないからね」
「よし、後で脳みそに響くほどぶっ叩いてやる」
 彼の代わりにリゼネリが校長に聞く。
「―…えぇと、質問です。使い魔はどのような存在ですか?」
「基本的には使役する者を主として、術者の精神力を糧に、様々な命令に従う者ですぅ〜。主とその仲間を守る役割が多いでしょうねぇ〜。呼び出される前はまでは、イルミンスールのどこかに存在しますがぁ〜。生息区域を発見することは、おそらく不可能に近いですぅ〜。たとえ主であっても、その場所を教えたりはしませんよぉ」
「なるほど。無理に探そうとすると、警戒されてすぐ逃げられてしまいそうですね。視認可能ですか?或いは触れることは可能ですか?他にも特徴的な性質があれば、教えてください」
 パートナーがきちんとメモしているか確認すると、2つ目の質問を投げる。
「呼び出した使い魔は毎回同じ相手で、視覚認識することは出来ますが〜。呼び出される前は、見えません〜。触れることも可能ですし、趣味として人と同じものを食べることもありますぅ〜。言葉を理解したり、喋ることも出来ますぅ。身長は30cmから180mくらいで〜、ポレヴィークとクローリスの外見は、両方とも女の子ですよぉ。血の情報で、ある程度術者のことはわかりますからぁ。自己紹介とかは必要ないですぅ。あとぉ〜…呼び出した者以外には、従いません〜」
「術者に従順な性格の使い魔が多そうですね。ありがとうございました!」
「花や草・樹の使い魔か。きっと美しいんだろうな」
 クローリスやポレヴィークがどのような容姿なのか想像しつつ、クリストファー・モーガン(くりすとふぁー・もーがん)は聖杯に触れる。
「使い魔の使役だけに限らず魔道具でも、上手く扱うには不測の事態が起こっても、動じないことが重要なんだよね」
 クリスティー・モーガン(くりすてぃー・もーがん)はエクソシストに求める美しさを語り、守りの力を行使するためには、不動心が必要だと言う。
「全てをスマートに行うのは大変だけどね」
「だからこそ単独行動などに走らず、人の言うことをきちんと聞く態度も重要なんだろうな」
「ミスなどをカバーし合うのは構わないけど、ただ突っ走っていく人は美しくないよね」
「いつもポジションが足りるとは限らないからね。どのポジションが足りなくても補える者こそ美しいと思うんだ」
 全てを極めるのは茨の道ではあるが、クリストファーは器用貧乏にならない者を目指すようだ。