天御柱学院へ

蒼空学園

校長室

イルミンスール魔法学校へ

【祓魔師のカリキュラム】一人前のエクソシストを目指す授業 1

リアクション公開中!

【祓魔師のカリキュラム】一人前のエクソシストを目指す授業 1

リアクション


第9章 2時間目・質問&回答@説明タイム

 真面目に先生の話を聞き、静かに学ぶ者がいれば、元気よく質問をたくさんする者もいるし、もちろん中には眠ったり、だらけている不真面目系な生徒も混ざっている。
「これがエクソシスト専用の本かー!」
 ヴァイス・アイトラー(う゛ぁいす・あいとらー)は術を会得しようと暑苦しいほど燃え盛り、スペルブックのページを捲る。
「一応呼んでみたけど、これって実際、どうやって使うんだろうな?」
「説明を聞いたり、実技を見ないと分からないのでは?」
 頭の上に疑問符を浮かべまくるヴァイスに言う。
「やっぱそーだよな。オレってさ、ガキの頃はよく悪魔の仕業とか言われて石投げられたり、誰かが病気になったり事故に遭ったりしても、俺のせいとか言われてたんだよなー」
「なんというか…。悪質な当り屋みたいな言いがかりだな…」
 周りはヤクザのような者だらけだったのかと、セリカ・エストレア(せりか・えすとれあ)がため息をつく。
「マジでソレ系なんだよな。まったくやってらんねー。―……。(あっ、俺の住んでるところって…)」
 もしかして、それらしい存在がいたのでは、と考える。
「どうしたのだ?」
「いや、なんでもない。(まだ確定じゃないけど…、今やれることをやっておかないとな)」
「ふむ…ならよいが」
 ただ祓って滅すればよいものではない時点で、セリカには不向きな授業だが、戦っていたはずの真族を治療したりするヴァイスなら、いずれ術の扱い方を習得出来るかもしれない。
 セリカも能力を得られるかは別として、聞いておいて損はないだろうと、彼と授業を聞いている。



「皆、いろいろ質問したいこと考えてきたのね」
 ルカルカは好奇心に満ちた金色の瞳を輝かせて、わくわくしながら聞き、その傍らダリル・ガイザック(だりる・がいざっく)は記憶術で聞いた説明を覚えつつ、パソコンのキーボードを見ずに打ち込み、授業内容を纏めている。
「ルカもメモくらいとったらどうだ?」
「後でダリルが見せてくれるんでしょ?」
「これは俺用に纏めているんだが…。これを見て分かるかは、保証出来ないぞ」
「いいじゃないの、ケチケチしないで♪」
「少し静かにしてくれないか、気が散るっ」
 スペルの文字がまったく読めない淵は、頭から湯気を出しそうなほど、必死に学ぼうとする。
 本来、弓や槍が専門の彼は、本に記されている文字を読もうと格闘している。
「それね、ルカも分からない♪」
「分からない…じゃなくって、覚える努力をしろ。…で、日本語つきだぞ」
「ありゃっ!?こんなところにっ」
「むっ、後ろの方のページにあったのだな」
 ダリルに言われて捲ると、日本語訳を発見する。
「分からないと言う前に、最後まで見ることだな」
「はーい♪」
「あまり騒ぐとチョークが飛んでくるぞ」
「イヤッ!」
 チョーク攻撃は恐ろしい!と、ひんっと半泣きになる。
「俺も何か質問するか…。スペルの章は今は入門の二つだが、幾つくらい存在するのか?」
「他にもあるけど、まずは2つの章から学ばないとね」
「なぁ、既存魔法と、章による術の差さってあるか?」
「魔性を滅しないようにコントロールしやすかったり、憑かれた対象を傷つけにくくしたりね。実際の威力は章のほうが強いかな」
「救済しやすいのは理解出来たが、威力は元のスキルよりすげーんだな」
 少々のダメージでは、魔性に効果はほとんどないことと等しいのだろう。
 ゆえに祓魔術として、強化する必要があるのだ。
「いやはや、勉強なんてぇのは何年ぶりか…懐かしいですな」
 勉学に励んでいた頃は、何年も前のことだがガイ・アントゥルース(がい・あんとぅるーす)にとっては、教室で学ぶということがどこか懐かしい気分だ。、
「ラルクはなぜ、この授業を受けることにしたんですか?」
「医者になった時、魔性が人に憑いたときにちゃんと早急に施せるようになりてぇしな」
「なるほどですね」
 彼のことをあまり知らない者から見えれば不思議な光景なのだろうが、医者を目指す者としてラルク・アントゥルース(らるく・あんとぅるーす)らしいとえばらしい答えだ。
「日本語訳つきなんですね。これ…全部、覚えなきゃいけないんでしょうか?」
 リオン・ヴォルカン(りおん・う゛ぉるかん)は本の文字を、指でなぞり首を傾げる。
「ちゃんと覚えたら、御褒美に犬耳もふもふさせてあげるから」
 暗記が得意な清泉 北都(いずみ・ほくと)にとっては、内容を覚えることは苦労はないが、リオンは言葉の意味よりも先に、まずは文章を覚えることから始めなければならない。
「それじゃあもっと頑張って読みますね!」
 いっぱいもふらせてもらおうと、読破しようと授業に励む。



「(よりにもよって、どうしてこんな席なわけ?)」
 前から10列目の席に座っているスノー・クライム(すのー・くらいむ)は、黒板が遥か遠くに感じる。
 彼女と佐野 和輝(さの・かずき)の席の間は…。
「(和輝とリオンが両隣に居るから、安心して授業に集中できるよ♪)」
 黒い大きなゴールのようなもので顔を覆い隠す人見知りのアニス・パラス(あにす・ぱらす)と、非社交的な禁書 『ダンタリオンの書』(きしょ・だんたりおんのしょ)がいる。
「これって、他人と関わるのも必須なんじゃなかった?」
「それを言うなスノー…。俺だって悩んでいるんだ」
 個人や自分のパートナーだけで解決しようとする者では不向きだ。
 このままでは実戦に出せるはずもないし、相手は生易しい存在ではないのだから、手酷い失敗をくらい、へこませてしまうかもしれない。
「リオン、話の流れからして、単独指名は望めないと思うが。―…その辺りを理解しているか?」
「そんなもの人による」
「(いつでも見知った相手と組めるわけじゃなし、不愉快な思いをさせなきゃいいが…)」
 術を上手くコントロールする前に、相手にツンとした態度を取らないか不安だ。
「(エクソシストの技は、陰陽術とどう違うのかな?【悪霊退散】も同じ退魔の術だよね?)」
 先生に聞いてもらいたいことを精神感応で和輝に伝える。
「(俺もその辺りが気になっていたんだ。聞いてみるか)」
 和輝は片手を挙げて校長に質問してみる。
「エクソシストの技は、陰陽術とどう違うんだ?悪霊退散では効き目がないのか?」
「これから学んでもらうエクソシストは、憑かれた対象を傷つけにくくする技がありますし〜。陰陽師の力では倒せない存在もいっぱいいますぅ〜」
「皆の実技を参考にするしかないわよ」
 校長の言葉につけたすように言い、スノーが横から口を挟む。
「人数もわりといるし、参考として見るか…」
 まずは彼女の言う通り、実際に扱う様子を見学させてもらうしかないようだ。