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【祓魔師のカリキュラム】一人前のエクソシストを目指す授業 1

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【祓魔師のカリキュラム】一人前のエクソシストを目指す授業 1

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第4章 1時間目・実技タイム

「誰からにしましょうかねぇ〜?」
 “これだけたくさんいると、迷いますぅ〜♪”と満足そうに微笑む。
「(私に当たりませんように……!)」
 筆記の成績はよいのだが、実技はいつもボロボロのレイカ・スオウ(れいか・すおう)は、指名されないように祈る。
「これから共に学ぶ者なのですからぁ、何人か指名しますねぇ♪名前を呼ばれた方は、前のほうへ来てください!!」
「(あぁ、どうか私には当たりませんようにっ!!)」
「それではぁ〜…。涼介・フォレストさんと騎沙良 詩穂さん、エクス・シュペルティアさん、グラキエス・エンドロアさん。前に来て実技を行ってください〜!」
「私たちが1番手か」
「あまり緊張しすぎず、リラックスしてくださぁい♪」
「扱う者の心が、宝石の効力にも影響してしまうんだったな」
 小さく呼吸し、気分を落ち着かせた涼介は習った手順通りに、ホーリーソウルをエレメンタルケイジに入れる。
「ホーリーソウルの光輝属性の魔法攻撃ダメージは〜。アタッカーさんが近くにいなかったりする時とかに〜、使うといいですねぇ」
「実際の効果を試すんですか?」
「魔性に憑かれた人はお呼びできませんがぁ〜。不運にも憑かれてしまったことがある動物さんたちを保護しましたぁ〜」
「詩穂たちが癒してあげるんですね」
「はぁ〜い。頑張ってくださいねぇ」
「とっても怖かったんでしょうね。大丈夫ですよ、詩穂が癒してあげますからね」
 ぶるぶると怯える野ウサギの上にエレメンタルケイジをかざす。
「傷つき、病む者を…、縛る不の鎖から解き放て!」
 ペンダントの中の宝石が、純白の輝きを放ち始め、暖かな光がうさぎを優しく包み込む。
 しばらくするとうさぎは長い耳をぴくりと動かし、元気に跳ね回る。
「成功ですぅう!」
「フフッ、元気になってよかったです」
「次は私かな?」
 涼介はペンダントを握り、目の前の仔ヤギを救いたいと祈る。
 もう方の片手で、そっとヤギを撫でてやる。
「自らが、歩むことすら叶わない、哀れなヤギに生きる源与えたまえ…」
 静かな口調で祈り、僅かに輝く宝石の効力がヤギを撫でる手に宿る。
 彼の癒しの手により、ぐったりとしていた動物が目を覚ます。
「身体から嫌な気分はなくなったか?歩いてごらん」
 涼介の声にヤギがゆっくりと立ち上げる。
「祈りの言葉は、効果に合わせたものなら反応するということかな?」
「涼介なりにアレンジしてくれてもいいんですぅ〜♪」
「わらわの宝石はアークソウルなのだが…」
「俺のと同じものだな」
 グラキエスが持つ宝石と同じか、エクスと自分の宝石を見比べる。



「ホーリーソウルの癒しの力ですかぁ〜…。祈りに反応して宝石が輝くなんて、神秘的ですぅ〜」
 まだ扱えないが見学だけでもしていこうと、フィーア・レーヴェンツァーン(ふぃーあ・れーう゛ぇんつぁーん)は実技を観察する。
 いずれ新風 燕馬(にいかぜ・えんま)の助けになりたいという思いで、まだ本人には秘密にしている。
「正直言うと、廊下で待ってた方がいい気さえするよ」
「えぇー、一緒に聞きましょう〜」
「だってどれも扱えないし」
「ツバサちゃんはウィザードなんですから、そのうち使えるようになりますよぉ〜♪」
「ペンダントも祓う力が得られるかも分からないしなー…」
 現時点で確認出来る攻撃の術を発動できる宝石は、ホーリーソウルのみだ。
 威力があるのは本の方で、宝石の攻撃用の効力が劣るのは仕方がないことだ。
「攻撃じゃなく、補助的に助力する役割が多そうですよねぇ」
「補助かー…」
「もう1つの宝石の実技が始まりますよぉ〜、一緒に見るですぅ〜」
 へこみ気味に言う燕馬にくっつき、アークソウルの使い方を観察させてもらう。
「教室の中にいる生徒さんの傍にいって、反応を確かめてください♪
「ふむ、だいぶいるのだが…」
「近づくと宝石が反応するのか?」
 エクスとグラキエスは教室の中を歩き回り、手始めに身近な者で試す。
「宝石が発光している…」
 グラキエスがエルデネストの前に立つと、アークソウルがアンバー色の光を放つ。
「おや、実験ですか」
「ちゃんと反応するのかどうかな。ロアは…反応しないな」
「へっ!?一応、地球人だからな」
 いつのまにやら検体対象となった彼が目を丸くする。
「昴には反応しないのだな…。む、天地たちはまだ戻らぬか?」
「―……どにいるのやら、さっぱり分かりませんね…」
 恋人と授業を受けられると思ったのだが、その時間はあまりにも短かった。
 その唯斗は天地から逃げ切ろうと、校舎の中を駆け回っている。
「エリザベート校長。明かりを消した状態で、地球人以外の方に木刀を持たせて私に振ってください」
「ぇっ、危ないですよぉ〜、詩穂さん」
「できれば…本気はナシでお願いします」
「みと、実験に付き合ってやれ」
「承知しました洋様」
 乃木坂 みと(のぎさか・みと)が木刀を手にすると、室内の明かりが消える。
 ダークビジョンで詩穂の姿を確認し、ゆっくりと近づく。
 木刀が詩穂の肩に届く寸前、飛び退いてかわしたものの2撃目は避けられず、脇腹を叩かれてしまう。
「ぁうっ」
「少し力を入れすぎてしまいましたわっ」
「うぅーん…ちょっと痛いですけど、大丈夫です。実戦経験を積まないと厳しいようですね。ご協力ありがとうございました」
「席に戻りますわね」
 木刀を詩穂に返し、相沢 洋(あいざわ・ひろし)の隣の席に戻る。



「遠野 歌菜さんと相沢 洋さん、ベルク・ウェルナートさん。実技を行う準備が出来たらこちらへきてください♪」
「羽純くん、用意出来た?」
「いつでも行けるぞ」
 紐をつけたペンダントを首から下げ、歌菜は羽純と階段を下りる。
「今までエクソシストが対応する敵なんて、そうそう居ないと思っていたんだがな」
 洋は器を扱ったことがなく。魔力武装といえば杖だ。
「私は基本的に、銃で吹っ飛ばすほうがメインだ。みと、経験あるか?」
「申し訳ありません。わらわは杖専門。器を扱ったことはありませぬ。というか、洋様もご存知でしょうが。器を使いこなす技量は私は持っておりません。洋様が銃専門であるように、わらわは杖を使いこなす。おかげでよい武装と思う器も使いこなせず、武器庫の片隅にて、
ホコリをかぶったままではありませんか」
 みとはふるふるとかぶりを振り、彼の愚痴に答える。
「おれっちの専門は最先端科学のはず。なんで魔法、それも悪魔払いなんだ?」
「魔性祓いな」
 悪魔も含まれるが限定されてはいないと、相沢 洋孝(あいざわ・ひろたか)の言葉を訂正するように洋が言う。
「私のパートナーたちも参加していいか?」
「授業開始から30分くらい経っていますので、お早めにきてください〜」
「実技か…わかった。術式展開、魔力集結!我に敵を討ち、仲間を助ける力を与えよ!我は願う!魔力開放、放て!」
 魔力をペンダントに集中させ、砲撃のサイティングの用に狙いを定め、魔力を放出しようと試みるが…。
 放出のほの字すら出る気配がなく、まったくの無反応だ。
「くそ、技量が足りんのか。私には器を使いこなす資格がないのか?」
 洋は悔しげに呟いて俯く。
「このペンダントは魔力系武装としては、そこそこいいものなのですが…。使いこなせない武装は飾りです。魔力暴走による事故に備えてください」
 魔力を杖に集中する時の感覚を頼りに、ペンダントに魔力を集中させ、魔力狙撃の容量でテストをしてみる。
「―…不発ですわ。魔力が足りないのでしょうか?」
「魔力?なにそれ。だけど…集中、集中…集中だーーーー!!」
 洋孝は魔力をうまく集中しようと、ペンダントを睨みつける。
「なんも起きねー…」
 ―…しかし、何分経っても変化がない。
「うがーー!!うまくいかねえ〜〜〜!魔法って何!?機晶爆弾設計訓練の方が…まだマシだー」
 専門外のことは分からない!と、床に転がって手足をばたつかせる。
「こらっ、暴れるな」
「だってなんもわかんねー」
「他の者の邪魔になるだろうっ」
「ぅぎゃっ!!」
 洋から拳骨をくらい…。
「失敗したからといって騒がないでください!」
「静まってください…」
 みととエリス・フレイムハート(えりす・ふれいむはーと)の拳が洋孝を大人しくさせる。
「(痛い…じーちゃんにばーちゃんにエリス、鉄拳は痛いっす…)」
 トリプルアイスのようなたんこぶが、洋孝の頭部に出来あがる。
「術式準備、魔力集中開始。退魔戦闘能力設定・・・完了、以上」
 エリスは器を睨みつけ、目の前にいると仮想する敵に目掛けて魔力を解き放とうとする。
「…将来の目標は神罰の代行者として鉄槌を下すことですし、対魔能力強化はいいのですが、やはり苦手です。扱ったことのない武装は怖すぎます。以上」
 無音な不発の失敗の恐ろしさを体感したエリスがため息をつく。
「(なんかおもしれーやつらがいるな。おっと、集中しなきゃな)」
 ベルクは失敗パレードの光景を記憶から消し、実技を成功させた者たちの手順を思い出す。
「さっきのやつらより、光が強くないか?」
「生徒さんたちにペンダントを向けているからですよぉ〜。対象となる者が複数いると、輝きも強くなりますぅ〜」
「へぇー…」
 探知する数が多ければ輝きが増すようで、ペンダントにつけている紐を摘み、魔道具を向ける方向を変えながら、反応の変化を確認する。
「涼介さんが宝石の力を手に込めて、動物を撫でて癒してあげてたわよね」
 歌菜もマネてみようと小さく蹲っている小鳥に触れて試す。
「羽純くん、一緒に撫で撫でしてあげよう!」
「動物は構わないが。それが人だったりするとな…」
「んー…その時は詩穂ちゃんの方法を参考にしようね。ペンダントを掲げて宝石の魔力を使うセンスもよかったし♪」
「小鳥が動いたぞ」
「よくなったのね!可愛い♪元気になってよかったね」
 精神ダメージを回復してもらった小鳥が首を傾げて2人を見る。