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【祓魔師のカリキュラム】一人前のエクソシストを目指す授業 1

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【祓魔師のカリキュラム】一人前のエクソシストを目指す授業 1

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第2章 1時間目・質問&回答@説明タイム

「ではではぁ〜、1時間目の授業を始めますぅう!」
 授業開始を告げるベルが鳴り終わり、教室内で雑談していた生徒たちは、速やかに席につく。
「実技を通して魔道具の扱い方を学んでもらうんですが〜。分からないことがいーっぱい、ありますよねぇ?何か質問がある人は手を挙げてくださぁ〜い」
「先生、しつもーん♪」
 魔道具のネーミングについて聞こうと、さっそく騎沙良 詩穂(きさら・しほ)が手を挙げる。
「はぁ〜い、詩穂さん何ですかぁ?」
「『エレメンタルケイジ』に対応した宝石には『Soul』という名前がついていますよね?その名前の意味は“霊魂、魂、精神、心、人、生
命、化身、そして勇気…。”どの意味で名づけられたのでしょうか」
「“生命”という意味ですよぉ〜。持ち主の精神がエレメンタルケイジを通して、生命の宝石に反応し、宝石本来の能力を扱うことが出来
るんですぅ〜。全ての生命を慈しみ、理解する…ということですねぇ」
「仲間に助力する役割が多いということですね?」
「えぇ、そうなりますねぇ〜。黒板に書いておきますからぁ。皆さん、ちゃんとメモをとってくださいねぇ」
「はい、校長!」
 白雪 椿(しらゆき・つばき)はノートを開き、名称と内容をカラーペンで色分けしつつ書く。
「このペンダントって、魔法少女っぽくて可愛い♪」
「ペンダントばかり見てないで、ちゃんとノートもとれよ」
 紐を摘み、ペンダントを眺めている遠野 歌菜(とおの・かな)を、月崎 羽純(つきざき・はすみ)がシャーペンでつっつく。
「ちゃんと書いてるって♪」
「へーどれどれ…。―…イラストばかりだな」
「そのほうが分かりやすいと思ってね。ノートというものは、自分が理解しやすいように工夫するものよ」
「書き漏らしたら1ヶ月、飯当番な」
「ぇー…酷いっ」
 ムゥッと頬を膨らませ、小さな声音で言う。
「冗談だ。後でノートに書いた内容を、見合わせような」
「うん♪羽純くん、ファイルで纏めるの?」
「ページの位置を変えたりする時とかに楽だしな。ページがいっぱいあっても、インデックスつけておけば探しやすいし」
「資料にもなるし、私もそうしようっと。―…あっ!私も今のうちに質問しておこうっ。エリザベートさん!」
 宝石について聞こうと、パッと片手を挙げる。
「歌菜さんど〜ぞ♪」
「同種の宝石を複数ケイジに入れても、1つ分の効果しか得られない…ってことですが。違う種類の宝石を複数入れることで、効果が変わることはあるんでしょうか?効果が変わらない場合、優先して効果を発揮する法則があったり?後、宝石の大きさとかで効果が変わるのかも知りたいです!」
「ケイジの中に別種の宝石を複数入れることで、個々の効果を発揮するだけなんですぅ〜。それ以上の効果は発揮しません〜。所持者に適した効果が、優先して発揮されますが〜…。怒りや恐れなどの感情で、精神が不安定だったりすると、反応が遅れてしまうこともありますぅ。それと宝石の大きさで、効果が変わることはありませんよぉ〜」
「本来の効力以外の反応はしないってことですか…」
 考えがハズレてしまい、しょぼーんと沈む。
「経験を積んでいくわけですしぃ〜。個人では出来ないことも、他者となら可能かもしれません〜。あくまでも仮の話ですけどねぇ」
「なるほどー…他の人と協力し合うのがエクソシストですもんね!」
 宝石たちがどんな反応を見せるんだろう…?と、興味津々にペンダントを指でつっついた。
 さっそくメモしておこうとノートに書き込む。
 歌菜の質問が終わると、他の者も質問しようと手を挙げる。
「えーっと…。次は、誰にしましょうかぁー…?ではぁ〜…羽純さん、質問してくださぁい」
「―…また指されなかったか」
 天城 一輝(あまぎ・いっき)は悔しげに手を下げる。
「よくあることよ、ドンマイ!」
 次こそは…!と拳を固く握り締める彼の肩を、コレット・パームラズ(これっと・ぱーむらず)がぽんっと叩く。
「宝石をたくさん詰めれば、その分効果は出るのだろうか?勿論、術者の能力にもよるが。複数の術者で大きな器に宝石を多く入れて術を
用いる、なんてことが可能だったりするのか?」
「器のサイズを大きくしたり、たくさん宝石を入れて術を用いても、通常サイズで同種の宝石を使用した時の差はありません〜。それを持って空飛ぶ箒などで対象を追っても、重さの影響などで対象を逃がす恐れもありますねぇ。複数の術者が使用するにしても、使用者に反応する器も1つにつき、1人ですからぁ。実用化の意味としては不可能ですぅ」
 口頭だけでは聞き漏らすだろうと思い、エリザベートは脚立によじ登り、上の黒板を下げてチョークで書く。



「他に質問はありませんかぁー?なければ、使い方の説明に移りたいのですけどぉ〜」
 先程まで質問が終わった途端、すぐに挙がっていた手や、校長を呼ぶ声も途絶え、聞くなら今しかない!と一輝が手を挙げる。
「(俺はまだ、聞いていない!)」
「一輝さん、どーぞ〜」
「ショットガンなどの銃器を利用して、要となる宝石を撃ち付けることは可能か?」
「ん〜…。この宝石を、銃弾のように扱える銃はありません〜。…撃ち付けてどうするんですかぁ?」
「魔法陣の修繕などに利用しようかと思ってさ」
「仮に撃てるように銃を改造しても、修繕用などには使えませんよぉ〜」
「はーい、次は私ね!」
 憔悴しきり項垂れるパートナーの傍ら、コレットが質問する。
「何でしょうか〜?」
「悪霊が近付けないくらい強力なペンダントを作るのは可能?」
「いろいろと学ぶことが先だから、今の段階じゃ難しいですぅ〜。悪霊が近付けないということは〜。憑かれてしまった者を探しにくくなるってことですからねぇ〜。その辺も考えなければいけせんよぉ」
 憑かれた者たちが遠ざかり、依頼も達成出来ない確立の方が上がってしまう。
 コレットは口をつぐみ、しょんぼりと眉がハの字になってしまった。
「もう質問したい方はいませんね〜?では〜、扱い方について説明しますぅ!」
 聞いておきたいことはないか確認するとエリザベートは、エレメンタルケイジに紐をつけ、首から下げる。
「宝石を入れるには、蓋の役割をしている銀色の金具を摘んで〜。ぽんっと開けるんですぅ〜」
「ほぅ…簡単に開けられるのか?」
 涼介・フォレスト(りょうすけ・ふぉれすと)も試しに摘み、白い半透明の水晶のような器から金具を外す。
「では〜。金具を閉めなおして、他の人に渡して開けさせてみてください〜」
「私のペンダントでやってみないか?」
「じゃあこちらのも渡しますね」
「ぐっ……、…無理みたいだ」
 詩穂と交換し、力いっぱい回してみるが、蓋代わりの金具を1ミリも動かせない。
「自分しか扱えないということか。ふむ、ノートに書いてこう」
「宝石も所有者専用ってことですね」
「所有者ではなければ、外すことが出来ないということが〜。よ〜ぉくわかりましたねぇ?」
 2人以外の者たちも試している様子を、エリザベートは脚立の上から見る。
「私もいくつか聞いていい?」
 イルミンスールによく遊びに行くことはあったが、今回は遊びではなく、授業を受けにきた。
 理系女子であるセレンフィリティ・シャーレット(せれんふぃりてぃ・しゃーれっと)は、どのような原理で術が発動するのか興味を持ち、恋人と1時間目の授業に参加している。
「あら、質問ですかぁ?いいですよぉ〜」
「宝石って、何度も使えるの?」
「精神力が続く限り、何度でも使用出来ますぅ〜」
「へぇ〜。―…何度でも可能っと…っ。(精神力は無限じゃないから、尽きないように気をつけなきゃね)」
 セレンフィリティは忘れないうちに聞いたことをすぐさまノートに書く。
「(しっかりノートにメモしているわね…)」
 授業が始まる前、“……インフルエンザにでもかかったの、セレン?”と、熱でもあるのかと思わず、彼女の額に手を当ててしまったくらい、驚いたのだ。
 興味で特攻したとはいえ、社会の役に立つものだし、エクソシストを目指すのは悪いことでもないからと、セレアナ・ミアキス(せれあな・みあきす)も参加することにした。
「宝石の魔力は、どのようにして引き出せるの?」
「発動するための術を唱えるんですぅ。効力に合った感じならぁ〜反応がありますけどねぇ。例えば〜…ハードロックのような歌をベースにしてしまうと、反応が鈍いですぅ。紐をつけたペンダントを、術者の首から下げて身につけるか、すぐ近くにあれば使えますぅ。1m以上も離れたところでは扱えません〜」
「1m未満ならオーケーってこと?他人に持たせた状態でも、自分自身や守りたい者を対象にして、発揮出来るってことかしら」
「そうなりますねぇ。術者が守りたくない相手は対象外ですしぃ〜。目隠しされたり、手を縛られたりしても可能ですがぁ〜。重傷でも精神力が残っていれば使えるんですけどぉ、気絶したりしてしまうとぉ〜、使えません〜」
「戦闘不能になっても、それまでの効力は残っているの?」
「若干残っていますけどぉ、数秒で切れてしまいますぅ〜」
「―…なるほどね、私からの質問はこれだけよ。ありがとう」
 セレンフィリティはノートを広げ、口頭で聞いた説明を思い出しながら書き込んだ。



 生徒たちが質問したり、黒板の文字をノートに纏めている中…。
 紫月 唯斗(しづき・ゆいと)だけ、ウトウトと瞼が重くなっていく。
「眠らないように、たっぷり眠ったはずだが…。―……ぅっ、視界がぼやけていく。ここは夢の中なのか?」
「残念ながら現実だ、唯斗」
 パートナーにツッコミを入れつつ、彼の脇をエクス・シュペルティア(えくす・しゅぺるてぃあ)が肘で突っつく。
「(唯斗さんと、一緒に勉強…何だか、嬉しいような、恥ずかしいような…)」
 ペンを掴んだまま、再び睡眠モードに入りつつある唯斗を、九十九 昴(つくも・すばる)がちらりと見る。
 不甲斐ない彼の状態に、九十九 天地(つくも・あまつち)は柳眉を上げて軽く睨む。
「そうか…ここは夢の中か」
「(皆、まじめに授業を受けているというのに…。これでは昴との交際を認めるわけにはいきませぬっ)」
 昴の恋人だと認めていない天地にとっては、今すぐにでもシャキッ!とさせてやりたい気分だ。
「……唯斗さん、起きて、起きてください……」
 またもや眠りかける彼を、昴が揺り起こす。
「あぁ…授業は終わったか?」
「いえ……まだです。ペンを持って…、ノートを開いてください……」
 せめて聞いているフリでもさせておこうと、落としそうになっているペンを握らせてやる。
「まだ夢の中か…」
 寝言を呟きながら昴に寄りかかる。
「もう許せぬ…天地やってしまえ!」
 不真面目な態度にキレた天地はエクスに許可をもらい、
「唯斗殿……起きなさい!」
 目覚まし時計の変わりに太陽の火線(レジェンドレイ)と共に、ライトニングランスを放つ。
「天地、もっとまともな起こし方は出来ないのかっ!?」
「ほう…どのような口でほざいているのやら…。唯斗殿、覚悟ーーーっ!」
「落ち着け、授業中だぞ…」
「問答無用っ!」
「ケンカなら教室の外でしてほしいですぅう!!」
「いたたっ、騒いでるのは俺じゃないぞっ」
 エリザベートが放ったチョークが頭に直撃する。
 怒りの納まらない天地から逃れようと教室の外へ賭け出る。
「……どうして……こうなって、しまったのでしょうか……」
 深いため息をつき、彼の無事を祈る。



「さっぱり分からないよー…」
 睡眠モードに入りそうな、唯斗の後ろの席にいる芦原 郁乃(あはら・いくの)は、思考が熱暴走しかかっている。
 数日前…。
「エクソシストってたしか…。『666』とか『ダミアン』とかってあれだよね?」
「それはエクソシストではありませんよ。それに、そういうことじゃないでしょ」
 ごちゃ混ぜに覚えてしまい、蒼天の書 マビノギオン(そうてんのしょ・まびのぎおん)に、息混じりに言われる。
「ちょっとこちらにきなさい、主。今日という今日はみっちりお説教です!」
「いやぁ〜〜っ!そのお説教は死ぬほど長くなる可能性があるからいやぁ〜っ!」
 …と、何時間も説教をくらった。
「神様お願いします、どうか授業中に指されませんように…そして、実技でもごまかせますように…」
「恐れの感情も影響するんですね。恐怖心などにつけ込み、魔性に憑かれる危険もありそうです…」
 真面目に学んでいるマビノギオンの傍らでは…。
 早くも“恐れ”により、郁乃は精神不が安定になってしまっている。
「この様子ではあとでじっくり復習しないといけないですね」
「あぅあぅ…神様…わたし泣いてもいいですか…」
「そのような態度では…。精神を鍛える修練も、追加しなければいけませんね、主」
 どうやら主のスーツのように甘い精神も、みっちり鍛える必要有りのようだ。
「エクソシストも極めたら、かなり箔がつくよね」
 2人の斜め前の席にいる斉民も、マビノギオンと同じく、知識を吸収しようと学んでいる。
「極める道のりが険しそう…スキルとかだけに、頼るようなやり方じゃいけないってことだし」
「うん。簡単に、身につくものじゃないみたいだね」
「お隣いいですか?」
「いいよ♪」
 東 朱鷺(あずま・とき)に軽く頷くと、弥十郎は荷物を退ける。
「個人や、自分のパートナーとかだけで、任務を行うのは危険なので…。少しでも、他の人と話しておいたほうがいいかと思いましてね」
「宝石を使う仲間なら、一緒に行動することもあるかもね」
「えぇ…。話の流れからして、焦りも影響しそうですが?」
「予定通りに進まずに、まさかのこともあるかも。ちょっと焦ることもありそうだね」
 魔性と組んで敵対する者が現れるかもしれない。
 不足の事態に備えても、冷静に100パーセント対処出来るとは限らないのだ。
「大切な人を傷つけられて、すぐに怒るのも魔性の思う壺、という感じですか」
「あー…確かにね。プッツンしやすい人はとくに厳しいかも…」
「と…いうことは、主が実戦に参加する前に…。やはりスーツ精神をなんとかしなければいけない…ってことですね」
 会話を聞いてしまったマビノギオンは、怒りの感情を必死に抑え込む。
「うわぁん、面目ないっ」
 彼女の隣で、主は半泣き顔をし、両手で頭を抱える。
「んー、宝石本来の能力を理解すること以外にも、感情コントロールも重要視するということはー…。魔性に憑かれる隙を与えない、ということですよね?」
「大切な人…。もし、加夜が…って、状況になったらってことかしら?」
 任務の途中でパートナーが傷を負ってしまったら…ということを、蓮花が想像してしまう。
「実戦となると、今までのようにはいきませんよ。―…ラスコット先生!感情を乱そうと、魔性が大切な人を狙うことはありますか?」
「相手に分かりやすい行動をとると、わざと狙う可能性はあるかもね」
「いつもより、厳しい戦いになりそうです…。…蓮花、分かりましたか?」
「ぇ…うん。(たぶんね)」
 加夜を守りたい気持ちは変わらないが、相手にバレないように気をつけなきゃいけないのね…と、記憶の引き出しにしまい込む。
「先生は彼女いるかしら」
「それは…授業に関係ありませんよ」
 校長と講師の2人のうち、どちらのことを言っているのか分からないが、軽く注意する。