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魔剣スレイブオブフォーリンラブ

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魔剣スレイブオブフォーリンラブ

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 ――空京市内、辺りをビルに囲まれた細い路地を{SNM9998821#フェンリル・ランドール}は息を切らしながら駆け抜けていた。
 彼の背中には、鞘に収められた魔剣スレイブオブフォーリンラブが、まるで何かの力が働いているかのようにピッタリと張り付いてる。

「……ハア、ここまで来れば撒いたか」

 フェンリルは路地裏に着き、辺りを見回して人影が見えないのを確認してからようやく一息ついた。
 そして、おもむろに懐から携帯電話を取り出し、どこかへ電話をかけ始める。

「ああ、俺だ。そっちの方は……やはりか」

 フェンリルは電話口で深いため息をつき、魔剣を手に取って忌々しげに眺める。

「信じられないが、やはりこの魔剣スレイブオブフォーリンラブの影響なのか……」

 魔剣の刀身には鮮やかな彫り物がしてあり、怪しげな雰囲気を纏っている。
 しばし、魔剣を見つめていたフェンリルだったが、刀身にキラリと映った光景にハッとなった。

「ようやく見つけたよ、ランディ! はやくさっきの返事聞かせてよ」
「フェンリル様、先に告白したのはわたくしの方ですのよ!」

 フェンリルのパートナーである{SNL9998788#ウェルチ・ダムデュラック}と、魔剣を遺跡から発掘した際に同行した{SNM9998823#泉美緒}が、
 二人揃って頬を上気させ、目を爛々と光らせながら今にもフェンリルに飛び掛かってきそうな勢いで近づいてきていたのだ。

「2人とも、いい加減目を覚ましてくれないか……と言っても耳に入っていないか」
「ボクとランディは契約を交わしたパートナーなんだぞ! キミみたいなどこの馬の骨とも知れない、胸にばっかり栄養のいってる女が間に入ってくるなよ!」
「む、胸は関係ないじゃありませんか! 大体、わたくしはウェルチ様のような乱暴な口のきき方をする者が、フェンリル様のパートナーに相応しいとは到底思えません」
「言ったな! この乳デカ女」
「な、なんて下品な……ウェルチ様には気品というものが感じられませんわ!」

 2人は、どちらがフェンリルに相応しいかを巡って口論を始めた。

「……今のうちに逃げた方がよさそうだな」

 フェンリルは口論を続けるウェルチと泉を置いて、またどこかに電話を掛けながら走り出した。

「あ、ランディ! またボクから逃げるつもりかい」
「フェンリル様、置いていかないで……!」

 しかし、2人が気づいた頃には時すでに遅く、フェンリルは空京のどこかへと姿を消していた。
 その一連の出来事を、フェンリルと共に遺跡探索に同行した九条 ジェライザ・ローズ(くじょう・じぇらいざろーず)は、物陰からこっそり眺めて心配そうな表情を浮かべていた。