天御柱学院へ

蒼空学園

校長室

イルミンスール魔法学校へ

魔剣スレイブオブフォーリンラブ

リアクション公開中!

魔剣スレイブオブフォーリンラブ

リアクション

 ようやく公園から脱出する事に成功したフェンリルとロレンツォですが、連絡手段であった携帯電話を失ったままだ。

「こんな事だったら、あの2人の電話番号をきちんと覚えておくべきでしたね……」
「……ああ、そうだな。しかし、せっかく公園を抜け出せたんだ。少しずつだが進歩していると考えていこう」

 そして、彼らが歩いていると……

「おお、もしかしておまえがフェンリルっていうやつか?」

 背後から声をかけられ、フェンリルが振り返るとそこには皇祁 光輝(すめらぎ・ろき)が立っていた。

(こんな近距離にまで近づかれていたのに、気配に気づかなかった……だと?!)

 フェンリルは思わず臨戦態勢に入る。

「うぉお! すげえ、おまえやっぱり話に聞いていた通り相当強そうだな!」

 しかし、光輝の子供のようなはしゃぎっぷりに、フェンリルは毒気を抜かれてしまいます。

「なんだ、俺たちの事を知っているのか?」
「はは、実はおまえ達と同じそのでっけえ剣を持っている二人組に伝言を頼まれててさあ」
「なに? それは本当かっ! ありがとう、さっそくその伝言の内容を教えてくれないか」
「フェンリルさんよかったですね。これでようやくあの2人と合流できますよ」

 思わぬ幸運に喜び合うフェンリルたちであったが……

「あーだけど、伝言を教える前に俺の個人的なお願いを聞いてもらってもいい?」
「うん、なんだ? 俺に出来る範囲であれば、大丈夫だが」
「実はさあ……おまえを見てたらすげえ強そうで、さっきから戦ってみたくなっちゃったんだよね!」

 光輝は無邪気な笑みのまま、こともなげにそう言い、懐の鞘から刀を抜いた。

「なるほど……そう上手くとんとん拍子にはいかない、か」

 フェンリルも背中に差していた魔剣を掴み、戦闘開始のゴングがお互いに打ち鳴らされる。

「ここは、私は引いた方がよさそうですね」

 ロレンツォはそう言いながら、2人の戦闘の邪魔にならないように、周りの市民たちを誘導して避難させる。

「いくぜっ!」
「迎え打とう!」

 初撃を制したのは、魔剣より細く身軽な刀を武器とする光輝の方であった。

 素早く振り下ろされた刀が、正確無比にフェンリルの胴体を狙う。

 が、速さでこそ劣るものの、力で勝るフェンリルは光輝の攻撃を受け止め、その瞬間に力を込めて刀を迎え打ちにし、光輝をよろめかせる。
 そして、今度はガードが甘くなった光輝の胴体をフェンリルが狙う。

 が、しかし、

「うおっ! 危ねえ」

 光輝の方はなんと、その身軽な体をひょいと跳躍させ、フェンリルの攻撃を避けきってしまう。

「……なかなかやるな!」
「おまえの方こそ、女なのに強くてすげえーな!」
「……お、女?! それは一体誰のことを言っているんだ?」

 光輝の口から放たれた衝撃の一言に、フェンリルの方が激しく動揺している隙に、光輝が再び攻撃を加えます。
 ギリギリのところで反応して攻撃を避けたフェンリルだったが、避けきれずに彼の豊かな銀髪が少しだけ切られてしまう。

「……ッ! 戦闘中にここまで俺の注意を逸らすとは、やるな!」
「あっ……わりい。女の髪の毛切っちまうなんて……」

 しかし、光輝の方は切られてしまったフェンリルの髪の毛を見て、心底申し訳なさそうに言った。

(こいつ、これも計算してやっているのか……?)

 フェンリルが疑心暗鬼になっていると、刀を収めてしまう。

「おまえ、やっぱりすげえ強いなあ! ありがとう、超楽しかったぜ」

 そう言って、光輝は戦闘を終えるとあっさり伝言について話してくれた。

「ああ、おまえと同じ魔剣を持った2人は、シャンバラ宮殿で待ってるって言ってたぜ」
「おお、そうか。情報、ありがとう」
「へへっ、お安い御用だ。ついでに、フェンリル。おまえの電話番号って教えてもらってもいいかな……なんて?」