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夏合宿 どんぶらこ

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夏合宿 どんぶらこ

リアクション

 
    ★    ★    ★
 
 神代明日香さんと神代夕菜さんの二人は、ペットボトルを六本ずつロープで縛ると、それを縦にならべてさらに縛って筏の形にしていきます。
「まだまだダメですぅ、このへんが緩いですぅ」
 もの凄く慎重に、神代明日香さんが筏のできをチェックしていきます。そのため、なかなか完成しません。
 予定では、乗るとき痛いので、この上に段ボールをしいて床にすることになっているのですが、なかなかそこまで辿り着きません。いちおう、森の中で拾ってきた棒は、舵取り棒の代わりです。
 本来ならシンプルな構造のこの筏は、早くに完成するはずでしたが、慎重すぎる神代明日香さんのせいでまだ完成しないのでした。
「そこまでしなくても……」
 ちょっと大げさだと神代夕菜さんが言いました。
「人間は、水に浮かぶようにはできていないんですぅ。何かあったらどうするんですかぁ」
 二の腕と胸回りにペットボトルをガムテープで巻きつけて浮き輪代わりにした神代明日香さんが言い返しました。泳げないので必死です。
「確か、人間は比重的には浮くはずでは……」
 見解の相違です。いえ、胸の脂肪という天然の浮き輪の違いでしょうか。
 それでも、なんとか、やっと神代明日香さんのゴーサインが出ました。急いで、川に筏を運んで浮かべます。
「操舵は任せたですぅ」
 筏にぺったりと身を伏せて重心を低くしながら、神代明日香さんが真剣な声で言いました。
「は、はい」
 おかしな迫力に気押されながらも、神代夕菜さんが岸を棒で突いて出発していきました。
 
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「さあ、今こそボクの真の力を見せるときだよね。いくよー。ガリガリガリガリガリ……」
 こちらは霧島春美さんのペアですが、運んできた大木をディオネア・マスキプラさんが凄い勢いで囓って削っていきます。さすがは齧歯類の獣人さんです。ただ、そのわりには、頭の角が気になりますが……。
「ディオ、頑張ってね」
 なぜか焦るでもなく、のんびりと霧島春美さんがディオネア・マスキプラさんを応援しました。さすがに、大木一本に二人が乗れるだけの穴を削り出すのは大変な作業です。まだまだ時間はかかりそうでした。その間に、霧島春美さんは人の心、草の心で聞いた情報から、何やら地図を作っているようでした。
 
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「よーし、ぐるぐるぐーると」
 源鉄心くんが、楽しそうにペットボトルの筏をガムテープで巻いて完成させました。筏の構造は、三本を横にならべた三段のペットボトルで一つのブロックを作っています。それを九つ組み合わせて筏の本体としています。三人乗るには小さすぎると思うのですが、はたしてどうなるのでしょう。
 ペットボトルの隙間には、濡らした段ボールを千切って詰めて、氷術で凍らせて補強してあります。また、重心を真ん中に取るために、中央のペットボトルの下部には水が入れてありました。
 拾ってきた丸太は、筏の前後に四本ずつ繋げて毛布を裂いて作った紐で縛りつけてあります。何かにぶつかったときの緩衝材と、バランスを取るための物です。筏の中央にはマストを立てて、テントから作った帆を張っています。余った木材からは、長めの櫂を作りました。
「これを忘れてはダメですわ」
 いよいよ筏を川に浮かべたときに、白いスクール水着を着たイコナ・ユア・クックブック(いこな・ゆあくっくぶっく)さんがスイカを取り出して言いました。
「もちろんですよ。後でみんなで食べましょうね」
 白いビキニにパレオを巻いたティー・ティーさんがうなずきます。網に入ったスイカは、しっかりと筏の後ろに結びつけられました。
「やっぱり、少し狭いか?」
 イコナ・ユア・クックブックさんを真ん中に、前に乗る源鉄心くんと後ろで舵を取るティー・ティーさんは半ば丸太の部分にはみ出してしまっています。大丈夫なのでしょうか。
「でも、黎明華さんたち大分先に行っちゃったですね……追いつくかなぁ」
「急ごうぜ」
 源鉄心くんにうながされて、ティー・ティーさんが風術で帆に風を送りました。
レガートさん、遅れないでついてきてくださいね」
 何かあったときのレスキュー要員として、レガートさんがトラクタービーム発射装置を積んで随行しています。
 
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 なぜか、エーリカ・ブラウンシュヴァイクさんが火術で丸太を炙っているそばで、リブロ・グランチェスターさんの指揮の下、テキパキとした分業体制でカヤックが作られていっています。
 丸太で作った細長い筏の上に、段ボールで作った船体が載せられています。
 エーリカ・ブラウンシュヴァイクさんが取りだしていたのは松ヤニです。それで、二人乗りの段ボール舟の接合部分を補強しようというわけです。
 船体部分からは細い木材で左右にペットボトルのアウトリガーがつけられ、安定性をかなり高くしています。このへんは、元海賊のリブロ・グランチェスターさんの真骨頂というところでしょうか。オールは、切れ込みを入れた棒に段ボールを挟んで作られています。段ボール部分の耐久性に難はありそうですが、少しぐらいは完全なオールとして機能するでしょう。
 このカヤックを、リブロ・グランチェスターさんたちは二つ作りました。手間はかかっていますが、手際がいいのでそれほど時間はかかっていません。ペットボトルから作ったライフジャケットも、四着完成して各人が着込んでいます。
「一号艇、出港。続いて、二号艇!」
 一号艇にレノア・レヴィスペンサーさんと船頭としてアルビダ・シルフィングさん、二号艇にリブロ・グランチェスターさんと船頭としてエーリカ・ブラウンシュヴァイクさんという構成で、隊列を組んで川を進んで行きました。
 
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 小鳥遊美羽さんとコハク・ソーロッドくんも、戻ってきてからはテキパキと筏を作っていきました。
 丸太を集めるのに手こずりはしましたが、筏自体はこちらもオーソドックスな作りです。ロープでしっかりと丸太を結び合わせて、やや小型の筏を完成させます。
元気だして行こー
 筏に乗り込むと、小鳥遊美羽さんとコハク・ソーロッドくんは風術で追い風を作って進んで行きました。
 
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 同じく丸太集めに手間取った曖浜瑠樹くんたちですが、こちらもテキパキと筏を作っていきました。
 オーソドックスな丸太筏でしたので、遅れた分を結構取り戻しました。余力を使って疾風突きで丸太を割ってオールにします。もしかしたら、これで木を倒していればもっと早かったかもしれませんし、勢い余って粉々にしていたかもしれません。
 ともあれ、拾った丸太と蔓で筏を完成させると、曖浜瑠樹くんとマティエ・エニュールさんは川に運びました。
 右側に曖浜瑠樹くんが、左側にマティエ・エニュールさんが座って、元気に漕いでいきます。
 
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「遅い!」
 一人残ってペットボトルをならべていた悠久ノカナタさんが、戻ってきた緋桜ケイくんやソア・ウェンボリスさんたちに言いました。悠久ノカナタさんは、イルミンスール魔法学校女子公式水着を改造した薄紫色の水着を着ています。胸元に黒のリボンと、左の腰に花飾りをあしらって、元の水着よりもちょっと大人っぽくしています。紗のパレオは細長く、外してしまえばケープにも、羽衣のようにも見えます。
「体力勝負のアウトドアは、苦手なんだよ」
「ベアぐらい鍛えぬか!」
 言い訳する緋桜ケイくんを、悠久ノカナタさんが一喝しました。とはいえ、雪国ベアくんたちも、遠くまで竹を取りに行った上に、ソア・ウェンボリスさんが立木を燃やしたりしたので結構時間がかかっていました。
「まあいいじゃねえか。さっさと雪国ベア号を作っちまおうぜ」
 すぐさま、雪国ベアくんが作業に入ります。それにしても、これで雪国ベア号という名前の乗り物はいくつ目になるのでしょうか。
 悠久ノカナタさんが二本のペットボトルを底の部分でガムテープでくっつけた物を、雪国ベアくんがロープでしっかりと結んで筏にしていきます。横にしたペットボトルは三段重ねにして、その上に段ボールを敷きました。そんな筏を二つ作ると、竹で前後に繋ぎます。
 拾ってきた立木は、オールとマストになります。石はバランサー代わりに積み込んでいます。
「俺様の旗の下に自由に生きるぜ!」
「そんな旗など用意してないわ!」
 なんだか旗を立てる気満々だった雪国ベアくんに、悠久ノカナタさんが言いました。代わりに、ソア・ウェンボリスさんが持っていた雪国ベアグッズのぬいぐるみを木の棒に突き刺して、舳先のフィギア代わりにします。
「これでよしと」
「ちょっと待て、串刺しにすることはないだろうがあ」
 なんだか自分が串刺しにされたような気がして、雪国ベアくんが待ったをかけました。
「もう、もめてる時間はないぞ。早く出発しないと」
「そうですよ」
 喧々囂々の議論を開始しようとする雪国ベアくんと悠久ノカナタさんを、緋桜ケイくんとソア・ウェンボリスさんがあわててなだめました。
「後は、バランスだな。体重を考えて、ベアとカナタが内側で……いてっ」
 言いかけて、緋桜ケイくんが悠久ノカナタさんに叩かれました。
「どう考えても、ケイが内側であろう。とはいえ、明らかに足りぬから、用意した石を持っておけ」
 悠久ノカナタさんが、こんなこともあろうかと思って用意させた石を、緋桜ケイくんに押しつけました。
「よし、急ぐぜ」
 協力して大きな筏を川に運ぶと、四人は息を合わせて漕ぎ始めました。