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リアクション
■夕方 〜宵始め 〜大乱戦、ベル攻防戦!〜
朝から始まったお祭りもとうとう黄昏時を迎えた。それぞれの想いを伝えるため人々はそれぞれの場所へと移動していた。
「大量でありますよ! しかし、まだまだ時間はあります! 最後の最後まで狩り盗るであります!」
吹雪はまだまだベル狩りを終えるつもりはない。
現在、吹雪は他のロンリー者を押しのけて無双を誇っていた。盗られる方は素直に渡す者、凄まじい速さで逃げる者、戦闘になる者など様々。ここまで使った作戦は一撃離脱という一気にベル奪取をして離脱する作戦である。その手立ては、イングラハムに『分身の術』を使用させ相手の気を逸らしている間に『壁抜けの術』でスリ盗ったり吹雪が『隠形の術』で忍びよって盗ったりイングラハムに設置させた落とし穴やロープなどのブービートラップを使ったりと鮮やかに吹雪は乗り越え大量のベルを手に入れた。称号も豪華賞品ももう間近。
そして、
「行くでありますよ!」
「最後の追い込みと言うことか」
マイト達を発見した吹雪はイングラハムを連れて向かった。
午前中から祭りを散々楽しんだマイトとイングリットは中央広場をゆっくりと歩いていた。
「イングリット、夜が近いが、寒くないか?」
マイトは隣を歩くイングリットを気遣った。夜が近いためか昼よりも少し肌寒い。
「いえ、大丈夫ですわ」
イングリットは笑みを浮かべ、マイトの気遣いに感謝した。
「……どこかで何か食べるかい?」
マイトはイングリットを夕食に誘った。もうそろそろ夕食時なので。
「そうですわね」
イングリットは即受けた。二人共午前中からクレープを食べたり、露店を巡って飲んだり食べたりしてはいたが、それほどがっつりではなかったのでそれなりに空腹を感じてはいるので。
食事に良い店を探そうとした時、
「来た」
マイトは『殺気感知』でベルを狙う吹雪達の接近を察し、イングリットに警告。イングリットは瞬時に構え、迎え撃つ準備を整える。心なしか生き生きしているイングリット。
「マイトさん、わたくし達はやっぱりこうなるみたいですわね」
「そうみたいだ」
イングリットとマイトは結局いつものように戦闘と一緒な自分達に笑いがこぼれた。
「ベルをよこすでありますよ!」
そう言うなり吹雪は『行動予測』でマイトとイングリットが防御する前にスリ盗ろうとするが、同じく『行動予測』を持つマイトが動き、『逮捕術』で押さえ込もうとする。しかし吹雪は『空蝉の術』によって近くにいたイングラハムを自分の身代わりにするなり吹雪はイングリットを狙うがマイトが『庇護者』で防御。
「マイトさん、助かりましたわ」
そう言ってイングリットは改めて構え直す。
「むむっ、やるでありますな!」
吹雪はどうするべきか考える。戦うか退くか。
撃破されたイングラハムは
「……これぞ変わり身の術」
とつぶやき、戦局を眺めつつ大量にある触手の一つで手持ちをこっそり探っていた。拘束用ワイヤーで起き上がって移動は出来ないが、時間を掛ければ手持ちを探る事は出来るようだ。何せ手足が沢山あるので。
その間、
「悪いが渡す事は出来ない」
「そうですわ」
マイトとイングリットはそれぞれやる気だったりする。自称刑事と古流武術のバリツ使いの二人。荒事にはしたくないが、相手を傷付けない程度で場を収める気は満々。
「むむっ」
吹雪は難儀な標的に言葉が出ないままちらりとがそごそするイングラハムを確認。戦うか退くか。
吹雪が選んだのは、
「ならば、力ずくで手に入れるでありますよ」
吹雪は戦闘を選んだ。これで手に入れば良し、手に入らなければイングラハムの時間稼ぎとなり撤退は出来るはずだから。
吹雪は気絶させてベルを奪おうと『魔障覆滅』をイングリットに向けるもイングリットに軽くいなされ、イングリットと連携する形でマイトの『押さえ込み』が吹雪を襲うが、『行動予測』で何とか避ける。
「撤退でありますよ!」
吹雪は奪取をやめ、イングラハムの準備が出来たのを確認後、高らかに声を上げる。
それを合図にイングラハムは機晶爆弾を煙幕代わりに使い、吹雪はイングラハムを背負って『千里走りの術』で脱兎の如く逃げた。マイトとイングリットは追撃はせず、ただ見送っていた。
戦闘後、
「今年も戦闘ばかりの一年になりそうだ。お手柔らかに頼むよ」
「こちらこそですわ」
マイトとイングリットは清々しく言葉を交わし、食事のために近くの店に入った。
吹雪達はまた別の標的を狩り続けていた。
中央広場。
「へぇ、こういうお祭りがあったんですね。知らなかったです」
「博季ちゃん、驚くのは早いよ! まだまだ素敵な場所があるんだから」
博季・アシュリング(ひろき・あしゅりんぐ)は妻のリンネ・アシュリング(りんね・あしゅりんぐ)に誘われ一緒に恋活祭に来ていた。博季とリンネは中で手が繋げるように二人で編んだカップル用手袋と二人で巻ける長いマフラーを巻いた幸せいっぱいの姿だった。
「素敵な場所ですか?」
「ふふふ、そうだよ。それより記念のベル取りに行こうっ!」
首を傾げる博季に子供のような笑みで答えるリンネ。
早速、リンネは金銀ベルを貰いに行った。
「綺麗な音ですね」
「だね〜」
博季は銀、リンネは金のベルを同時に鳴らし、共鳴を楽しんだ。
これが終わればリンネが案内する素敵な場所へ。
「ほらほら、あともう少し」
「どこなんですか?」
「行けば分かるって。ほら、早く早く」
「ちょっ、引っ張らないで下さいよ。あまり急ぐと転びますよ」
リンネは早く博季を素敵な場所に連れて行きたくて足早になり、博季はマフラーが引っ張られて首締め状態に。それでもリンネへの気遣いは忘れなかった。
遊園地。
「……ふぅ」
又兵衛は愛とピカがコーヒーカップに乗るのを見送ってから流水が休んでいるベンチへ。
「又兵衛さんお疲れ様」
流水は隣に座る疲れ気味の又兵衛を労った。
「あぁ、元気だよな」
又兵衛は元気に遊んでいる二人を眺めながら言った。
「又兵衛さん、あの子の事、急に話してごめんなさい。もう少し、段取りを踏むべきだったかもしれないけど、今日はお祭りでちょうどいいと思ったから」
流水は改めていきなり愛の事を打ち明けた事を謝った。
「そんな事気にするなって。愛はいい子だよ。さすが、俺と流水の子だよ」
又兵衛は笑みを浮かべて答えた。すっかり愛とも仲良しこよし。
「……ありがとう、又兵衛さん」
流水は笑顔で礼を言った。自分の愛している人が愛の父親が又兵衛で良かったと心底思った。
コーヒーカップのアトラクション。
「ぴきゅうきゅう〜(回し過ぎなのだ〜)」
ピカは目を回しながら愛に言った。
「あ、ごめんね」
愛はピカの様子に急いで回すのをやめた。
「ピカちゃん、協力して欲しい事があるの」
「ぴきゅ? (何なのだ?)」
「今日、恋活祭って言う恋のためのお祭りでしょ。だからね、パパとママにもちゃんと恋して貰いたいの」
「ぴきゅう、ぴっきゅう(わかったのだ、我も協力するのだ〜)」
愛は声を小さくしてピカに協力を頼むとピカはくるりと回転して快諾を示した。
その作戦はすぐに実行された。最後に観覧車を乗ろうと愛が提案、そしてピカを抱きかかえてパパとママの後ろに並んだ。
そして、又兵衛と流水が観覧車に乗った所で
「いってらっしゃい、パパ、ママ。あたしはピカちゃんと待ってるから」
「ぴきゅきゅ、ぴきゅぴきゅうぴきゅう(又兵衛、流水さんと存分にいちゃいちゃするのだ、我らの事はお構いなくなのだ、気にしないでなのだ)」
ピカを抱きかかえた愛は又兵衛と流水に手を振って見送った。ピカも二人にエールを送った。ドアが閉まるのが早かったため流水と又兵衛は強制的に観覧車を楽しむ事になった。
二人が乗った観覧車を見送る愛とピカは
「成功だね、ピカちゃん」
「ぴきゅう(そうなのだ)」
作戦成功を喜んでいた。
夕日差し込む観覧車内。
「……又兵衛さん」
「今日は愛にも会えて去年よりもずっと良い日になった」
最初は突然な事に慌てるもようやく二人っきりになった流水と又兵衛は静かにキスをした。
中央広場。
「アゾートさん、今日は付き合ってくれてありがとう。あまり上手くエスコート出来なくて……」
弾は付き合ってくれたアゾートにお礼とエスコートが上手くできなかった事を謝ろうとするも謝罪の言葉は途中で切れた。
「楽しかったよ」
アゾートのお礼の言葉が被さった。
「……ありがとう」
弾はもう一度、今日のお礼をアゾートに言った。
ほんの少し仲良くなったかもしれない弾とアゾートだった。
「……まぁ、いいか。みんなと楽しめたし」
中央広場を歩きながらそれなりに満足した様子を見せる和深。
「今日はなかなかの一日であった」
「楽しかったぁ」
たっぷりおねだりを聞いて貰ったセドナと月琥は当然満足。
「……こういうのも悪くないですね」
流は仲間達を眺めながらぽつり。これはこれで良かったようだ。
町の入り口。
「……今年も賑やかでありますな」
「……そうですね」
昨年の恋活祭でめでたくカップルになった大洞 剛太郎(おおほら・ごうたろう)とコーディリア・ブラウン(こーでぃりあ・ぶらうん)が今年も来ていた。
「……コーディリア、自分から離れないように」
「……あ、はい」
人混みで離れないようにと剛太郎はさり気なくコーディリアと腕を組んで歩き出した。
コースはコーディリアの提案で去年と同じルート、商店街、中央広場、展望台の順だ。去年を思い出しながら歩く。散策中の移動行動は全てコーディリアに任せた。雑貨屋などでコーディリアがあれこれ物を見て長く過ごしても剛太郎は楽しそうにその様子を眺め、女の子に付き合う事が全く苦ではない様子だった。途中、カップル割引を使って剛太郎はコーディリアが欲しそうにしている帽子やアクセサリーを奮発して買い、コーディリアもプレゼントを贈り、クレープを仲良く食べた。ちなみに郊外のホテルで一泊する予定なので深夜まで祭りを楽しめるようにしている。まずは夜景が見える時間まで賑やかに過ごす事に。途中、ベルの狩人である吹雪達に会うも素直に剛太郎とコーディリアは素直に渡した。
中央広場。
「……フリューネ、あそこでベルを配っているみたいなんだけど、一緒に貰ってくれる?」
リネン・エルフト(りねん・えるふと)は恋活祭に誘ったフリューネ・ロスヴァイセ(ふりゅーね・ろすう゛ぁいせ)に一生に一度のお願いと言わんばかりの勢いで言葉をかけた。
「ベル? いいわよ」
フリューネは大した事ではないように返事はあっさり。
「あのね。嫌だったら別に断ってくれていいんだけど、その、金と銀のベルが欲しいの」
「いいわよ」
リネンは前置きを置いてから自分の欲しいベルを話すもフリューネはあっさり承諾。
「本当に? カップルに配ってるベルだけど」
リネンはベルの意味を話しながら念を押す。
「リネンは欲しいんでしょう?」
フリューネは質問で答えた。
「……そうだけど」
「だったらいいわよ。そんなに元気のないキミを見るより笑っているキミを見る方がいいから」
迷惑などを考えて申し訳なさそうにうなずくリネンを見てフリューネは笑顔で言った。
「あ、ありがとう!! 絶対に取られないように守り抜くからね!!」
リネンは嬉しさに顔を上気させ、声が喜びで震える。祭りを終えても守り続けていそうな勢いだ。
二人は無事金銀ベルを貰った。
「せっかくだから同時に鳴らしてみましょうよ」
フリューネは銀のベルを見ながら係員から聞いた話を思い出した。
二人は同時にベルを鳴らして共鳴させた。
「……綺麗な音」
ベルの音を楽しみながらもリネンはフリューネの横顔を眺めていた。
ベルの音を聞き終わった後、二人は商店街をぶらつき、鐘が鳴り始める頃には再び中央広場の時計塔に戻る事にした。
中央広場。
蓮華が鋭峰にお供をするのは夕空のこの時間まで。
「もうすぐ夜ですね。団長、今日はとても楽しかったです、ありがとうございました。あと騒がしくて申し訳ありませんでした」
蓮華は心が込めまくったお礼と随所で騒がしかった事に頭を下げた。
「……悪くはなかった」
鋭峰はいつもの無表情のまま素っ気ない感謝を言葉にした。
「はい!!」
鋭峰の感謝の言葉を聞くなり蓮華はぴょこんと頭を上げて満面の笑みを浮かべていた。
鋭峰は蓮華を見送った後、一人ルカルカを待っていた。
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