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リアクション
■夜〜 告白は鐘の調べと共に〜
粉雪が散り、イルミネーションと相まって美しく輝く夜の帳。鐘の音が鳴り響き出す時、日中賑やかに過ごしていた参加者達も思い思いの場所で愛を囁いたり、勇気を振り絞って告白したり感謝の気持ちを伝えていた。
雪によってさらに美しくなった夜景が眼下に広がる展望台のベンチ。
「……出会った頃は成り行きで何も考えずに適当に契約したでありますが、今はコーディリアがいつも側にいてくれる事が何より幸せであります」
剛太郎は夜景を眺めてから自分に寄り添う最愛の人に感謝を言葉で表した。
「いえ、私の方こそ、契約してくれてありがとうございます。こうして幸せな時間を過ごす事が出来て夢のようで……聞いてもいいですか、剛太郎は私のどこが好きですか?」
コーディリアはあまりにも幸せで思わず自分の好きなところが知りたくなった。
「……好きなところですか。コーディリアは自分にとって最高の女性でありますよ。作る料理は美味しい家庭的でとても奥ゆかしい、良い所は数え切れないほどあるであります。何より、一緒にいて癒されるであります」
剛太郎はぎゅっと感謝と愛しさを込めてコーディリアを抱き締めた。
「……剛太郎」
腕の中のコーディリアは幸せだった。もしかしたら世界で一番なのではないかと。
コーディリアはそっと剛太郎から離れ、唇を重ねた。感謝と愛しさと幸せと何もかもを含んで。
唇を離したコーディリアははにかみながらも微笑んで、
「ありがとうございます……これらもずっとずっと一緒にいます」
と言った。
「あぁ、自分も」
すっかり照れているも剛太郎も力強くうなずいた。
静かに鐘の音が響いていた。
ザカコはアーデルハイトと一緒に空飛ぶ箒で空から夜景を楽しんでいた。
「イルミンスールでは良く空からの景色を見ていますけど、この様なお祭りの景色は新鮮ですね。雪も降ってとても綺麗です」
「そうじゃな」
眼下に広がる賑やかな祭の光を楽しむザカコとアーデルハイト。
二人は落ち着いて話をするために展望台に降り立った。
展望台。
「今日は付き合ってもらったおかげでとても楽しい一日でした。ささやかですけど、お礼です」
箒から降りてすぐザカコはアーデルハイトに内緒で買ったプレゼントを取り出した。
「……開けてもよいか」
アーデルハイトはプレゼントを開けた途端、表情が変わった。中に入っていたのは快眠アロマだ。商店街を歩いていた時に興味を惹かれた物だ。アーデルハイトは寝付きが悪いから。
「……これは。見ておったのじゃな」
まさか興味を持っている所を見られていたとは思わなかったのでアーデルハイトは嬉しいびっくり。
「はい」
ザカコは嬉しそうにうなずいた。クレープ屋『天使の羽』に並んでいた時に一時抜け出したのはプレゼントを買うためだったのだ。
「……ザカコ、今日はお前のおかげで良い日になったのじゃ」
アーデルハイトはプレゼントから顔を上げ、礼を言った。
「いえ、アーデルさんが良ければ、また来年もこうして一緒に」
ザカコは満足そうに言った。告白はしたものの返事は保留中で友人としての関係のままだがこうしてアーデルハイトが幸せそうなら今はそれだけで十分だ。
鐘の音が雪降る中に響き渡っていた。
「涼司くん、あともう少しですよ」
「確か、夜景を見せたいんだったな」
山葉 加夜(やまは・かや)は山葉 涼司(やまは・りょうじ)と腕を組みながら雪降る中、美しい夜景が見える展望台に案内していた。美しい光景を最愛の人と見たいと思って。
「そうです。一緒にどうしても見たくて」
加夜は涼司にうなずき、少し歩く速度を上げた。涼司もそれに合わせて歩く速度を上げた。
展望台。
「涼司くん、雪が降って夜景がいつもより綺麗ですよ」
加夜は展望台に到着するなり雪に包まれて一層美しくなった夜景に感動していた。
「……確かに凄いな」
涼司も一緒に夜景を楽しむが、視線はすぐに加夜の横顔に向けられた。
「んな事より寒くないか?」
涼司は妻の加夜の事を気に掛けた。雪が降って温度も下がり、日中より寒くなっている。夜景のせいで体を壊しでもしたらたまらないから。
「大丈夫です。涼司くんの傍に居れば寒くないですよ」
加夜はそう言うなりぴたっと涼司にくっついた。涼司の心配は嬉しいが、どうしても一緒に夜景を見たかった。
「あ、空も綺麗ですよ。とても幻想的ですね」
加夜は空を指さした。澄み切った夜空に瞬く多くの星。地上も空も光に溢れ、雪も降ってと賑やかである。
「そうだな」
涼司は空を見上げるもすぐに視線を加夜に向けた。自然の素晴らしさよりも加夜の喜ぶ顔見る方がずっと心が動く。
「こんなに綺麗なのは初めてですよ。涼司くんと見ているからかもですね。涼司くん?」
つらつらと夜景を見ながら感動を口にする加夜はふと涼司の視線に気付いた。
「加夜の楽しそうな顔が見られて今日は良い日だと思ってな」
涼司は笑いながら答えた。
「ごめんなさい。私ばかり楽しんでしまって」
加夜はふと自分だけがはしゃいで楽しんでいる事に気付き、小さく肩を落とした。
「謝る必要はねぇよ。俺は俺で楽しんでる。こうして加夜の隣に立っていたり……加夜、愛してる」
涼司は加夜が気にしないよう笑い含みで話していたが最後は背を屈め、気持ちを形にと加夜に口付けをした。
「私も愛してます」
涼司の口付けが終わると次は加夜から唇を重ねた。
加夜は涼司に身を任せ、奥の茂みに入っていた。
深く甘い口付けをして、愛を深め、人目が無いために少し大胆に愛しい人と過ごしていた。そんな二人を時計塔の鐘の音が包み込んでいた。
時計塔の中層部の見晴らし台。
「……綺麗だね。夜景を地上の星という例えは間違いじゃないと感じるね」
「そうですね」
北都とクナイが雪降る夜景を眺め互いの顔を見つめ合っていた。以前なら逸らしていただろう北都は見つめる瞳に愛しさを滲ませていた。見つめ続けると共に二人の気持ちも高まっていく。美しい夜景を大切な人と共有し、互いの瞳に互いが映っていると。
「……愛してるよ、クナイ」
「……私もです、北都」
吸い寄せられるように二人は口づけを交わしていた。
鐘の音が静かに響いていた。
展望台。
「…… 雪も降って綺麗ですね。美緒、寒くありませんか?」
小夜子は肩に寄り添って夜景を楽しんでいる美緒を気遣った。
「大丈夫ですわ。でも小夜子が寒いのでしたら」
美緒は小夜子の方に振り返った。
「私は心配ありませんわ。美緒と一緒なら今の季節も平気ですもの」
小夜子は美緒の気遣いにほのかに笑みを浮かべて答えた。
「……小夜子、今日はありがとうございます」
改めて誘ってくれた小夜子に礼を言う美緒。
「どういたしまして」
小夜子は答えるなり、すっと美緒を優しく抱き寄せて深々と味わうように口付けをした。あまりにも可愛い美緒に我慢出来ず、思わず。
小夜子が唇を離すと
「さ、小夜子?」
美緒は恋人の予想外の行動に顔を真っ赤にして声まで震わせた。
「ふふっ、美緒も口付けにだいぶ慣れて来ましたね」
小夜子は人差し指で自分の唇に触れながら悪戯っ子のように言った。指に感じるのは美緒の唇の感触。
「……うう、突然過ぎますわ」
震えたままの声で文句を言うが、小夜子が堪える訳が無い。
「突然だからいいのですわ。でなければ美緒の可愛い顔は見られないでしょう」
とにっこり。照れて困った顔も愛おしくて堪らない。
「……意地悪ですわ」
美緒は頬を膨らませてしまう。
「今日はお祭りだからですわ。せっかくですから今度は美緒からお願いします。いつも私からですから」
小夜子はせっかくだからと美緒からのキスを要求。
「……!!」
この展開を予想していなかった美緒はとっさに周囲をきょろきょろ。
「大丈夫、周りはカップルばかりで誰も気にしませんわ。どうしても気になるようでしたら近くの茂みにでも」
小夜子はにっこり。言葉通り周りのカップル達は皆自分達の世界に入って誰も他人を気に掛けていない。
しばらく、沈黙が続いていた時、
「……鐘の音ですわ」
突然、鳴り響いて来た鐘の音に美緒は先ほどの照れを忘れ、耳を澄ませた。
「そうですわね」
小夜子も同じように耳を澄ませた。
その横顔を見つめる美緒は美しくて愛おしくて堪らなくなり
「小夜子、愛していますわ。これからもよろしくお願いします」
小夜子の唇に口付けをした。小夜子は不意の事だったが、自然に美緒をしっかりと抱き締めていた。
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