校長室
年忘れ恋活祭2022 ~絆~
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展望台。 「昌毅、あれから一年半以上も答えを貰っていません。ボクは昌毅の事が好きです。昌毅はボクの事をどう思っていますか? 嫌いですか?」 マイアは勇気を振り絞って告白をした。今は雪や夜景に目を向ける余裕など無い。 「……嫌いじゃない」 そう答え昌毅は息を吐き、覚悟を決める。二度目となる今回は答えなければならない。一度目は年の差やイコンに乗りたいが為に契約した罪悪感などでもう少し世界を知るべきだ、自分に縛っちゃいけないなどと格好良い事を答えたのだ。本当は突然の告白に焦っていただけなのだが。 そして昌毅は言葉を続ける。 「二年近く、充実した毎日を送れたのはお前のおかげだ。俺はお前がいない生活はもう想像しづらい。ただ、それが恋かは分からない。少し違う気もするし」 昌毅はマイアから目を離さずに答える。 「……そうですか」 マイアはしゅんと肩を落とす。 「だが、お前が俺にとってかけがえのない存在である事は絶対だ。誰も代わりにはなれない」 昌毅はマイアから目を逸らさず、言葉を無駄に飾らず伝える。 「……昌毅、それはどういう事ですか? 待っていれば恋になりますか?」 マイアは首を傾げた。昌毅の言葉は嬉しいが、どう捉えたら良いのか分からない。 「どういう事なんだろうな。待っていればというのは分からねぇな。でも、他の誰かといるよりお前と一緒にいる方がずっと幸せだ」 言った本人も分からず肩をすくめた。すっかり二人でいる事に馴染みきって分からないのか通り越しているのか。 「……ありがとうです」 マイアはとりあえずお礼を言った。今回は真面目に答えてくれて自分が昌毅にとって唯一の存在である事を知ったから。恋云々はまた今度かなと。 この後すぐ、那由他の集めた襲撃者とエクゼの『光術』が昌毅を襲った。マイアのきちんとした返事をした事に対してのお祝いとまた保留的になった事に対しての粛清に。ちなみに一連の告白は全て悪戯っ子那由他の趣味、他人の秘密漁りのためにしっかりと写真として記憶に残されてしまっていた。 御神楽 陽太(みかぐら・ようた)と御神楽 環菜(みかぐら・かんな)の夫婦はたっぷりと祭りを楽しんだ後、夜景の綺麗な展望台に来ていた。 ひとしきり雪に包まれる夜景を楽しんだ後、ベンチで一休み。 「あっという間に時間が過ぎていきましたね。本当に楽しい時間は過ぎるのが早いです」 陽太は前方に広がる夜景に目を向けながらしみじみしていた。朝から楽しんでいた祭りはもう夜であと少しすれば終わってしまう。 「……そうね。本当に今日は楽しかったわ。こういう風にいつもの忙しさから離れて過ごすのも悪く無いわ」 環菜は改めて楽しい時間をくれた夫の陽太に礼を言った。日々鉄道事業で忙しくしているためこのようにゆったりと夫婦の時間を過ごすのは貴重だ。 「……お揃いのベルも手に入れましたし」 陽太は少し笑いながら銀のベルを取り出して環菜に見せた。 「……見せないでよ。恥ずかしいでしょ」 照れ屋で少しツンデレの環菜は嬉しくも照れたようにそっぽを向いた。夫婦という事がもう当たり前の事となっているので改めて恋しているカップル、愛し合っているカップルなどと言われると照れてしまうのだ。 「……環菜」 陽太は可愛い環菜の表情に笑んでいた。 その時、時計塔の鐘が鳴り響いた。 「……時計塔の鐘の音……ここまで響くのね」 環菜は鐘の音で先ほどの照れを忘れた。 「環菜、俺は君と結婚して本当に良かったと想っています。今日、君と素敵な日を過ごす事が出来ましたから……環菜のことを愛しています」 陽太は鐘が鳴り響く中、改めて自分の気持ちを言葉に。 「……それは私の言葉よ。愛してるわ」 環菜は頬を染めながらも先ほどのように視線は逸らさず、真っ直ぐ陽太を見て答えた。 二人はゆっくりと鐘の音に包まれながらキスをした。いつもと同じキスでも今日は祭り、気持ちはいつも以上に燃え上がった。 陽太と環菜は唇を離し、 「……雪も降って体も冷えてきましたし、ホテルに行きましょうか」 「そうね。景色も楽しんだ事だし」 雪で一層寒くなる夜に陽太と環菜は仲睦まじく腕を絡めてこの日のために予約しておいたホテルへ行く事にした。ホテルは陽太の『根回し』と『資産家』で街で最高級の所である。 ホテルに戻るなり、二人は祭りで盛り上がった炎は消えていなかったのかベッドで舌を絡め合う熱くて心地よい夫婦のキスを堪能しそのまま永い夜を過ごした。 展望台。 「……綺麗ですね、セイニィ」 「そうね」 シャーロットとセイニィは静かに展望台から雪に包まれた夜景を眺めている。 「セイニィ、今日はありがとうございます。とても楽しかったです」 シャーロットはふと夜景からセイニィに顔を向けた。 「……それはあたしもよ」 セイニィは笑顔で答えた。 「セイニィ、いつも一緒にいてくれて、ありがとうございます。いつか、本当に、ずっと一緒に歩いていけるパートナーとして、セイニィを幸せにできたら嬉しいのですけど」 シャーロットは真面目な顔で感謝と気持ちを言葉にした。 「……ああ、だからそれは」 セイニィの表情が笑顔から困り顔になる。 「分かっています。だから、それまでは今日貰ったこのベルを大切に持っています」 シャーロットは銀のベルを取り出し、健気に言った。浮かべる表情は笑顔だがどこか寂しそうにも見えた。きっと今日は以前した告白の返事は無いと分かっているような。 「……シャーロット」 セイニィはシャーロットの健気さに胸を打たれた。シャーロットは急かす事もなく自分の返事を待ってくれている。本当は恋人としてこの祭りに参加したかっただろうと分かっていた。だからと言ってすぐに返事など出来はしないのだが。 「そんな泣きそうな顔しないでよ。あぁ、もうっ!」 シャーロットの少々泣きそうな顔を見ているのに我慢出来なくなったセイニィは思わずシャーロットの頬に軽くキスをした。 「あっ」 驚いたシャーロットは思わず『ラブアンドヘイト』でヤドリギを生み出してしまった。 「そ、そんな驚かないでよ。お礼よ。今日の」 セイニィはプイっと顔をシャーロットから逸らしてしまった。ほんの少し自分のした事に照れていた。 セイニィは夜景を楽しんだ後、シャーロットと別れた。 シャーロットと別れた後、セイニィは再び中央広場で人を待っていた。 やって来たのは 「セイニィ」 武神 牙竜(たけがみ・がりゅう)だった。牙竜もまたシャーロットと同じくセイニィに告白し、返事を待っているのだ。 この日、二人から誘いを受けたセイニィは受けるかどうかや会う時間は決めていいと言われて時間をずらす事にしたのだ。どちらかを断るという事はセイニィには出来なかった。 「牙竜、ほら」 セイニィは少し前に購入した温かな飲み物を差し出した。牙竜が寒かろうとセイニィなりの気遣い。 「あぁ、ありがとう」 牙竜は受け取って体を温めた。温まったのは体だけでなく心も。 「セイニィは寒くないか?」 「大丈夫よ。ほら、さっさと行くわよ。時間は待ってくれないんだから」 牙竜の気遣いに対してセイニィはさっさと答える。二人に想われて情緒不安定気味だったりする。 当然、牙竜とセイニィは金銀ベルを貰いに行った。牙竜は金、セイニィは銀だった。その後、展望台に向かった。 展望台。粉雪が舞い、より一層幻想的な光景。 「夜景に粉雪が舞うのはなかなか幻想的な光景だな」 「そうね。もう一年が過ぎたのね」 夜景を眺める牙竜とセイニィ。牙竜は夜景よりもセイニィの方を見ていた。来年こそは恋人として一緒に見たいと思いながら。 時計塔の鐘が鳴り響いた時、 「セイニィ、クリスマスプレゼントを受け取ってくれ」 牙竜はこの日のために用意しておいたプレゼントを取り出した。 「え、プレゼント?」 まさかのサプライズに間抜けな声を出すセイニィ。 「あぁ、今年いろいろと世話になったお礼だ」 そう言って牙竜はほのかに笑む。 「……ありがとう」 セイニィは受け取った。 包みを開けると出てきたのは『ムーンストーンのブレスレット』。 「……これって、ちょっと、何よこれ!?」 宝石を見た途端、セイニィの表情が赤く変わった。 なぜならムーンストーンの宝石言葉は“愛の予感”“純粋な愛”。そして、愛の石と呼ばれ、恋愛成就のお守りとして希望と愛を育み幸福をもたらすと言われているのだ。セイニィはその事に顔色を変えたのだ。 「それが俺の気持ちだ。今もそしてこの先もずっと変わらないもの。俺にとってセイニィは一緒に前に進む絆を持ちたい愛する人だから」 牙竜は贈り物と一緒に気持ちも贈る。 「……ああ、もうっ」 セイニィはブレスレットを手に載せたまま牙竜の言葉に唸ってしまう。本日はセイニィにとって大変な一日だ。 「……もちろん、返事はやるべき事が果たされるまで待つよ。プレゼント気に入らなかったかな」 と牙竜。実は、告白の返事を貰えた時に自分のを選んで貰ってペアにしたいと思ってのプレゼントだったり。 「……素敵よ」 ぼそっと言うなりセイニィはブレスレットを腕にはめた。 「良かった」 牙竜は一安心。 「というか、プレゼントなんてずるいでしょ。あたし何も用意して無いわよ」 手ぶらのセイニィは肩をすくめ息を吐いた。プレゼントの事を教えてくれれば用意したのにと。 「こうして俺の誘いを受けてくれただけで十分だ」 「……はぁ。あなたが十分でもあたしが十分じゃないのよ。して貰っておいて何もしないって言うのは」 やる事をしてすっかり満足の牙竜とは反対にセイニィは不機嫌。 「それなら食事でも一緒に」 「それだけ? まぁ、いいわ。さっさと行きましょ」 一緒にいられるだけで十分だが、何か言わなければと牙竜、セイニィはそれに対してもまだ不満そうではあったが、承諾し一緒に食事をした。 雪降る中、鐘鳴る時計塔の前。 「……雪ね」 フリューネは楽しげに雪を楽しんでいた。 「……あれからちょうど一年」 リネンはフリューネの様子を見ながら告白して保留となった出来事を思い出していた。 そして、 「フリューネ。来年も再来年も十年後もずっと、ずっとフリューネの事を好きでいていい? こうして一緒にいてもいい?」 リネンは心に潜む不安を言葉にした。 「リネン?」 急に不安に満ちたリネンの声に何事かとフリューネは心配そうに振り返った。 「……別に今すぐ返事が欲しい訳じゃないの。本当は嫌で、でも私を傷付けたくないから返事に困っていたり、私が女だから嫌なんじゃないかとか思って」 リネンは少し涙声で心に溢れて続ける不安を吐き出した。 「……そんな事無いわ。リネンは大切な人よ。ただ、それが恋なのかどうかとなると……本当にリネンには酷い事をしていると思う。けど、今日はとっても楽しかったわ。何十年経っても今日の出来事は忘れやしないわ。絶対に」 フリューネは即リネンの言葉を否定しつつも返事を保留している事に対して申し訳なく思っていた。ただ、今日の思い出はかけがえのない物である事は間違いない。 「本当?」 「本当よ。だから、笑ってリネン。せっかくのお祭りなんだから」 聞き返すリネンにフリューネはリネンの頭を撫でながら笑いかけた。リネンはゆっくりと笑顔になった。