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正体不明の魔術師との対決準備?

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正体不明の魔術師との対決準備?

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第二章 お宝と情報


 遺跡内部。

 侵入してすぐに甚五郎達は遊び回る双子に遭遇した。
「あんな事があったと言うのに元気じゃな」
 真っ先に羽純が声をかけに言った。
「うぉっ!!」
 羽純の姿に驚き、一歩後退する双子。
「そう幽霊を見たかのような顔をせぬとも良かろう。そなたらを取って食おうという訳では無いのじゃからな」
 羽純は苦笑しながら双子を落ち着かせようとする。
「……いや、その言葉信じるわけねぇだろ」
「だよなー」
 散々な目に遭わされている双子は全く羽純の言葉を信じない。
「ふむ、わらわにも優しい時はあるのじゃ。まぁ、一つほど頼みはあるがのぅ」
 双子の反応は気にせずに羽純は頼み事をする。
「頼みって何だよ?」
「……無茶な事じゃないだろうな」
 嫌な予感しか浮かばない双子は眉を寄せる。
「探索ついでに見つけた物をメモでも取って貰いたいのじゃ。回収した中に何か役に立つ物があるかもしれぬ。わらわの頼みはそれだけじゃ。それさえしくれたら遊んでも構わぬ」
 羽純の頼み事は双子にとって嬉しいものだった。
「マジで!? 何か具合でも悪いのか?」
「それともヤバイ物でも食べたか?」
 予想外の事に羽純に散々な事を口走る双子。
「……散々な言いようじゃな。ただし、やり過ぎた時は……解っておるよな? 幽霊を見た顔ではなく幽霊になるかもしれぬと。ほれ、後ろにおる者のように」
 羽純はいつもの脅しは忘れない。
「!?」
 羽純に言われて慌てて背後を振り向く双子。
 そこにいたのは
「……こちらはよい場所ですよ」
 架空世界での自爆から未だに双子に生存を伝えていないブリジットが『壁抜け』を使用して壁から顔だけを出して幽霊役を務めていた。
「うぉっ!!」
 何も知らない双子は大いにビビり、凄まじい勢いでブリジットから顔を逸らした。その隙にブリジットは静かに甚五郎達の元に戻った。
「では、わらわはもう行くからのぅ。よく楽しむがよい」
 まだ青い顔をしている双子を置いて羽純は甚五郎達の元へ去った。
 双子は羽純への恐怖からきちんとメモ取りを忘れなかったという。

 研究者の書斎。

 甚五郎の『殺気看破』で周囲の警戒をしながら進む道々、凶暴化した獣に何度か遭遇するもホリイの『幸せの歌』やブリジットの『しびれ粉』を使用して動きを封じてから捕縛し、大人しくさせてから先を進んだという。さすがに命を奪うのは忍びないので。
「いろいろありますね。この部屋に何か凶暴化した動物さんを何とかする方法があったらいいいんですけど」
 ホリイが探すのは凶暴化した動物達を救う手段。
「わらわはこの場に残る記憶を読み取ってみるかのぅ」
 羽純は『サイコメトリ』で机や家具に潜む記憶を読み取る事に。
「儂は書物でも探すか」
「甚五郎、お手伝いしますよ」
 甚五郎とブリジットは書物から例の魔術師についての記載は無いかと調査する事に。

 調査を開始してしばらく後。
「ほとんどが魔法薬の作り方ばかりだな。ブリジット、そっちはどうだ?」
 甚五郎は確認し終えた魔法薬のレシピ本を棚に戻しながらブリジットの案配を訊ねた。
「……一冊、怪しい物を見つけました。ただ、古ぼけた鍵だけでなく魔法的な罠も仕組まれているようです」
 ブリジットは明らかな魔法の気配を漂わせる鍵付きの書物を発見していた。
「……鍵か。とりあえず解除してみてくれ」
 甚五郎はとりあえず解錠を頼んだ。
「……分かりました。解錠してみましょう」
 ブリジットは『ピッキング』で解錠してから書物を甚五郎に手渡した。
「……開いてみるぞ。もし罠が発動しても気合がありゃ、何とかなる」
 解錠しても異変が起きない事を確認してから甚五郎はさっさと本を開いた。もし危険があればすぐに『イナンナの加護』で察知は出来る。
「何ともないな。これは日記だ。他人に見られたくなくて錠を付けたんだろう。それらしいページは……これだな」
 甚五郎は、パラパラと適当にページをめくりながら素早く目を走らせ必要な情報の有無を確認して目的のページを見つけ読み始めた途端、
「……甚五郎、書物の形が崩れ砂になり消えていますよ。もしやこれが仕掛けですか。開けると中身が砂になり空気中に溶けてしまうという」
 ブリジットの言葉通り書物が形を崩して砂となり甚五郎の手からこぼれ空気中に溶け消えていった。
「何とか内容は確認した。魔術師が起こした事件に遭遇した事が書かれてあった」
 そう言って甚五郎は書かれてあった内容を簡単に話した。

 その日記の内容は、

「ここに来る前、奇妙な魔術師が起こした事件に巻き込まれた。たまたま事件現場に立ち寄ったが幸い被害者にはならなかった。しかし、あの好奇心そそる巨大な魔力の気配。気になって探し回り、対面した時の奇妙な感じ。人と対峙してるとは思えなかった。一体何者なのか、どうして凄惨な事件を起こすほどの魔法が使えるのか知りたかった。しかし、見つけ出し駆け寄る前に目の前で消えてしまった。まるで幕切れだと言わんばかりに。それから姿を見かける事はなかった。あれが最後の機会だったのだろうか。あのような存在なりたい。魔力に満たされた存在に」

 という物だった。

「最後の事件を終えると消えるのですか。しかし、ここで起きる事が最後なのかは不明でしたね。そのような情報は入って来ていませんから」
 ブリジットは今現在持っている情報を整理するが答えは見つからない。
 その時、
「見つけました!! 凶暴化した動物さんを元に戻す手掛かり!!」
 凶暴化した動物を救う方法を探していたホリイが分厚い書物片手に声を上げた。
「これですよ。動物さんにかけた魔法の内容です。ただ、これは魔法実験の被害に受けた動物さんを救う手掛かりで迷い込んで魔法薬の影響を受けた動物さんを救えるかどうかは分かりませんけど」
 ホリイは本を開き、皆に中身を見せながら発見物の説明をした。
「そこは問題無い。調査をしている間に見つかる可能性もあるからな。もし見つからなかったとしてもこれがあればどうにかなるだろう」
 甚五郎は中身を確認しながら言った。
「わらわも面白いものを見つけたのじゃ」
 読み取りを完了した羽純が会話に加わった。
「三人の研究者と旅人らしい五人組が話をしている姿じゃ」
 羽純が読み取った事を話した。研究者達が旅人達の旅話を楽しそうに聞いてる様子。飛び交うのは気を留める必要の無い会話ばかりが多かったが、たった一つ気になったのが目的地があるかと問われた際に旅人の一人が答えた言葉。
「五人組の旅人……羽純ちゃん、それは」
 ホリイはすぐに思い当たった。今自分達が例の魔術師のついでに探している事柄だ。
「あの旅団じゃ。打ち解けて楽しそうにしておった。旅の目的を聞かれた際に目的地はあるが近くて遠い場所で自分達には決める権利が無いと」
 羽純は軽くうなずいてから話を続けた。
「……気ままな旅ではないんですね。目的地を決めるのが自分達でなかったら誰が決めるのでしょうか?」
 ホリイは小首を傾げながら疑問を口にした。
「自分ではない何かが決めるという事だな。しかし、一体誰が」
 甚五郎も考え込む。
「もしかしたら以前、甚五郎とホリイが言っておった取り憑いておる精神体かもしれぬ。長く逗留している様子であったから他にも何か手掛かりがあるやもしれぬ」
 羽純は以前甚五郎とホリイが立てた仮説を挙げた。
 この後も甚五郎達は探索を続け、同じく遺跡調査をする者達に出会った。