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リアクション
遺跡内部。
「……あの双子の姿がないな。あいつら装置を設置してるんじゃなかったのかよ?」
白銀 アキラ(しろがね・あきら)はどこをどう見ても仕事をしているはずの双子が見えない事に溜息をついた。白銀が思うのは心配ではなく呆れである。すっかり双子の行動は熟知しているから。
「そうだねぇ。見慣れた展開だから驚きはしないけど」
清泉 北都(いずみ・ほくと)も驚きはしないし同じく心配もしない。どうせ他の人が見つけて仕事に引きずり回していると分かっているから。
「まあな。あの二人が大人しく作業しているなんて有り得ないからな。せっかく中に入ったし、このまま調査でもするか?」
双子の事はひとまず置き、白銀は興味をそそる遺跡探索に目的を変更する事を提案。
「そうだね。エリザベート校長の言葉通り事が上手く運ぶとは言い切れないし、そもそも装置の設置だけで事が済むとは思えないんだよね。この遺跡もあの魔術師と関連がある可能性がある。何せ魔法中毒者の住居だったと言うし」
古代の遺跡や書物調査が好きな北都は即賛成した。
「発見した物はどうするんだ? 回収するか?」
「この遺跡はイルミンの物だから確認を入れてみるよ」
北都は白銀の質問に答えるなり『テレパシー』でエリザベート・ワルプルギス(えりざべーと・わるぷるぎす)に確認を入れた。
「大丈夫みたいだよ。取り壊される場所だから回収できる物は出来るだけ回収して欲しいという事だよ」
確認はすぐ返って来て白銀に伝えた。
「そうか。じゃ、早速、役に立ちそうなレシピか魔法薬が無いか探ってみるか」
「僕は書物類でも探してみるよ」
白銀と北都はそれぞれ自分が求めるものを探し始めた。
実験室、入り口前。
「……ここから気になる匂いがするな」
白銀は『殺気看破』で周囲を警戒しつつ『超感覚』で魔法薬や素材の匂いを辿っていた。遺跡に漂う臭気が無害とはいえ万が一の事を考え『肉体の完成』で身を守っている。
「……声? 誰かいるのか!!」
白銀は向かう予定の場所から誰かの叫び声が耳に入り、急いで駆け出した。
実験室。
「ひゃぁ〜、やっぱり来るんじゃなかったよ〜」
いたのは冬山登山の様な格好をし、顔に防護マスク、首にネームプレートを掛けた人物だった。
「すぐに助けるからな!!」
白銀は『神速』で怪物の間をすり抜け、襲われ尻餅をついている人物の前に立ち、『鳳凰の拳』で怪物の急所を殴りつけ気絶させた。
「お前、もしかしてユリス・カガツか」
白銀は助けた人物に確認を入れた。情報だけでしか知らないため正しいか確認する必要があるのだ。
「そうだよ。手記の復元が掛かりそうだから何か無いかと来たら襲われてさ〜。助かったよ」
名も無き旅団を求めるユリスはのんびりと答えながら立ち上がった。
「おいおい。それで何か見つけたのか?」
空気を読まないユリスの様子に呆れる白銀。
「ん〜、変な薬以外何も無いね〜」
ユリスはのんびりと白骨死体がもたれる机に載った妙な薬を指さした。
「これが変な薬か。他には……」
白銀は他には何か無いかと探った結果、白骨死体がもたれる机の裏に何かを発見した。
そして、白銀はユリスに待つように言ってから魔法薬の確認のため北都を呼びに行った。
「……結構見つけたかな。早速、取り掛かろうかな」
『T・アクティベーション』で念のため身を守ってから北都は大量の書物や紙切れが山積みにされた机を発見した。
『資料検索』で素早く重要な書物を選び取るなり『博識』を持つ北都は見事に手に取った書物を読み取った。
「これは、装置を起動した時に大変な事に……とりあえず、確認を取った方がいいね」
書物から得た情報に北都は神妙な顔になるなり『テレパシー』でエリザベートに確認を取った。
エリザベートとの会話が終了した時、
「何か見つけたか?」
近くを通りかかった甚五郎が北都に探索の具合を聞こうと声をかけて来た。
「ちょうど、今大変なものを見つけたところだよ。詳細は全く書かれてはいないんだけどこの場所に害を及ぼすような事が起きた際に起動する危機回避の魔法装置がある危機管理室があるらしいと」
そう答えるなり北都は手に持っていた書物を甚五郎に渡した。甚五郎達が書物を確認している間に北都は他の人に情報を拡散した。
「装置設置はどうなるんでしょうか?」
ホリイが疑問を口にした。
「確かめたところ、このまま続行だそうだよ」
北都は先ほど確認した事を伝えた。
「続行ですか、何か手があるのでしょうか」
「凍結装置によって魔法が使用出来なくなるだけではなく、遺跡による害もあるとなると厄介ですね」
首を傾げるホリイと厄介な状況となる対決時に言葉を洩らすブリジット。
「……この遺跡のどこかに停止する方法があるのかもしれぬ」
羽純は書物を北都に返しながら言った。書物には一切停止方法が載っていない。
「そうであればいいけど。さっきも言ったようにこの書物にはそこまでは書かれていないんだよねぇ」
書物を受け取った北都。
「そうじゃな」
羽純も北都の言葉にうなずいた。
そこに
「おい、この薬が何か確かめて貰いてぇんだが」
妙な薬を片手に白銀が現れ、北都を呼びつけるなりすぐにユリスがいる実験室に戻った。
「薬?」
北都は急いで白銀の後を追った。甚五郎達も何事か知りたく付いて行った。
「……そなたはユリスじゃな」
羽純はユリスの方に顔を向けた。ユリスの事は別世界に囚われる事件の際、知ったが本人と話すのは今回が初めてである。
「よろしく〜」
ユリスはにこやかな声で挨拶をした。
「何でここにいるんですか? 学校の方にいるはずじゃ」
「手記の復元が手こずっているしここに何かあるかもと思ってさ〜」
ホリイの疑問にユリスは呑気に答えた。
「……ところで薬は何でしたか?」
ブリジットは薬を確認している北都に訊ねた。
「危険な物ではないけど、よく分からないね。ただ、失敗作である事は分かるよ」
『薬学』を持つ北都は少々首を傾げながら答えた。
「あともう一つ、この机の裏側にレシピらしき物を刻んでやがるんだが」
白銀は机の裏側の気になる物の事を伝えた。
「机の裏側……途中で途切れているけど魔法薬のレシピで間違い無いと思うよ。ただ、どう見ても途切れているのに意図的なものを感じる上にどうしてこんな所にレシピがあるのかが気になるね。人に知られたくないレシピなのかな」
北都は確認した後、所見を述べた。
「……確かめてみるかのぅ」
羽純がもう少し詳細をと『サイコメトリ』で机に触れ、記憶を読み取った。
その結果は、
「この白骨死体の者が刻み、残りはこの者の親しき者に渡したようじゃ。このレシピにどのような意味があるかまでは分からぬ」
だった。
「そうですか。そこまでするという事は何か特別なレシピなのでしょう」
ブリジットはただのレシピとは思えない扱いから推測した。
「本当にこっちは面白い事ばかりだね〜。来て良かったよ〜」
呑気者のユリスは楽しそうな声を上げた。
「ここの用事は終わった。オレ達が護衛してやるからお前はさっさとここを出るんだ」
用事終わったところで白銀は話をユリスに向けた。
「ん〜、分かった。よろしく」
ユリスは素直に白銀の言葉に従った。
「では、儂らはこのまま探索を続ける」
甚五郎達はこのまま探索を続行する事に。北都達はユリスを遺跡の外まで送り、発見したレシピについて連絡を入れてから探索に戻った。
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