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血に染まる学園

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大事な人思う故に出される答え

 セレアナと逸れてしまったセレンフィリティは合流地点でセレアナを待っていた。
 しかし、待てども待てどもセレアナが来る気配はない。
 そして、なんだか酷い胸騒ぎがする。

「セレアナ、無事でいて……!」

 いても経っても居られなくなり、セレンフィリティはセレアナを探しに走り出した。


………………
        ………………
                ………………


「………!?」

 息も絶え絶えにようやく見つけたセレアナは、首から上を失っていた。

「せれあな?」

 制服が血で汚れることも気にせず、セレアナだったモノを抱きしめるセレンフィリティ。
 こぼれ落ちる涙。そして言葉にならない絶叫と悲鳴。

「ああああああああああああああああ!!!!!!」
「(なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで。なんでセレアナなの!? どうしてセレアナなの!?)」

 理不尽な怒りが募っていく。

「(返してよ! 返してよ! 返してよ! まだセレアナとしたいことも、セレアナと話したい事もいっぱいあったのに! セレアナを返して!
返して! 返して! 返して! 返して!)」

 次第に飲みこまれていく狂気。
 どす黒い狂気が膨らんで行く。
 視界が黒く染まった時、声が聴こえてくる。

「愛する者を蘇らせてみない?」

 声がした方を涙で濡れた顔を向けると、蓬栄 耀(ほうえい・よう)が立っていた。

「…………え?」
「ここで死んでる子って、あなたの大切な人でしょ? もう一度会いたいと思わない?」
「逢えるの?」
「もちろん。かみさまがね、蘇らせてくれるんだよ」
「本当に? 本当にセレアナとまた逢えるの?」
「儀式がちゃんと行えれば、かみさまが呼び戻してくれるよ」

 耀は神崎 荒神(かんざき・こうじん)が最愛の人を失った時に出会った、黒いローブを纏った人間から聞いた話をセレンフィリティに教える。

「どう? 面白そうじゃない?」

 無邪気に笑う耀。
 それはどこかズレていて背筋が寒くなるのだが、セレンフィリティには関係ない。

「必要なパーツはあとどれなの?」
「あ、やるんだね」
「もちろんよ。セレアナと逢いたいもの」
「じゃあ、よろしくね?」
「えぇ」

 耀から話された話しを信じ、セレンフィリティは耀と握手を交わすのだった。



◇          ◇          ◇




 耀と手を組んだセレンフィリティが別行動を取り出した頃。
 セレアナの残したダイイングメッセージを見た者が行動を起こしていた。

「おかしらさま……どこかで聞いた事があるのだが、どこだったかな……」
「なら、図書館でそれらしいのを探そうか」
「そうだね。きっと探し手入れば、ノーンが何かしら見つけるんじゃないかな?」
「よし、話しはまとまったな」

 千返 かつみ(ちがえ・かつみ)が先頭になり、ノーン・ノート(のーん・のーと)エドゥアルト・ヒルデブラント(えどぅあると・ひるでぶらんと)のウエストポーチに入ると三人は図書館を目指した。


………………
        ………………
                ………………


 かつみの殺気看破によって無事に図書館までたどり着いた三人は、それぞれおかしらさまに関連しそうな書物を探していく。
 かなり特殊なキーワードであるのか、見つけ出す書物はみな本焼けが酷かった。

 書物には読みにくく、そのまま解読できる場所が少ない。
『かみの使いは3柱存在し、それぞれ四肢を司るおししさま・胴を司るおどうさま・頭を司るおかしらさまがいる』
『かみは御使いに与えられる供物を使って人を蘇らせる事が出来る』
『蘇らせるには条件の一つとして、呼びかける者は蘇らせる者と親しい関係があることが必要』
『捧げる供物に同じ肉体を捧げる事は禁忌とされる』
『かみは人の感情に聡く、誰もかみを手に入れる事は出来ない』
 今読めるのはこれだけだった。

「なぁ、もし……もしだぞ? もし大切な人が亡くなったら、同じ事をするか?」
「しないよ」
「結局は自己満足だろう。こんな歪んだ儀式で復活したものが、まともに生き返るとは思えない。そこから目をそらして都合のよい部分のみ見てるだけだ」

 きっぱりと答えるエドゥアルト。
 ノーンは聡明な瞳で独自の解釈でそう答える。

「俺、以前は考えたことなかったけど……今問われたら、正直気持ちがゆらいだ」
「まず、それより先に勝手に死ぬのは無しだよ」
「……わかってる、やらないって」

 エドゥアルトの釘さしにかつみは優しい表情で返す。

「他人の命つかってまで生き返らせたって知ったらお前達泣くだろうからな。でも、自己満足であったとしても、大事な人の為に間違うってことはお前にはばかばかしく見えるか?」
「いいや……誰かを大切に思うが故に間違える馬鹿は嫌いじゃない」

 そう答えるノーンは遠い誰かを思い出すようにぽつりと言う。

「もちろん人を害するようになれば話は別だが。さぁ、話しはこれ位にしてこの読みにくい文を読み解いて行くぞ」

 ノーンに言われ、三人は身を寄せて読み解いて行く。
 時たま、読み解くのに必要な資料や新たに見つけた書物を持ってきたり、戻したりしながらキーワードを深く調べていった。