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少女と執事とパーティと

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少女と執事とパーティと

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 「どうぞ」
「イリスフィル家には歴代の当主になる為には、イリスフィル家の血を継いでいる事が絶対の条件だ。これは兄の遺言以上の縛りがある」
「まさか……」
 チズは愕然とした。
「これはイリスフィル家に伝わる秘事だ。拾い子の貴様には知る由もなかったろうがな」
「そうだな、ライス?」
「はい。確かにあります。イリスフィル家の血を継ぐ者だけが、当主になる事が出来ます」
「ライス?」
 チズはライスを見た。ライスは興味が無いように、ジョージを見ていた。
「そして、そこの女はイリスフィル家の血を引いていない。奴には当主になる資格は無いのだ。だからいくらパーティを成功させようと無意味なのだ。素直に私に譲っていれば、良かったのだよ」
「「そう、だから、イリスフィル家当主には私が/お嬢様が――相応しい」」
 二人が同時に口を開いた。
「何?」
 ジョージがライスへと振り向いた。だが、ライスはジョージに興味を示さない。
「そんな事でしたか」
 話を聞き終え、ライスが口を開いた。
「お嬢様はイリスフィル家の正統な血を継いでおります」
「ライス……」
「……何だと」
 ジョージは信じられないといった顔をしていた。
「馬鹿な!こいつは兄の拾い子の筈だ!」
「ええ、確かにお嬢様は前当主ルーク様に拾われています。ですが、別にそれは問題ではないのですよ。カルさん、頼んでおいた物を」
「ああ、しっかり守っておいたよ」
 カルはそう言うと、A3サイズの封筒を取り出した。
「どうぞ」
「ありがとう」
 ライスは封筒から複数の書類を取り出した。
「カルさん達に預けておいて正解でした。これが奪われてしまっては、今回の事が全て無駄になってしまいます」
 ルイスはテーブルの上に書類を丁寧に並べた。
「これはお嬢様のDNAデータになります。そしてこれがルーク様のものになります。検査の結果、お嬢様はルーク様の御子息であることが証明されました。
 これはシャンバラの学園機関で取得したデータでありますので、精度は99%以上で100%に近い確度になります」
「何……だと……」
「つまり、お嬢様はルーク様の正統な後継者として全てを満たしております」
「と、言うことです」
 エースは『エバーグリーン』でジョージを拘束した。
「ぐっ!」
「ここで幾つか集めたネタばらしもしましょう。ジョージさん、裏の事業に手を出していましたね。
 仮想通貨によるマネーロンダリング。マフィア等から上手くお金を集めていたようですね。それを自らの資産にしていたとは、俺としては驚きです。
 ああ、金の流れの記録は既に手に入れていますからご心配には及びませんよ」
「抵抗されたので、一つマフィアを潰してしまったがな」
「前当主はこれに気付いていたようです。そして、イリスフィル家の資産管理から貴方を遠ざけていた。イリスフィル家の存続のためにね」
「はい。お嬢様もそれに気付いておられました」
 ドリルが口を開いた。
「何をしたかは知ってるよ、旦那。でも公表もしたくない。何を意味するか、おわかりでしょ?シャーレットさんからあんたの部下とのやり取りを記録したICレコーダーも預かってる」


 「お嬢様、如何致しましょう?」
「エースさん。叔父を会場の外にお願いできますか?」
「構いませんよ」
 エース達はジョージを連れ、会場の外へと向かった。
「それとカル。演技が足りませんね」
「演技なのか本心なのか分からなくなったんだよ」
「大人になれば分かります」

 ジョージが控え室から出て行くと、控え室は静かなものだった。
「ライス、説明をしてくれますか?」
「はい、お嬢様。今回の事は――ルーク様から頼まれておりました」
「そこは僕が説明するよ。悪いけど、調べさせてもらったよ」
 カルが話を始めた。
 「チズ・イリスフィル。前名はチズ・ノーグマン。前当主とチズの母親アイリス・ノーグマンとの間に出来た一人娘。だけど、チズのお母さんは屋敷で働いていたメイドだったんだ。子供が出来たと分かった時、前当主に迷惑をかける訳にはいかずお母さんはイリスフィル家を出たんだ。その後は、チズも知っている通りだよ。チズのお母さんが亡くなった事を知った前当主がチズを養子として迎え入れた。全てを承知した上でね。偶に母親の事を聞かれていなかったかい?」
「そういえば、私に母の話を懐かしそうに聞いていました」
「そうか、ずっと思っていてくれたんだね」
「はい、そうだと思います」

 ――。
 「さて、僕達もそろそろ行くよ」
 カルはチズに向き直ると軽く頭を下げた。
「お世話になりました」
 ドアに手を掛けるが、手を離しチズへと振り返った。
「チズ。当主の椅子に座って、初めて気付く物がある。分かっていたつもりでも、隣に居ても気付くことが出来なかった物があると思うけど、頑張って」
「ええ、ありがとう」
 じゃあと言って、カル達は出て行った。


 「ぬぐっ!ここは何処だ?」
 ハデスが目を覚ますと、そこは見知らぬ土地だった。十六凪に身体を乗っ取られたことを覚えていない様だった。
「しかも、お金もない。携帯も無いだと!」

担当マスターより

▼担当マスター

村野憂規

▼マスターコメント

 皆さん、こんにちは。
 村野 憂規です。ノーマルシナリオ『少女と執事とパーティと』に参加して頂き、ありがとうございました。
 公開が遅くなり、大変ご迷惑をおかけ致しました。

 今回はパーティについてのお話でした。
 自身もテーブルマナーなどは未だに分からない事があります。

 アクションについては、チズとジョージとの関係をどうするかで凄く悩みました。
 ジョージを一方的に悪くする形となってしまいそっちかと思う方もいるかと思いますが、申し訳ありません。
 楽しく読んで頂けましたら、幸いです。

 皆様、お疲れ様でした。
 御参加頂き、ありがとうございました。

▼マスター個別コメント