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イルミンスール・被害者救助


「……一体何なのこれは。どう見ても何かのイベントじゃなさそうね」
「えぇ、事件ね。誰かに確認した方がいいかもしれないわね」
 たまたまイルミンスールに用事で来ていたセレンフィリティ・シャーレット(せれんふぃりてぃ・しゃーれっと)セレアナ・ミアキス(せれあな・みあきす)は事情が分からぬままこの騒ぎに巻き込まれていた。セレアナの提言により付近にいた調薬探求会の者に事情を聞き、解除薬を余分に貰って服用しついでに治療所兼避難場所の情報も手に入れさらなる状況把握のために向かう事にした。

 治療所兼避難場所に向かう道々。
「風上に治療所を設けているというからそこに立ち寄って詳しい状況を確認するのが先決ね。事態は刻一刻と変化しているはずだから……それでどうするの? この騒ぎの犯人を確保に行くの?」
 セレアナは慌ただしい周囲を見回しながら言った。
「情報確認は必要だと思うけど、犯人確保は他の人に任せるわ。どうせ、誰か向かってるだろうし、それよりも増える被害者を何とかしないとまずいでしょ。というか、絶対にこの騒ぎの犯人も被害受けてるわよね」
 セレンフィリティは状況から犯人もまた被害者となっていると読み完全に呆れていた。
「でしょうね。これだけ範囲が広いのと気体になる魔法薬だと当然そうでしょう」
 セレアナは今の状況を見回し、肩をすくめて賛同。
「だとしたら、ホント馬鹿ね。ほら、あれも当てはまるわよ。ナントカに刃物って言う奴。
これ作った奴は確実に頭のねじが半分ほどどっかに消えてなくなってるんじゃない?」
 セレンフィリティは呆れたっぷりの言葉を呪詛の如く延々と吐き出しぼやいていた。
「……散々ね。セレン、治療所に行くなら被害者も連れて行った方がいいわね」
 セレアナは溜息を吐きつつもフォローは忘れない。
「そうね。早速いるみたいよ」
 セレンフィリティはすぐさま目に付いた被害者の元へ駆け解除薬を飲ませ、回復が早かったため付近にいた調薬友愛会の者を付き添いにして自分の脚で避難して貰った。
 その後も向かう道々で救助を行い、回復が遅い者の搬送を両調薬会の者に任せたり一部の避難者達はセレンフィリティ達が引き受けて治療所兼避難場所に向かった。途中で魔法中毒者確保が開始された事も知った。
 二人が目的地に到着したのは打ち合わせが行われている時であった。

「……来てくれてありがとうございます」
 ヨシノは現れたフレンディス・ティラ(ふれんでぃす・てぃら)達に頭を下げた。マリナレーゼ・ライト(まりなれーぜ・らいと)の『根回し』で同行出来るようにしておいたのだ。
「当然の事ですよ。一緒に頑張って街全体が最悪の事態になる前に一刻も早く皆様方をお救い致しましょう!」
 フレンディスは握り拳を作り、力になる気満々である。
「……しかし、黒亜の事は気になるな。前回も妖怪の山で騒ぎを起こしていただけに。確か調薬会が二つになる時も一騒動あったとか言ってたな」
 黒亜を知るベルク・ウェルナート(べるく・うぇるなーと)は気掛かりを口走った。
「はい。負傷者が続出して……その時に何とかしていればこんな事には……私達の責任です」
 ヨシノは顔を俯かせ、多くの被害者が出ていると想像し胸を痛めていた。
「ヨシノさん、大丈夫ですよ……(ん、マリナさんがお話ししているのはポチでしょうか?)」
 ヨシノを励ましたフレンディスはマリナレーゼが忍野 ポチの助(おしの・ぽちのすけ)と電話している事に気付いた。どうしてポチの助が来ていないかというと思うところあって家出をしフレンディス達の知り合いの家に居候中だからだ。
「……私は代わって貰えないのですね」
 全く自分に代わってくれる様子が無い事にフレンディスはしょんぼり。なぜならポチの助とは家出して居候場所の連絡が来た時以来電話に出てくれず話していないためフレンディスはポチの助に嫌われたのではと落ち込み中。本当はそうではないのだが。
「フレイ、今は目の前にある問題を片付けねぇと。そのために俺達はここにいるんだろ? ワン公も手伝ってくれるんだ。落ち込んでる暇はねぇぞ」
 ポチの助が来ない理由を大方察しているベルクはフレンディスを励ます。早々に苦労人ぶりを発揮。
「……はい……そうですね。離れていてもポチと一緒に事件解決です!」
 フレンディスはベルクの励ましにしょんぼりは引っ込みポチの助が手伝ってくれていると嬉しさが顔を出した。

 その間。
「ポチちゃん、現場に到着したさ」
 マリナレーゼはテレビ電話が出来る腕時計型携帯電話で現着を報告していた。他にもポチの助に借りた端末ノートパソコン−POCHI−を持参している。
『そうですか。今回、僕は現場に行けませんが、端末と回線は繋げてありますから話の見聞きは可能です。情報もいつでも収集・提示出来ますのでその都度僕に言って下さい(ご主人様にグラキエスさん、シーサー達が心配ですから本当は現場へ行ってお手伝いするべきですが……家出したばかりの僕はご主人様に会う訳には行かないのです。それに……)』
 ポチの助は胸には多くの心配を抱きながらもぐっと堪えて自分の役割に徹していた。
「ベルちゃんが気にしている名も無き旅団と関わりがある中毒者がいるからその情報がいくつか入った時はポチちゃんの力頼りにするからお願いさね」
 マリナレーゼは被害者救助関連意外の準備も依頼。
『任せて下さい(ここにも沢山出来る事はあるのです。マリナさんや……不本意ながらエロ吸血鬼に任せましょう)』
「それじゃ、ポチちゃんまた後で」
 ポチの助とマリナレーゼはここで話をおしまにした。ポチの助は、フレンディスに会うだけでなく声を聞くと甘えてしまいそうなので我慢。嫌っていると言うフレンディスの思いは違うのだ。好きなのは昔も今も変わらず。ただ、抱え込んでいる事があるだけ。ポチの助はツァンダから端末機を使い、フレンディス達とグラキエス達の双方を情報仲介役及び収集提供の面で力を発揮していた。

 話が終わったのを見計らい
「マリナ姉、終わったか」
 ベルクが訊ねた。
「終わったさ。ヨシノちゃん、心配無いさ」
 マリナレーゼはベルクに答えた後、ヨシノを励ました。フレンディスとヨシノのやり取りもきちんと耳に入れていたのだ。
「……ありがとうございます」
 ヨシノは申し訳なさそうに頭を下げた。
 そして救助を開始した。
 ベルクが天眼の杖で被害者の居場所を捜索し発見次第フレンディスに伝えてヨシノが入手しておいた解除薬を使いフレンディスが被害者を救い、避難誘導をする。その優先順位は年配と子供など移動速度の遅い者から。フレンディスの『野生の勘』とポチの助の情報で安全ルートを確認しつつヨシノに聞いた治療所兼避難場所を目指した。

 その道々。
「騒ぎの原因はともかく、今後もこうして二つが力を合わせる事が出来ればあたしも援助し易いけど、これをきっかけにするのは無理さね?」
 マリナレーゼは何気なく両調薬会和解の打診をするが、
「……確かに互いに仲の良い人もいますが、すぐには……」
 ヨシノの返事は当然だが歯切れが悪い。
「そうさね。ヨシノちゃんとシンちゃん達とでは根本的な考え方が異なるさね。今後も方向性が分かれ続けるのは仕方がないさね。だから全員一緒は無理でも一組織二部門のようにやり直せないさね? そうすれば、あたしも双方に協力し易いさー」
 ヨシノの返事など想定内のマリナレーゼは諦めず、用意していた妥協案を提示する。方向性が違う事はこれまでの交流でよく知っている。
「……そうですね。しかし、私の一存では返答は無理です。今回の事が解決してからゆっくりと他の者達と話してから」
 ヨシノはかなり間を置いてうなずくも代表者らしく易々とは承諾しない。
「そうさね。まずはこの騒ぎを解決してから」
「早く解決出来るように頑張りましょう!」
 マリナレーゼとフレンディスはヨシノを励まし仕事へ。

 一方、ベルク。
「……しかし、記憶か……(案外、手記が名も無き旅団のメンバーが最終的に変化した姿かもしれねぇな。役割に応じた書物の色、文体と内容に読み取れた記憶が妙に具体的かつ鮮明なのも納得出来るんだが、中毒者に会って事情を聞きたい所だな)」
 名も無き旅団について推理を巡らしていた。
「マスター、何か考え事ですか?」
 心配して顔を覗き込むフレンディスに
「いや、大丈夫だ。急ぐか(今は救助だ。おそらく中毒者確保に行った者から何か情報が来るはずだ。考えるのはそれからだ)」
 ベルクは軽く頭を振り、思考するのを中止してやるべき事に集中する事にした。
 この後、フレンディスは投薬するも目覚めぬ少年を背負い治療所兼避難場所に向かった。