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リアクション
エピローグ
世界コイル前では、裸踊りがピークを迎えていた。
最高潮のボルテージのなか、裸で乱舞する人々をセレンフィリティ・シャーレット(せれんふぃりてぃ・しゃーれっと)が冷ややかな目で見つめている。
アホらしい。
八紘零にラビットコインを盗まれた上、この作戦内容。呆れてものも言えないとばかりに、彼女は帰ろうとしたのだが。
「参加したら? 好きでしょ、こういうの」
セレアナ・ミアキス(せれあな・みあきす)が背中越しに声をかけた。もともと乗り気ではなかったセレンフィリティをここまで誘ったのも、彼女である。
本来であれば、裸踊りに率先して参加するのはセレンフィリティのはずだ。しかし、人体実験や人身売買をおこなう八紘零が絡むと、セレンの心は復讐に狂う。
「とても、踊る気にはなれないわ」
「――私は、セレンと踊りたい」
恋人が熱心にすがってくる。その理由に、セレンフィリティは気づいていた。
元の自分に戻ってほしいという願い。こういう馬鹿らしい祭りには、尻ごみする恋人を巻き込んで、能天気にはしゃぎまくる……それが本来の自分の姿なのだから。
「やるからには、とことん付き合ってもらうわよ」
心を蚕食する闇を振り払いたい――。セレンフィリティ自身、無意識のうちにそう感じていたのか。着ていた服を脱ぎ捨てると、躊躇なく一糸まとわぬ姿になった。
恋人にも同じ格好を要求する。
セレアナはさすがに恥かしがるが、頭を空っぽにして踊ってしまえば何もわからなくなるだろう。思い切って裸になると、セレンと激しく身体を密着させ、妖艶に踊り狂った。
ふたりは踊り続けた――なにもかも忘れるまで。
髪を振り乱し、汗を飛び散らせる。脳内麻薬が分泌され、ふたりは喘ぎ声を漏らした。
「まだ、足りないわ。……もっと激しく」
恋人に耳元で囁かれ、セレアナはより強く腰を振った。火照っていくセレアナの体温を感じ、セレンフィリティの意識は飛びそうになる。
それでもなお、セレンフィリティの心は復讐と愛情の間で揺れ動いていた。
彼女は自分の心を呪う。消えろ! 消えてしまえ! 恋人と裸で抱き合うこの瞬間だけでいい。心なんて、消えて……。
ふたりの脳内は完全にトランス状態になった。息を荒げながら、セレンとセレアナはその場にブッ倒れる。
身体から滴るのは汗だけではないだろう。葦原の太陽に焼かれ、ふたりの蜜が蒸発した。
――そしてついに。
世界コイルが、回転をはじめたのである。
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