天御柱学院へ

蒼空学園

校長室

イルミンスール魔法学校へ

【創世の絆】その奥にあるものを掴め!

リアクション公開中!

【創世の絆】その奥にあるものを掴め!

リアクション

「メルメルを助けるためにも、いっくよー!」
 両手を振り上げて、勢いよく小鳥遊 美羽(たかなし・みわ)が叫ぶ。彼女の指示に従う狼とギフト……ウルフアヴァターラが一斉に解き放たれて走り出す。
「何かを見付けたら、ちゃんと教えてね!」
 周囲を捜索させながら、徐々に進んでいく美羽。その眼前に、別のギフト、ペンギンアヴァターラがぺたぺたと歩こうとする。
「あなたは、無理しないで」
 と、ベアトリーチェ・アイブリンガー(べあとりーちぇ・あいぶりんがー)がペンギンアヴァターラを抱え上げる。
「こっちもだ。ほら、しっかりやるんだぞ」
 猪川 勇平(いがわ・ゆうへい)が自身のギフトを放ち、周囲の捜索に当たらせる。
「森が水晶化したんだとしたら、いったいいつごろ、どうしてこんな風になったんでしょうか」
 探索を狼とギフトに任せて、ウイシア・レイニア(ういしあ・れいにあ)が呟いた。
「……どうかしら。不思議な雰囲気を感じるけど……」
 と、香菜。
「でも、不思議な風景だよな。ぼーっと見てると、なんとなく森の中に吸い込まれてしまいそうだよな」
 周囲の水晶を眺めて、勇平が言う。
「気をしっかりもってよ。それも、この森の作用かも知れないし」
 美羽が勇平の肩をつかんで揺さぶる。
「お……おうっ。そうだな」
 気を抜きかけているのに気づいて、勇平が頭を揺する。
「大事な後輩を守ってもらった借りは、ちゃんとメルメルに返さなきゃいけないし、ここもしっかりやらなきゃ」
「香菜さんも、ちゃんとお礼を言わなければなりませんね、メルヴィアさんに」
 ベアトリーチェがそっと声をかける。うん、と香菜は素直に頷いた。
「こうしている間にも、メルヴィアさんがより危険になっているかも知れないし……早く、助ける方法を探さないと……」
 と、言いかけた時だ。
「ちょっと、大丈夫!?」
 美羽の連れた狼の一匹が、びくりと身を震わせて身を崩したのだ。あわてて駆け寄った美羽が抱き起こそうとすると……。
 ざらりとした感触が美羽の手に触れた。
「見てください、これ……」
 ベアトリーチェが示すのは、狼の毛皮だ。キラキラしたものがまとわりついている。
「まさか……みんな、戻って!」
 慌てて叫ぶ美羽。狼たちの毛皮には、いずれも同じものが触れている。毛皮が水晶の木々に擦れたせいだろうか? 狼たちは、いずれも元気を失っているように見えた。
「水晶化……だね、おそらく」
 様子を確かめて、叶 金(いぇ・じん)が呟いた。
「やはり、生物の力を奪っているのかな? 契約者のように生命力にあふれているならともかく、普通の動物なら長時間の調査には耐えられそうにないねえ」
「まだ、完全に水晶化しているわけではありませんわ。でも、早く運び出さないと……」
 と、ソフィティア・ジュノ(そふぃ・じゅの)が言葉を添える。確かに、美羽の腕の中で、狼たちは力を失い始めているようだ。
「お、おい、大丈夫か……って、こっちは、平気みたいだな」
 呼び戻したギフトの様子を確かめて、勇平が言う。力を失っている様子もなければ、水晶がまとわりついてもいない。
「ギフトには、影響がないみたいですね……」
 ベアトリーチェが、腕の中のペンギンアヴァターラの様子を確かめる。こちらも、被害を受けている様子はない。
「微生物や感染症という様子ではないね。魔法的な影響かな……」
 狼たちを確かめ、金は小さく呟いた。
「……この森全体から、危険な雰囲気を感じてはいたのですが……」
 確信を深めたように、ベアトリーチェ。
「この現象は、確かに病気という感じではありません。むしろ……」
「……呪い、でしょうか」
 ウイシアに、ベアトリーチェは頷いて答えた。
「それじゃあ、とにかくあんまり体によくはなさそうだね……急がなきゃ!」
 ペットたちの危機に青ざめた表情で美羽が叫ぶ。
「そ、そうね。いったん、引き返しましょう。みんなにも、注意するように連絡しなきゃ!」
 美羽の動揺が伝染したように、香菜もこくこくと頷いて答える。
「水晶のサンプルが欲しかったけど。……少し、考えた方がよさそうだ。とにかく、動物には危険で、ギフトは平気……ということか」
 金は冷静に、状況を分析していた。さて、両者を分けるものとはなんだろうか?
「俺が運ぶのか!?」
「仕方ないですわ。自分で動けない子も居ますし」
 狼の体を背負わされそうな勇平には、そんなことを考えている余裕はなさそうだった。
(水晶化……)
 ふと、美羽は背中がささくれ立つような、微妙なものを感じた。
(……どこかで、似たような感じを受けたことがあるような……いつか、すごく嫌な感じ……)
 と、自分が思考に意識を奪われかけていることに気づいて、首を振った。
(ううん。調べるのは誰か別の人に任せよう。この子たちを助けなきゃ)