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9


 死んでしまった人に会えるととしたら?
 黒崎 竜斗(くろさき・りゅうと)の答えは決まっている。三年前、鏖殺寺院のテロに巻き込まれて死んだ妹の美結に会いに行くことだ。
 だから、真っ直ぐ会いに来た。
 美結も同じ気持ちだったのだろう。顔を見るや否や竜斗の許まで走ってきて、
「お兄ちゃんっ」
 会うなりぎゅっと抱きついてきた。
「久しぶりだな」
 美結の頭を撫でながら、竜斗は微笑む。
「うんっ。お兄ちゃんは? 元気?」
「ああ。父さんも母さんも元気だぞ」
 それから、と話したいことをざっと頭の中でまとめた。
 テロを無くすためにイコンのパイロットを目指したこと。
 最高のパートナーに巡り合えたこと。
 他にも色々ありすぎて。
「……何から話せばいいのかわからなくなってきた」
「もう、お兄ちゃんったら! 変わってないんだから」
 くすくすと美結が楽しそうに笑うのを見て、自然を竜斗も笑顔になった。
「お兄ちゃんの近況や、パラミタでの冒険の話とか……いろいろ聞きたいけど」
 美結が、竜斗の後ろを見た。竜斗の後ろにはユリナ・エメリー(ゆりな・えめりー)が立っている。
「でも一番気になるのは、やっぱりお兄ちゃんの彼女さんかな!」
 ユリナに向けて、美結が満面の笑顔を向けた。
「ああ。ユリナは紹介しておかないとな」
「え、ええっ」
 当惑し、竜斗の後ろに隠れようとするユリナを押し出して美結と対面させ。
「美結。俺の恋人のユリナだ」
 紹介してみせる。
「え、っと……ユリナ・エメリーです。よろしくお願いします、美結さん」
 応えるように、ユリナも自己紹介をしてから丁寧に頭を下げた。ユリナに倣って美結も頭を下げる。それから、値踏みするようにじーっとユリナのことを見た。
「ちょーっと頼りなさそうな感じがするけど、お兄ちゃんが認めた人だもん。大丈夫だよねっ」
「こら、ユリナ! そういう言い方はしちゃいけないだろ?」
 発せられた失礼ともとれる言葉に竜斗が注意すると、
「えー、これでも祝福してるんだよ? ねっ、ユリナさん」
 子供らしく無邪気に美結が笑った。ユリナもくすくすと笑っているので、なんだか肩の力が抜けてしまった。
「ユリナさんのことも含めてさ。いろんな話してよ」
「ああ。いくらでもしてやるさ。ユリナの頼れるところだって教えてやるからな」
「え。そんなに私、頼りなさそうでしょうか……?」
 ユリナの自信なさげな声に、兄妹で顔を合わせて笑ってから。
 ずっと、ずっと、話し続けた。
 日が落ちて、月が上がって、花火の音が聞こえてきても、ずっと。