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25)稲場 繭(いなば・まゆ)

稲場 繭(いなば・まゆ)は、
まさか自分が出演すると思っていなかったので、
緊張しつつ、
エミリア・レンコート(えみりあ・れんこーと)とともに、
「トッドの部屋」にやってきた。
「と、とりあえず無難に終わらせようね」
「しっかりしなさい」
繭の肩を
エミリアがポンポンと叩く。

「こんにちは。はじめまして。
さっそくですが、
繭さんは、怪盗ミラクルコクーンをされているんですってね。
ご活動について、詳しくお聞かせ願えます?」
「え、ちょ、何でそのこと知って……。
じゃ、じゃなくて。
え、と、その情報は一体どこから……?」
(そ、そんな恥ずかしいことバラされたら外歩けなくなっちゃう!?)

「えー!?そうだったの!?」
テレサ・エーメンス(てれさ・えーめんす)の驚きに、
繭が慌てる。
「いえ、その、これはあくまで噂であって、事実ではないというかですね、
……ひとまず、
『ミラクルコクーンは私ではない』という前提で話をしますね?
ほ、本当に私じゃないんですからね!?」
「そうなの?
では、詳しく伺えます?」
「えっと、【怪盗ミラクルコクーン】と【怪盗マジカルエミリー】は
正義の美少女怪盗ということになってます。
マジカルエミリーがそう言ってるだけで
ミラクルコクーンは別にそういう主張をしてるわけではないんですが。
活動を開始したのは一昨年のハロウィンですね。
それから何度か活動を続けてます。
とはいっても成果は殆どないんですけど……毎回恥ずかしい格好で名乗りを上げて、
適当に騒いだら逃げるというかんじで……
本当、恥ずかしいですよね、うん」
繭がうなだれる。
「知らない人のために基本知識として
美少女怪盗マジカルエミリーとミラクルコクーンについて説明しとこうかしら。
美少女二人組の怪盗で、
マジカルエミリーがへそだし水着で雷使い、
ミラクルコクーンがスク水で炎使いね。
特にミラクルコクーンなんかは格好から『スク水仮面』とかなんとか言われてるわ。
個人的には可愛くない名前だから好きじゃないんだけど」
エミリアが視聴者に向かって言う。
「……あ、そうそう!一つだけいいことありましたよ!」
繭がすぐに、手を叩く。
「以前美緒さんのペンダントが別の怪盗に狙われたことがあったんですけど、
それを善意の協力者に伝えて守ってもらったんです。
大切な思い出のあるものは、盗んじゃいけないっていうしっかりとした理念があるんです!
……というわけで、あまり目立った活動はしてないけど
悪いことをしてるわけじゃないってところですかね」
「ずいぶん、お詳しいんですね。
まるでご自分のことみたいに……」
「あ、私じゃないですからね!?
そんな恥ずかしい格好できませんからね!?」
エミリアが助け舟を出す。
「あ、彼女たちの正体は謎。これ重要ね?
正体を暴こうとするのは
遊園地のマスコットに中の人がいるって言うのと同じぐらいの重罪だから」
にっこり笑うエミリアは、トッドさんに、
「繭をいじっていいのは誰だけなのか、わかってるわよね?」と視線だけで告げた。
「では、そういうことで、次の質問いきましょうか」
トッドさんの言葉に、繭が胸をなでおろす。
「百合園女学院に在籍する皆さんへ、
宇都宮 祥子(うつのみや・さちこ)さんからの質問です。

あなたにとって百合園女学院の校長、桜井静香様をどのように思っていますか?
また、そのパートナーであるラズィーヤ・ヴァイシャリー様をどのように思っていますか?
一寸曖昧なので補足すると、
公人、或は私人としての静香様やラズィーヤ様をどう思ってるか、ですね」

「どちらも素敵な人ですよね。
静香様は辛い中がんばってますし、ラズィーヤ様は頭がよくて、美人ですし。
二人がいるからこその百合園女学院だと思います」
「なるほど、
お二人は愛されていらっしゃるのね」
「はい」
繭はにこやかにうなずいた。
「では最後に、
渋井 誠治さんから。

好きな食べ物は何ですか?
割とありがちな質問だけど、番組の中で時間があれば答えてくれると嬉しいな。
出身地が違うと食文化も違うだろうし、皆がどんなものが好きなのかちょっと気になったんだ。
パラミタだと地球の料理はなかなか食べられないかもしれないけど、
ここでアピールしておけば空京で流行っていつでも食べれるようになるかもよ?
なーんてね」

「子どもっぽいですけど甘いものが好きですかね。
ケーキなどは自分で作ったりしますよ」
「まあ、女の子らしくて素敵なご趣味ね」

こうして、その後はほのぼのした会話に終始し、
なんとか無事終了させる繭であった。