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【冬季ろくりんピック】激突!! フラッグ争奪雪合戦バトル!

リアクション公開中!

【冬季ろくりんピック】激突!! フラッグ争奪雪合戦バトル!

リアクション


〜序盤戦〜


○C1地点

『さぁ、競技開始と同時に駆け出す西シャンバラチーム。最初に大きな動きを見せるのは誰かな?』
 篁 雪乃の声と同時にカメラが西シャンバラチームの動きを捉える。カメラが注目したのはその中でスタート地点から動く気配を見せない、アレーティア・クレイス(あれーてぃあ・くれいす)だった。
「ふふふ……ルール違反ぎりぎりかもしれんが、特に書かれていなかったんでの。ルールの隙間を突かせてもらうとするかの」
『お〜っと! アレーティア選手の所に何か走って来た〜!』
『あれはイコプラネ』
「その通りじゃ。その名も羅刹王。こやつもルール上は『物』扱いであろう? つまり、羅刹王に雪玉を持たせて式神の術で操れば、被弾してもアウトにならぬ強力なアタッカーが生まれるという寸法じゃ」
『えぇっ!? そんなのってアリなの?』
『アリかナシかで言えば、アリと言えるワヨ。ルールでは物を使って雪玉を飛ばす行為は認められているからネ』
 キャンディス・ブルーバーグ(きゃんでぃす・ぶるーばーぐ)がルールブックを開くまでも無く、さらりと説明をする。
「そうじゃろうそうじゃろう。さぁ羅刹王よ、この雪玉製造用のグローブを着け、機神の如き働きを――」
『あ、それはダメヨ』
「何じゃと!?」
『本当だ。ルールブックには、選手が専用のグローブを着け、それによって製造した雪玉でないと直接攻撃の権利を得る事は出来ないって書いてあるね』
『つまり、今そこにある雪玉が無くなったら、味方から分けてもらうか一度この地点までイコプラを戻って来させないとダメって事ネ』
「く……玉切れの度に戻していたら試合が終わってしまうではないか……!」
 がっくりと膝をつくアレーティア。そこに手を差し伸べたのはジュディ・ディライド(じゅでぃ・でぃらいど)だった。
「仕方無いのぅ。我がその羅刹王とやらの補給役を買って出ようでは無いか」
「それは助かるが……良いのか?」
「あぁ、気にしなくてえぇよ。ジュディは元々サポート役やし」
 七枷 陣(ななかせ・じん)が雪玉を数個抱えながら言う。どうやらこの二人は陣が攻撃役、ジュディが補給役と役割を分担して当たるつもりらしかった。
「そういう事じゃ。我の補給なら気力−10も、収容から再出撃までの1ターンのロスも、ましてや母艦から出る時にP武器しか使えないなどという事も無いぞ?」
「むぅ、それは魅力じゃ。気力が下がってしまうのは一大事じゃからな」
 ジュディとアレーティア、二人ががっしりと手を握る。今ここに、新たなコンビネーションが生まれようとしていた。
「いや二人共、メタらんでえぇから」


○A1地点

「旗は1ポイントが四か所、2ポイントも四か所、3ポイントが三か所。合計で21ポイントか……つまり、最低でも11ポイント取らないと勝てない訳だ」
「全ての旗をどちらかが取ったという仮定になるから実際にはそれ以下で決着が着くかもしれないが……ボーダーとしてそこを見ておいた方が良いな」
「最初に両陣営に5ポイント。それを守りつつ残りの6ポイントを稼ぐなら、中央だけじゃなくて小さい所も忘れずに取っていかないといけないな」
 西シャンバラチームのうち、左翼へと走り出した面々。先頭に立つ氷室 カイ(ひむろ・かい)橘 恭司(たちばな・きょうじ)柚木 桂輔(ゆずき・けいすけ)の三人は1ポイントの旗が立つA1地点へと迫ろうとしていた。
 彼らの後ろには同じように走る選手達が。その中の一人、サー・ベディヴィア(さー・べでぃびあ)が速度を上げてカイの隣へと並んだ。
「マスター、こちらは我々だけでも十分だと思われます。マスターは当初の予定通り、A3ポイントへ」
「そうだな……分かった。こちらは任せる」
 カイを始めとした、A3地点を目指す選手達が進路を斜めに曲げて少しずつ遠ざかる。残ったベディヴィア、恭司、桂輔はそのまま真っ直ぐに進んで行った。

 両者の分岐点、少し遅れて九条 ジェライザ・ローズ(くじょう・じぇらいざろーず)九条 レオン(くじょう・れおん)斑目 カンナ(まだらめ・かんな)の三人が走っていた。カンナはレオンを背負いながら、不満をつぶやいている。
「こんな事してる暇があるなら演奏の練習していたいってのに、何であたしが……」
「西シャンバラチームの為に私達も頑張らないとねぇ。それにほら、たまにはこういう機会があってもいいだろうし」
 ローズがこの雪合戦に参加した理由、それは今の言葉通り西側に貢献するという事が一つ。そしてもう一つとしてカンナとの親睦を深める事にあった。
「……ふん、大体、あたしはこんな事慣れてないし、そもそもやる気ないの」
 だが、カンナの方はローズとは違い、歩み寄る姿勢を見せない。その雰囲気を察知したのか、レオンが顔を覗かせた。
「ロゼとカンナ、けんか……?」
「別に……そんなんじゃ無いって。ただあたしは、どうせ何も出来ずに終わるだろうって」
「ん〜、カンナは何も出来ずに終わるって思うんだね。でも何事もやってみなければ分からないよ? ね、レオン?」
「うん! レオン、カンナと一緒に勝ちたい!」
「じゃあ三人で、それからチームの皆で、頑張ろう。さっき話した通り、私はこの先で待ってるから」
 二人に手を振り、カイ達が進んだ方へと向かうローズ。それを横目に、カンナは恭司達が向かったA1地点へと走って行った。
「そりゃあたしだって……やるからには勝ちたいと思ってるけどね」

「見つけた! あれがフラッグね!」
 A1地点へと到着したシエル・セアーズ(しえる・せあーず)が僅かに盛り上がっている場所の頂上を指差した。その先には『1』と描かれた灰色の旗が立っている。旗を見て、高天原 鈿女(たかまがはら・うずめ)が眼鏡をクイッと持ち上げた。
「得点は僅か1点……けど、自陣の横にある二か所を放置するのは無駄というものだわ。手早く獲得してしまいましょう」
「よ〜し! 皆、一気に行くよ! ストロベリーボールっ!」
 シエルの掛け声でその場にいる選手達が次々と雪玉を旗へと投げつけて行った。ちなみに参加者に配られたグローブの効果により、西シャンバラチームの選手が作った雪玉は赤く染まっている。
「旗が赤く染まった、って事はこれでまず1点か」
 桂輔が余した雪玉を手でもてあそびながらつぶやく。他にもその場で立ち止まる者達がいる中、恭司だけは速度を落とさずに皆を追い越して行った。
「それじゃあお先に。俺はこのまま攻めに回るんで後はよろしく」

『おーっと、橘 恭司選手、そのまま突撃して行ったー!』
『夏には二つの競技に出場してる選手ネ。今回はどういった活躍をしてくれるか、期待しまショ』
『その前に、得点を加算しておかないとね。え〜っと……』

 W−19 橘 恭司(たちばな・きょうじ)
 W−40 サー・ベディヴィア(さー・べでぃびあ)
 W−42 九条 レオン(くじょう・れおん)
 W−43 斑目 カンナ(まだらめ・かんな)
 W−52 シエル・セアーズ(しえる・せあーず)
 W−64 高天原 鈿女(たかまがはら・うずめ)
 W−71 柚木 桂輔(ゆずき・けいすけ)

 〜以上7名の攻撃により、1ポイント獲得!〜


○A5地点

「う〜っ、寒ぃなぁ……走ってりゃ少しはマシになるだろうけど」
 こちらは東シャンバラチームの右翼へと走り出した選手達。先頭のウルフィオナ・ガルム(うるふぃおな・がるむ)が上着越しに腕をさすりながらつぶやくと、少し後ろを走るミルディア・ディスティン(みるでぃあ・でぃすてぃん)が速度を上げて隣へと並んできた。
「そうそう、動き回れば寒さなんて忘れちゃうよ! 久々に全速全開、行っちゃおうかな!」
「随分元気だね。けど、アタシ達の最初の相手は敵じゃなくてフラッグだよ。な、レイナ?」
 ウルフィオナが振り返る。そこには淡々と走っているレイナ・ミルトリア(れいな・みるとりあ)がいた。
「そうですね……序盤はこちらでの動きは特に無いでしょう。気を付けるのは中盤以降……」
「そこからバーンとぶつかり合っちゃう訳だね。わはー♪」
 冷静なレイナに対し、並走するイシュタン・ルンクァークォン(いしゅたん・るんかーこん)は楽しそうだ。
「じゃあパパッと最初のフラッグを取らないとね。よーし、スピードアッ――」
「ま、待って下さい〜」
 更に速度を上げようとしたミルディア達へとかかる声。その声の主は彼女達の後方、やや遅れてついて来ているユリ・アンジートレイニー(ゆり・あんじーとれいにー)だった。その隣ではグラルダ・アマティー(ぐらるだ・あまてぃー)がユリを急かしている。
「ほら、もっと急ぎな! 遅れが出るとその分勝利が遠のくのよ」
「ふえぇ……ごめんなさいですぅ」
「……意外と面倒見が良いですね。あの方」
 レイナのつぶやきに、その場にいる全員が頷いていた。

 追い付いたユリ達を含めた六名は、A5地点にある旗の下へと到着していた。こちらもA1地点同様に『1』と描かれ、灰色をしている。
「これでまずは1点目なのですね。えっと、まずは雪玉を……」
 ユリが足下の雪をすくって手で固め、雪玉を造る。こちらは東シャンバラチームのカラーである、青色へと染まって行った。手頃な大きさとなった雪玉を持ち、ユリが旗へと向き直る。
「よい、しょっ……え〜い」
 へっぴり腰の下手投げ、そしてヘロヘロという音が似合う軌道で飛んで行った雪玉は旗から逸れて雪原に青い点を作った。
「……何でその距離で外すのよ。いいからあんたはすっこんでなさい」
「ふえぇ……本当にごめんなさいですぅ……」
 小さくなるユリに代わり、グラルダが雪玉を作り始める。しっかりと、固く、ギチギチに、ガチガチに。
「――って、いくら何でも固すぎねぇか、それ?」
「フラッグ相手なら問題無いわ」
「いやまぁ、確かにそうかもしれねぇけど」
 ウルフィオナが指摘している間にも固め続けた事で、グラルダの雪玉は最早氷の玉と言えるほどに固くなっていた。それを振りかぶり、思い切り旗へと叩きつける。
「おっしゃ! 次!」
「……え〜と、あれって」
「日頃のストレス発散、でしょうか」
 後ろでつぶやくミルディアとレイナ。青く染まって行く旗に向けて中指をおっ立てているグラルダの姿は――さて、乙女としてどうなんだろう?

「と、とにかくこれで1点獲得だね。イシュタン、相手チームは誰も来てないよね?」
「さすがにまだここまでは来ないねー。このまま前に出ちゃおうよ、ミルディ!」

『東シャンバラチームも旗をゲット!』
『この中ではミルディア・ディスティン選手が水球やバスケットボールの経験アリヨ。ボールを雪玉に変えてどんなプレーを見せてくれるのか期待デース』

 E−2  ユリ・アンジートレイニー(ゆり・あんじーとれいにー)
 E−16 ミルディア・ディスティン(みるでぃあ・でぃすてぃん)
 E−17 イシュタン・ルンクァークォン(いしゅたん・るんかーこん)
 E−20 レイナ・ミルトリア(れいな・みるとりあ)
 E−21 ウルフィオナ・ガルム(うるふぃおな・がるむ)
 E−37 グラルダ・アマティー(ぐらるだ・あまてぃー)

 〜以上6名の攻撃により、1ポイント獲得!〜