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【冬季ろくりんピック】激突!! フラッグ争奪雪合戦バトル!

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【冬季ろくりんピック】激突!! フラッグ争奪雪合戦バトル!

リアクション


〜序盤戦(3)〜


○B5地点

 スタート地点にて奇妙な光景があった。
「……本気ですか?」
「いいですよぅ。やってくださいですぅ」
 アルトリア・セイバー(あるとりあ・せいばー)の問いかけにルーシェリア・クレセント(るーしぇりあ・くれせんと)が答える。アルトリアはため息を一つつくと、ルーシェリアが乗り込んでいる自走式人間大砲のスイッチに手をかけた。
「……どうなっても知りませんからね?」


○A3地点

「よし、俺達の方が先に着いたみたいだな」
 A1地点を目指していた選手達と別れた無限 大吾(むげん・だいご)はA3地点にある旗がまだ赤いままなのを見て安堵した。一緒に行動している篁 透矢(たかむら・とうや)が別ルートから走って来たセルマ・アリス(せるま・ありす)に気付く。
「セルマ、他の皆は?」
「B3の方に。そっちは?」
「何人かはA1の旗を取りに行ったよ。それ以外は今こっちに向かってる所だ」
「透矢くん、セルマくん、向こうの姿が見えたぞ。旗を守ろう」
 大吾が二人の目を相手チーム側へと向ける。見ると、A4とB3双方から東チームの選手達がやって来るのが見えた。

 その頃、A4地点ではユノ・フェティダ(ゆの・ふぇてぃだ)が雪玉を作り終えていた。
「よ〜し、このくらいでいいかな。後は……」
 足下に置いた雪玉に、先端をゴムのへと変えた矢を突き刺して行く。そうして出来た雪玉の矢を弓へと番え、遥か遠く、A3地点にはためく旗へと狙いを定めた。
「先手必勝! ホワイトロックシューター!!」

「――! 来るぞ!」
 A4方面から向かって来る東チームの後ろから何かが飛んで来るのを察知し、大吾が旗の前で盾を構えた。ユノの雪玉は大吾の盾に命中し、弾け飛ぶ。
「あ〜ん、邪魔されちゃった。でもまだまだあるからね。ここで決めちゃうんだもん」
 遠目に失敗した事を確認したユノが素早く周囲に突き立てた矢を手に取り、番える。次々に襲い掛かる矢を、西チームは大吾、透矢、セルマの三人が盾で防ぎ続けて行った。
「向こうも準備が良いな。連続して撃って来る」
「あぁ。けど攻撃は単独みたいだな。同時攻撃が無いのが幸いか」
「ならこのまま耐えて、後ろが合流してから反撃を――ん?」
「どうした、セルマくん?」
「何か右の方に見えたような……」
「右?」
 正面からの狙撃に注意しながら右に気を配る。するとこちらも遠方、B3方面の上空に一人の少女が飛んでいるのが見えた」

「見えました〜。狙いますですぅ」
『何とルーシェリア選手、大きく飛んでいる! ……何回も聞くけど、これってアリなの?』
 篁 雪乃キャンディス・ブルーバーグ(きゃんでぃす・ぶるーばーぐ)へと尋ねる。
『ルーシェリア選手は大砲から発射されたみたいだから、今の所はグレーという所ネ。このままなら良いけど、少しでも自力で飛ぶ素振りを見せたらその時点でアウトになるワヨ』
「飛びませんよ〜、このまま攻撃ですぅ」
 ルーシェリアが手持ちの雪玉を構え、思い切り投げる。狙いはユノの攻撃を正面で捉えている西チームに、横からアタックする事だった。

「横からか、マズイぞ!」
「分かってる、こっちは任せた!」
 正面の防御を大吾に任せ、透矢が旗の方へと走った。その間にもルーシェリアの放った雪玉が迫ってくる。
「三つか……!」
 連続して飛んで来る雪玉から旗を守る為、透矢は一つに盾を投げ、もう一つをグローブで殴って破壊した。そして最後の一つを――
「これは、仕方無いかな」
 ――足で破壊した。
『あちゃ、お兄――じゃなかった、透矢選手、アウト!』
「悪い、すぐに戻って来るから、大吾達で耐えててくれ」
「あぁ、任せてくれ。セルマくん、そっちは頼んだぞ!」
「了解!」
 透矢が時間稼ぎをした間にセルマが旗の前に陣取り、ルーシェリアからの以後の攻撃をシャットアウトする。そのまま二人は狙撃要員の玉が尽きるまで、旗を守り抜くのだった。

 W−78 篁 透矢(たかむら・とうや)

 アウト!

○A4地点
「残念でございましたね、ユノ様」
待機していた。クナイ・アヤシ(くない・あやし)が狙撃手のユノに語りかける。
「なーに、フラッグは取れなかったけど、“二人”は落とせたもん! 形成的にあたしたち東チームが優勢じゃないかな」
 ユノは最後の雪玉で、西チームの防御をもう一人崩すことが出来た。

――A3地点
『セルマ選手、アウト!』
「ごめん、大吾! 抜けちまった」
 セルマがもう一人の防御要員に謝る。空中から飛来する雪玉に対し、盾を構えてフラッグを守っていたものの、A4地点から来る脇からの狙撃に対して、反応が遅れてしまったのだ。
「大丈夫だ、マルセくん。ここは十分に防いだ。不意な狙撃はもうきていない。後は俺に任せて早めにリスタートを決めてくれ」
 大吾がマルセを諭す。
「わかった、すぐに戻ってくる」
 マルセは頷くと、リスタート地点へと向かった。
 しかし、結果的に西チームはA3地点のフラッグを死守することが出来た。



○B3地点

「う〜ん、フラッグに当てられませんでしたねぇ。でも透矢さんに当たったから良かったですぅ」
 雪玉を全て投げつくしたルーシェリアがつぶやいた。彼女はそのまま勢いに任せて降下して行く。
「飛んじゃダメですからちゃんと下りないといけないですねぇ」
 下は雪。B5地点から撃ち出されたとは言ってもそれほど酷い事にはならないだろう。そうルーシェリアは考えていた。着地してすぐ行動出来るよう、体勢を整えて地上へ――
「はぷっ!?」
『ルーシェリア選手、埋まったー!』
『あれだけ勢いがあったら当然ネ』
『と言うか、雪が積もりっぱなしの所に飛び降りたら結構埋まるんだよね』
「うぅ、着地失敗ですぅ……あら?」
 何とか這い出てきたルーシェリア。その前に雪だるまが姿を現す。
「可愛いですねぇ〜。結構小さいですけど、誰が作ったんでしょう、この赤……い……?」
 雪だるまは赤い色をしていた。つまり――
「蒼空学園の総大将(自称)ラブちゃん参上〜!」
「雪だるまじゃなくて雪玉でした〜!?」
 雪だるまの背後に隠れていたラブ・リトル(らぶ・りとる)が重ねていた雪玉の上をルーシェリアに向けて投げつけた。小さい身体から放たれる一撃とはいえ、至近距離かつ完全に埋まった穴から抜け出していなかったルーシェリアは避ける間もなく被弾してしまった。
「やった〜! あたしの作戦勝ちね! それじゃ、今のうちにっと」
 東西両チームの選手達が本格的にぶつかる前に、ラブが味方の下へと飛んで帰る。
「もっと高く飛べたら上から爆撃しようと思ったのにな〜。でもこれ以上高い所を飛んだらダメって言うから、仕方無いかぁ」

「やはり間に合いませんでしたか。無茶な事をします」
 自走式人間大砲で発射した後急いで後を追ってきたアルトリアが、リスタート地点へと帰って行くルーシェリアを乗せた小型飛空艇を見送りながらつぶやいた。
「仕方ありません、現有戦力で行くとしましょう。準備はよろしいですか?」
 アルトリアが一緒にやって来たチームメイトを見る。そちらではリリィ・クロウ(りりぃ・くろう)が味方にパワーブレスをかけている所だった。ナカヤノフ ウィキチェリカ(なかやのふ・うきちぇりか)が攻撃力の上昇を確かめるように手を開閉する。
「わたくしはA3へと参りますけど……大丈夫ですか?」
「向こうの方が多いから大変だと思うけどね〜。でも少しは相手をリスタート地点まで引きずり落としてあげるから!」
「そうですね。やってみれば意外と何とかなるかもしれませんし。では、失礼しますね」
 リリィがこの場から離脱して走り出す。残ったのはアルトリア、ウィキチェリカと、それからネージュ・フロゥ(ねーじゅ・ふろう)ジェニファ・モルガン(じぇにふぁ・もるがん)の四人だ。
「向こう、どのくらいいるかな?」
「ここが中間点である事を考慮するなら、単純に考えて戦力はわたくし達の倍かしらね」
「大変だよね……でも頑張らないと!」
 ネージュがよし、と気合を入れる。その瞬間、アルトリアが三人へと呼びかけた。
「皆さん、敵が来ました……残念ですが、ジェニファ殿の予測でほぼ正解のようです」
 四人の視線の先には西チームの選手達の姿があった。その数十人。先ほどルーシェリアを攻撃したラブが近くに残っているなら更に一人追加だ。

「いたのじゃ! やはりここが相手方との戦場となったか」
「四人……ですか。伏兵の気配もありませんわね」
 西チームの織田 信長(おだ・のぶなが)エリシア・ボック(えりしあ・ぼっく)が辺りを探りながら進軍する。後続の紫桜 遥遠(しざくら・ようえん)緋桜 遙遠(ひざくら・ようえん)も相手を捉えた。
「こちらの半分以下ですか。ヨウエン、どうしますか?」
「そうですね……皆さんがいれば勝てると思いますので、今のうちにヨウエン達は雪玉造りをしていましょうか」
「ここを落とせたなら次は敵寄りの場所ですからね。ここで準備をしておいた方が良さそうです」
「えぇ、万が一こちらが劣勢になったら加勢するとしましょう……多分必要無いと思いますが」
 二人がやや下がり気味に位置し、その場で雪玉を作り始めた。変わって前線へと踊り出たのはマグナ・ジ・アース(まぐな・じあーす)近衛 栞(このえ・しおり)だ。
「栞、フラッグの獲得は味方に任せる。俺達は敵対勢力の排除に専念するぞ」
「分かりました、マグナさん」
「よし、では……先手を取らせてもらう!」
 マグナと栞、二人が攻撃を始めた。対する東チームは防御役であるアルトリアがバックラーを構えながら動き回る。
「くっ……防御一辺倒では為す術も無く負けてしまいそうですね」
「そうね、こちらから攻めないと。ウィキチェリカさん、起点をお願い出来るかしら?」
「あたしに任せて! 氷雪の精霊が伊達じゃないって所、見せてあげる!」
 ジェニファの要請に従い、ウィキチェリカがブリザードを唱えた。たちまち東西両チームの間に吹雪が生まれる。地面が踏み固められていないサラサラな雪の為、それらを巻き込んだ猛吹雪だ。
「あらら……マグナさん、これでは向こうまで届かないですね」
「心配するな。ならば俺のこの身体で……」
 マグナが手を突き、足下の雪を掬い取る。それを体重と力を籠めて固めては雪を付け、また力を籠めては固めるといった事を繰り返すうち、雪玉は凝縮されて氷玉と言えるほどまでに固くなった。
「まるで氷山を投げるようだが……まぁ大丈夫だろうな。契約者なら」
 そのままマグナは氷の塊を振りかぶり――
「ふんっ!」
 投げた。思い切り。勢いに乗った塊は猛吹雪を突き破り、ウィキチェリカのすぐそばへと着弾した。

 同じ頃、隣のB2地点では宇都宮 祥子(うつのみや・さちこ)瀬山 裕輝(せやま・ひろき)は遠くからB3地点の東チームを狙い撃とうとしていた。
「結構派手にやってるわね、前線は。だからこそ狙い目ではあるけど」
「そうやな。今のうちに準備して、と……」
 しゃがみ込んで雪玉を造る二人。
「あら? 今雪玉に何かした?」
「ん〜、ちょいとな。まぁこのくらいは大丈夫やろ……向こうも契約者やし」
 先ほどのマグナと同じような事を言いながら雪玉を造り上げる裕輝。出来上がったのは外見上は特に変化の無い雪玉だった。
「? ならいいのだけど。それじゃあ援護射撃、行きましょうか」
「ほいほい、北の大地からメジャーに行った同郷のピッチャーみたいに……っと」
 祥子と裕輝、二人が雪玉を投げる。それらは一気に前線へと飛んで行った。

「わっと! 危ないなぁ」
 マグナの雪玉を避けたウィキチェリカ。その横からジェニファとネージュが反撃の用意を整えていた。
「出来るだけ隙を失くすわ。ウィキチェリカさん、わたくし達が投げる一瞬だけ吹雪を止めて頂戴」
「オッケー! その代わり二人共、攻撃よろしくね!」
「うん! いっくよ〜!」
 ネージュの合図と共にウィキチェリカがブリザードを止める。次の瞬間、ネージュとジェニファの攻撃がマグナと栞へと襲い掛かった。
「ぬ……!」
「あっ」
『東チームの攻撃が決まった! マグナ選手と栞選手、アウトー!』
「……油断しましたね、マグナさん」
「うむ。それと、一撃死のルールではやはり体格が災いしたか。仕方あるまい、一度リスタート地点に向かうとしよう」
 被弾した二人が後ろに下がる。それと同時にウィキチェリカが再びブリザードの詠唱を始めた。
「ナイス攻撃! もう一度吹雪の壁を――」
 が、詠唱を妨害するように二発の雪玉が飛んできた。祥子達の放った攻撃は詠唱に集中していたウィキチェリカに見事に命中する。
「はぐぁっ!?」
『お〜っと! ウィキチェリカ選手、大きく吹き飛んだー!?』
『これは物凄い威力ネ。見事な攻撃ダワ』
『……あれ? 何か様子がおかしいよ?』
 雪乃の疑問を解明するかのようにカメラが倒れたウィキチェリカへと近付く。そして彼女と共に、当たって壊れた雪玉が画面に映った。
『! あれは石ヨ! 今の攻撃は反則球ネ!』
『反則!?』
『そうヨ! 雪玉の中に石を入れる事、これはジュネーブ協約違反ヨ!』
『じゅね……?』
『トニカク! 今のアウトは無効になるワネ』
『本当にそうなのかな? え〜っと、運営本部の判定は……あ、反則! 反則だって! ウィキチェリカ選手のアウトは取り消しだよ!』

「……石って、あなたねぇ……」
「ありゃ、やっぱダメやったか」
 頬を掻きながら隠し持っていた石を捨てる裕輝。それを祥子は呆れた表情で見るのだった。

「あたたた……目の前の皆は悪く無いって分かってるんだけど……ちょっとお返しさせてもらおうかな!」
 立ち上がったウィキチェリカがおもむろに雪を固め始めた。リリィに強化してもらった力に加え、封印解凍の力を上乗せしてマグナのような氷に近い雪玉を完成させる。
「いっけぇぇぇ!」
「おっと!」
 ウィキチェリカの渾身の一撃は戦部 小次郎(いくさべ・こじろう)へと飛んで行った。幸い彼は防御に専念していた為、盾で受け止める事に成功している。
「ここで押さないとね。攻めるわよ、ネージュさん」
「こっちが少ないからって油断しちゃ駄目だよ!」
「確かに油断できませんね……ですが、どれだけ猛攻を受けようが、私の後ろへは攻撃させませんよ」
 更なる東チームの攻撃を小次郎が受け続ける。それだけでは無く、攻撃は同じく防御役のエリシアへと襲い掛かっていた。
「ノーン、わたくしの後ろへ。今のうちに反撃の準備をなさい」
「うん、おねーちゃん!」
 ノーン・クリスタリア(のーん・くりすたりあ)をかばいながらエリシアが前へと進む。だが、今回の為に敢えて透明なポリカーボネート製の盾を用意し、前方の視界を確保していた小次郎が相手の不意打ちに気付いた。
「エリシア殿、上です!」
「え?」
「遅いよ! 奈落の鉄鎖!」
「あっ!」
 忠告も僅かに間に合わず、ジェニファ達が前面に立っている間にウィキチェリカが上に投げた雪玉を操り、エリシアの頭へと命中させた。
「くっ、やられましたわ……ですが、向こうの中心が彼女だという事は分かりましたわ……ノーン!」
「うん! わたしも氷結の精霊だもん、あの娘には負けないよー!」
 エリシアの合図でノーンが盾から顔を出し、素早く雪玉を投げる。それは真っ直ぐウィキチェリカの下へと飛び、エリシアへの奇襲に集中していた彼女にお返しとなる一撃を与えた。
『西チームのエリシア選手、そして東チームのウィキチェリカ選手がアウト!』
『これは……決まったワネ』
『と言うと?』
『少数の東チームが互角の戦いをしていたのは、彼女の吹雪の力が大きいワ。それが無くなったら……』
「そういう事じゃ。寡兵で大軍を打ち破るのも戦の華じゃが、大軍こそが寡兵を蹂躙するのもまた戦」
「まぁこいつは勝負だからな。恨みっこ無しで行こうや」
 信長とラルク・アントゥルース(らるく・あんとぅるーす)がそれぞれ雪玉を造って東チームを囲んだ。信長は通常の雪玉を数多く、ラルクは大きな雪玉を片腕にたんまりと抱えている。
「……これは何と言いますか……多勢に無勢ですね」
 アルトリアが申し訳程度にバックラーを構える。だがこれは信念のやり取りをする戦いではなく、あくまで競技。一発喰らえばアウトという状況でこれ以上の戦局の打開は難しかった。
「さぁ参るぞ……覚悟!」
 信長の号令で西チームが一斉攻撃をかける。この猛攻を避けきる事はさすがに出来ず、東チームは全員がアウトとなってしまうのだった。

 W−20 エリシア・ボック(えりしあ・ぼっく)
 W−74 マグナ・ジ・アース(まぐな・じあーす)
 W−75 近衛 栞(このえ・しおり)
 E−18 ジェニファ・モルガン(じぇにふぁ・もるがん)
 E−26 ナカヤノフ ウィキチェリカ(なかやのふ・うきちぇりか)
 E−27 ネージュ・フロゥ(ねーじゅ・ふろう)
 E−32 ルーシェリア・クレセント(るーしぇりあ・くれせんと)
 E−33 アルトリア・セイバー(あるとりあ・せいばー)

 アウト!