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【冬季ろくりんピック】激突!! フラッグ争奪雪合戦バトル!

リアクション公開中!

【冬季ろくりんピック】激突!! フラッグ争奪雪合戦バトル!

リアクション


〜序盤戦(2)〜


○E1地点

「見つけたの〜、フラッグなの!」
「敵さんはいないみたいですにゃ〜」
 雪原に立つ旗を指差し、紫桜 瑠璃(しざくら・るり)神崎 瑠奈(かんざき・るな)が走り出した。二人の後方には白星 切札(しらほし・きりふだ)と、手を繋ぎながら歩く白星 カルテ(しらほし・かるて)がいる。
「ねぇママ、あのはたにゆきだまをあてればいいの?」
「えぇそうですよ。最後まで相手の人達に取られなければ私達に1点が入るんです」
「そうなんだ。じゃあワタシ、ゆきだまなげてくるね」
 カルテが切札から手を離し、前の二人を追う。それを微笑ましく眺める切札に夏侯 淵(かこう・えん)が話しかけてきた。
「ここだけ見ると、雪遊びをしに来た三人の子供達とその保護者だな」
「まぁ、カルテと私は本当にそうですけどね」
 四人の間違いではないか、という言葉を飲み込んでそう返す。実際の所、何故かこちらにやって来た者達はちびっ子軍団と言えるほど小柄な選手が揃っていた。例外は切札と、アルマ・ライラック(あるま・らいらっく)くらいだ。
「この地点は戦域としては後方、敵勢力との戦闘が行われる確率は低めとの予測結果が出ています。なのでこの構成であっても問題は無いでしょう。個人的にはその戦象の方が気になりますが」
 アルマが淵を見上げる。そう、『見上げる』だ。淵は戦象に乗った状態で雪合戦に参加していた。
「ルールとしてはあくまで飛行禁止とあるだけだからな。咎められてもいないから問題は無いだろう。何よりここからの景色は中々の物だぞ」
 更に淵の手にはデジタルビデオカメラが握られている。これで戦場を眺めながら、必要であれば別の場所にいるパートナー達に連絡をしようという訳だ。もっとも、フィールド自体決して狭い訳では無い上に角に位置しているのだから高さで補うにしても限界はあるが。

「攻撃準備完了です〜」
「せ〜の、どーん! なの!」
 淵達が話していると、瑠奈と瑠璃の声が聞こえてきた。どうやら三人で旗へのアタックを行ったらしく、色がこちらの赤へと変わっているのが見えた。
「ママ、ゆきだまなげてきたの」
「お疲れ様です、カルテ。良く頑張りましたね」
 切札が戻って来たカルテの頭を撫でる。カルテはあまり感情表現が豊かでは無いが、切札に対してだけは別らしく、嬉しそうにしているのが雰囲気から伝わって来た。
「では、次の行動を起こす前に少し相手側がどう出るか見極める為、少々待機しましょう」
「そうですねぇ〜。何して待ってようかにゃ〜」
 アルマと瑠奈が周囲に気を配りながら立つ。その間、瑠璃は足元の雪を丸めて遊び始めていた。
「雪合戦の玉にしては大きいですね。雪だるまでも作られるのですか?」
「そうなのー。兄様が、待ってる時は遊んでていいって言ってたからいっぱい造るのー!」
「なるほど。カルテ、私達も一緒に作って遊ぶとしましょうか」
「うん、ママといっしょにおーきなのつくるの」
 切札とカルテも加わり、雪だるまの頭と胴体を造る為に雪を転がし始めた。
「ふむ……これもある意味、競技の記録か」
 雪だるま作りに興じる三人を淵が撮影する。本格的に試合が動き始めるまでの間、この場所にはほのぼのとした空気が流れていた。

 W−11 紫桜 瑠璃(しざくら・るり)
 W−18 夏侯 淵(かこう・えん)
 W−53 神崎 瑠奈(かんざき・るな)
 W−65 白星 切札(しらほし・きりふだ)
 W−66 白星 カルテ(しらほし・かるて)
 W−72 アルマ・ライラック(あるま・らいらっく)

 〜以上6名の攻撃により、西シャンバラチーム、1ポイント獲得!〜


○E5地点

 再び東シャンバラチーム。こちらでは清泉 北都(いずみ・ほくと)シィシャ・グリムへイル(しぃしゃ・ぐりむへいる)が旗へと辿り着いていた。
「こっちには二人……ただ角の旗を取るだけだから、いい割り振りかな」
「…………」
 手早く旗に雪玉を投げ、得点を加える。北都の視線はそのまま次の、E3地点の方へと向いていた。
「最初からこちらの物で、しかも3ポイント。E3は死守しないとねぇ」
「…………」
「……お姉さん、どうかした?」
 半ば独り言でもあったが、全く反応を見せないシィシャが気になった北都が振り返った。その視線を受けてもなお無表情のままのシィシャ。僅かな沈黙ののち、開かれた彼女の口から発せられた言葉は――
「お腹が空きました」
「…………」
 ――今度は北都が無言になる番だった。

 E−8  清泉 北都(いずみ・ほくと)
 E−38 シィシャ・グリムへイル(しぃしゃ・ぐりむへいる)

 〜以上2名の攻撃により、東シャンバラチーム、1ポイント獲得!〜


○E3地点

「よーし、一番乗りっ!」
 東チームのカレン・クレスティア(かれん・くれすてぃあ)がE3と書かれたエリアへと辿り着いた。この場所は放送席の目の前、そして応援席にも多くの者達が集まっている所だ。
「皆ー! 東シャンバラチームを応援してねー!」
『おーっと、カレン選手が突然のアピール! こっちに手を振ってるよ!』
「いいっスよカレンさん! 凄く目立ってるっス!」
 応援席の火口 敦(ひぐち・あつし)が身を乗り出す勢いで手を振り返し、それにまたカレンが手を振り返す。そんな所にようやくジュレール・リーヴェンディ(じゅれーる・りーべんでぃ)が追い付いてきた。
「カレン、士気を高めるのは良いが、少し遊び過ぎではないか? 我らは人数的に劣勢、このフラッグを死守する以上の余裕は無いと思うのだが」
「余裕が無いからこそこうやって盛り上げてるんだよ! 場の雰囲気ってのは結構勝敗に絡むんだから」
「とは言えそれを最優先にするというのはな。せめて敵の接近に備えてからの方が良いのではないか?」
「大丈夫大丈夫。ボク達だってやっと着いたんだから、向こうだってまだ――」
 その時、西陣営の方向から雪玉が飛んできた。応援席とジュレールに気が向いていたカレンはそれを思い切り喰らってしまう。
「うひゃっ!?」
『カレン選手に雪玉が命中! 雪玉の色は赤! 西シャンバラチームの奇襲が決まったー!』
 篁 雪乃の声がフィールドに響く。その声を聞きながら、E2地点にいるドクター・バベル(どくたー・ばべる)はガッツポーズを決めた。
「よしっ、命中! ノア、次弾発射するぞ!」
「了解した、ドクター」
 E3地点に進入していたノア・ヨタヨクト(のあ・よたよくと)が手持ちのコンパスなどを利用して東チームのメンバーがいる位置を計算、その情報をバベルへと伝える。
「ふふっ、この天才が加入した事でチームの勝率は85%まで上がっているのだ!」
 情報を受け取ったバベルが従者の算術士を通じて軌道を計算、空へ向けて次々と雪玉を発射した。それらは放物線を描いて、E3地点へと飛んで行く。
「わわっ!? フラッグを守らないと!」
 東チームのマーク・モルガン(まーく・もるがん)が旗へと走り出す。それをサポートする形でパッフェル・シャウラ(ぱっふぇる・しゃうら)が星銃パワーランチャーを構えた。
「撃ち落とす……そこ」
 パッフェルの狙撃でバベルの雪玉が次々と破壊される。特に旗の方へ飛んだ雪玉は全て墜とされる念の入りようだった。
「ん〜、さすがだねぇ。でも、足下がお留守なんじゃないかな」
「――!」
 飛来する雪玉をあらかた墜とし終えた時、近くから男の声が聞こえた。パッフェルが視線を下ろすと、西チームの選手、永井 託(ながい・たく)が一気に加速してこちらへと迫ってくるのが見えた。
「おっと、もう遅いよ、っと」
 パッフェルが星銃パワーランチャーを向けるが、直接攻撃は禁止なので撃つ訳には行かない。その僅かな隙を狙って託が雪玉を投げつけた。
 迎撃を止め、回避するパッフェル。だが、託は更に風術で雪玉を強引に捻じ曲げた。軌道を変えられた雪玉がパッフェルの背中へと当たる。
「これで二人アウト。出来れば旗を取っておきたかったけど、一旦仕切り直しかねぇ」
 反撃を避け、E3地点へと向かっている味方の所へと退いて行く託。ジュレールは彼の姿が見えなくなった事でようやく迎撃の手を止めた。
「全く……だから油断するなと」
「ごめん〜。すぐ戻ってくるからそれまでお願い!」
 ジュレールの呆れた視線を受けながら、カレンがリスタート者を運ぶ為に降りて来た小型飛空艇へと乗り込む。
「あ、皆も東シャンバラチームの応援、よろしくねー!」
「分かったっス! 早く戻って来るっスよ!」
 飛空艇が飛び立つ際にも、敦達観客へのアピールを忘れないカレンだった。

 E−12 カレン・クレスティア(かれん・くれすてぃあ)
 E−39 パッフェル・シャウラ(ぱっふぇる・しゃうら)

 アウト!


○D3地点

「……おいおい、何だありゃ」
 D3地点へと辿り着いたカセイノ・リトルグレイ(かせいの・りとるぐれい)は相手選手を見上げて茫然としていた。
「ガオォォォォン!!」
 対する相手は龍心機 ドラゴランダー(りゅうじんき・どらごらんだー)。10mではきかないレベルの巨体だ。横にはやはり数m規模となる雪の塊が置かれている。それを見て白銀 昶(しろがね・あきら)がカセイノへと話しかけた。
「あの横の奴って、やっぱ雪玉だよな?」
「だろうな、赤くなってるし」
「どうやって攻撃してくると思う?」
「そりゃあ――」

「ガオォォォォォン!!!!」

「普通に投げてくるんじゃねぇか!?」
「だよなぁ!!」
 ドラゴンライダーが巨大な雪玉を放り投げた。カセイノと昶の二人は当然の如く着弾点から逃げ出す。
「まずはあいつを何とかしねぇとな。カセイノ、オレが囮になる。その間に近づいてやっちまえ!」
「分かった、こっちは任せるぜ」
 東チームの二人が逆方向へと動き出す。ドラゴンライダーがそのうち、こちらの隙を窺っている昶へと狙いを定めた。
「ガオォォォン!」
「おっと!」
 サイズがサイズだけに迫力があるが、攻撃が単体であれば集中すれば避ける事は難しく無い。そうしているうちにカセイノが別方向から一気にドラゴンライダーへと近付いた。
「それだけデカけりゃ避けるのは無理だろ。喰らいなっ!」
「ガ、ガオォォン!?」
『ドラゴンライダー選手、アウト!』
 雪乃がコールをする。その間に昶は素早く旗へと雪玉を命中させ、青く染めた。
「よしっ! あとは――!?」
 得点を喜ぶ昶。だが、突然その動きが止まった。
「なっ、身体が重く……うわぁぁっ!?」
『あーっと!? 白銀 昶選手、押し潰されたー!!』
『ドラゴンライダー選手が被弾直前に放り投げていたみたいネ』
「昶!? 別に避けられねぇ玉じゃ無かったはずな――」
 巨大な雪玉の下敷きになった昶の所へ向かおうとするカセイノ。そこに、淡々とした声が聞こえた。
「玉自体に変化はありませんよ。昶自身に動かないで頂いただけです」
「! その声は――」
 今度はカセイノの身体が重くなった。振り返った彼目掛けて、普通サイズの赤い雪玉が飛んで来る。
「命中。これであなたもアウトですね」
「……ちっ、もう一人いたのか」
 視線の先には西チームの選手、アイビス・エメラルド(あいびす・えめらるど)が立っていた。どうやらドラゴンライダーの陰に隠れて隙を窺っていたらしい。動きを止めたのは奈落の鉄鎖という事だ。
「えぇ。一対二ではなく、二対二だったという事です。では、フラッグを奪還させてもらいます」
 アイビスの投げる玉が旗へと命中し、青から赤へと変わる。
 ――するとその瞬間、雪煙を上げながら接近してくる物が見えた。
「あれは……スノーモービル?」

「はーっはっは! 主戦場を駆ける華麗な騎兵! クロセル・ラインツァート(くろせる・らいんつぁーと)見参!!」
『クロセル選手、スノーモービルで現れたー! ……これってアリなの?』
『禁止されているのは他選手の手の届かない高さへの飛行だけで、地上用の乗り物は規制されてないワネ。E1地点にもいたデショ?』
「その通りっ! この姿は正当なもの! この俺の進撃を阻む事は出来ませんよ!」
 高笑いをしながらアイビスへと迫るクロセル。それに対し、アイビスは急いで雪玉を作って迎撃を行おうとした。
「接近速度が速い、ですが……!」
「おっと、アイスフィールドっ!」
 だが、クロセルは万全の状態だった。伸ばした左手から氷の盾を出し、雪玉を防ぐ。そしてアイビスの迎撃態勢が完全に整わないうちに射程範囲へと近付いた。
「こちらの弾数はたっぷりありますよ、遠慮せず受け取って下さい!」
 事前にスノーモービルへと積んでいた雪玉を連続で投げる。アイビスは何度か回避を試みたが、五発目を避けきれずにとうとう被弾してしまった。
「……二対二から二対三にされてしまいましたか。ともあれ、ここはルール通りにリスタート地点へ戻るしかないですね」

「助かったぜ。せっかく取ったのに、もう少しで奪われる所だった」
「はっはっは、イーシャンの同志として助け合うのは当然の事。では、このまま次へと向かうので、失礼!」
 旗を再び青色に染めたクロセルがカセイノに手を上げ、スノーモービルを発進させて行った。カセイノはそれを見送り、迎えの小型飛空艇が着陸するのを待つのだった。
「……あ、せっかくだからこいつをどけるの、手伝ってもらうべきだったか」
 そうつぶやく彼の視線の先には、昶を下敷きにした巨大な雪玉があった。

 W−50 アイビス・エメラルド(あいびす・えめらるど)
 W−63 龍心機 ドラゴランダー(りゅうじんき・どらごらんだー)
 E−11 白銀 昶(しろがね・あきら)
 E−25 カセイノ・リトルグレイ(かせいの・りとるぐれい)

 アウト!

 〜東シャンバラチーム、2ポイント獲得!〜