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リアクション
第6章 プレゼントを買いに
「次はこっちの店に入りますよぉ〜」
女の子が、青年の腕をぐいぐい引っ張って、ファンシーショップへと連れていく。
「はい……。校長、こういうの好きでしたっけ?」
青年――ザカコ・グーメル(ざかこ・ぐーめる)は、不思議に思いながら、女の子――エリザベート・ワルプルギス(えりざべーと・わるぷるぎす)に付き合って、お店に入っていく。
「可愛いですね。校長はこういうの欲しいのですか?」
「あってもいいですぅ。でも、今は、あげる分を選んでるんですぅ〜」
エリザベードは大切な人達にあげる分のプレゼントを選んでいるようだった。
ザカコも今日、エリザベートと一緒にこの空京の大型ショッピングセンターを訪れたのは、クリスマスプレゼントを選ぶためだ。
「このネックレスはアーデルさんに似合いそうですが、どう思いますか?」
ザカコがプレゼントを贈りたい相手は、アーデルハイトだ。
「いいんじゃないですかぁ〜」
エリザベートは見もしないで答える。
「そうですか……」
ザカコは苦笑して、ネックレスを戻す。
「ザカコ、これ可愛いですかぁ? 子供っぽすぎますかぁ?」
エリザベートがピンクのリボンがついたカチューシャを見せてきた。
「そうですね。校長と同じ年頃の女の子に似合いそうですね」
「そうですか〜。これはどうですかぁ? こっちは〜?」
エリザベートは次々に、アクセサリーを選んでザカコに意見を聞いてくる。
彼女が買い物を終えるまでは、ザカコの話は聞いてもらえなそうだった。
エリザベートの買い物が終わった後、お腹が空いたという彼女に、クレープを買ってあげてから。
「ネックレスも悪くはないと思いますけどぉ。嬉しいかどうかはわからないですぅ」
ようやく、ザカコは彼女の意見を聞くことが出来た。
「大ババ様のマントがくたびれているようですからぁ、マントをプレゼントするのも良いかもしれないですねぇ」
口の周りに生クリームをつけながらエリザベートはそう答えた。
「マントですか。好みもありますから、難しいですね……」
普段使ってもらえるものがいいかなと思いながら、ザカコはエリザベートと共に、マントを扱っている店を巡って留め具やマントを何点か選んでみた。
「パーティ前には帰りませんとね」
「主役は遅れて登場するものですから〜。遅れてもいいですけどぉ」
そんなことを言いながら、エリザベートは動物の形の装飾品や、マスコットを見ていた。
(校長の年齢を考えれば、普通だったら自分の家でクリスマスを迎えてるはずなんですよね……)
買ったプレゼントを大切そうに抱えているエリザベートを、ザカコは少し複雑そうな目で見つめた。
(普通ではないと言っても、まだ子供には変わりありませんし……)
せめて、今の『家』である、イルミンスールでエリザベートにも楽しんでもらいたい。
そう思いながら、ザカコは買い物を終えて。
「今年もイルミンスールに飾りつけをしてツリーにしましょうか」
微笑みかけて、帰路につく。
「メリークリスマス!」
帰り道。
こっそり買っておいた、お菓子をザカコはエリザベートに差し出した。
小さなツリーの形をしたキャンディだ。
それは、エリザベートが不思議そうに見ていたものだった。
「ん? パーティ用ですかぁ」
「いいえ、これは今年も一年立派に校長を務めた、校長へとプレゼントですよ」
「そうですか〜。貰っておきますぅ」
ほくほく笑顔で、エリザベートはザカコからのプレゼントを受け取った。
「校長も良いクリスマスを」
「勿論、キラキラにして、派手に楽しみますぅ〜」
普通の子供のような笑顔を、エリザベートはザカコに見せた。
ザカコも微笑んで、エリザベートと一緒にパーティの準備が進められているイルミンスールへと帰っていった。
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