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【2022クリスマス】聖なる時に

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【2022クリスマス】聖なる時に
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リアクション

 会場に入る前に、御神楽 陽太(みかぐら・ようた)御神楽 環菜(みかぐら・かんな)夫妻は、他の客と同じように、クロークで荷物を預けることにした。
「持って入りたいんだけど、仕方ないわね」
 環菜のそんな言葉が、陽太は凄く嬉しかった。
 というのも、環菜が今まで纏っていた高級なコートは、陽太からのクリスマスプレゼントだったから。
 環菜が使いやすいよう、似合うようにと陽太が細かな点まで気を配ってオーダーメイドしたものだった。
 プレゼントは今日の午前中に渡しており、環菜は迷わず、今日のデートにこのコートを着ていくことを選んだ。
「今日は空京に泊っていくんですし、また外に出る時来てくださいね」
 陽太がそう言うと。
「……荷物を預けるのが心配なのよ」
 環菜は僅かに照れてそう誤魔化した。

「あの辺りがいいわ」
 会場に入ると、環菜は隅の席の方へと歩き出す。
 会場は劇場型ではなくて、段差のないパーティ会場だった。
 白いテーブルと、刺繍の入った豪華な椅子が並べられてる。
「そうですね、出入り口から遠いですし、ゆっくり鑑賞できそうです」
 陽太は回り込んで先に環菜が座る席の側に着くと、椅子を引いて彼女を座らせてあげる。
「ありがとう」
 環菜は礼を言って腰かける。
 陽太は環菜の隣に腰かけて、コンサートの始まりを待った。
「こんにちは」
 隅の席に座っていても、環菜の元に挨拶に訪れる者がいた――。
 錦織百合子だった。
「こんにちは」
 環菜は愛想なく答える。
「こんにちは。素敵なドレスですね」
 その分、陽太が微笑みを浮かべ、百合子のドレスを褒めた。
「ありがとうございます。御神楽さん達も、素敵なお洋服ですわ」
 百合子は二人の服と、コンサートのプログラムについて軽く話をすると、次の要人と挨拶を交わす為に、去っていった。
「環菜は挨拶回りしなくて、いいのですか?」
「今日はいいわ。もうすぐ始まるし、ね」
「そうですね。あ、ドリンク戴いてきます。何がいいですか?」
「陽太と同じものでいいわ。でも、砂糖はなしで」
「わかりました」
 陽太はボーイに、アイスティーを2つ頼んだ。
 片方には砂糖を入れないで欲しいとの言葉を添えて。

 コンサートは厳かな雰囲気で始まった。
 古くからシャンバラに伝わる、名曲や。
 名のある音楽家が作曲した、心に響く曲が、次々に演奏されていく。
 環菜も陽太も演奏が始まってからは、何一つ言葉を発することなく、聞き入っていた。
(聞いたことのある曲でも、こういう場所で、生演奏で聞くと全く違う曲に聞こえます……)
 感嘆の息を漏らしながら、陽太は聞き入る。
 隣にいる環菜は目を閉じていた。
 勿論眠っているのではない。視界を閉ざして聞き入っているのだ。
 聞き入りながら、どちらからともなく2人は手を重ねる。
 互いの温もりを感じあいながら、共に音の世界を旅していく。

 一昨年は、環菜の病室で。
 去年は、ツァンダの自宅でクリスマスを愛しく過ごした2人は。
 今年は、コンサートを心行くまま楽しみ。
 夜にはロイヤルスイートルームで、情熱的な聖夜を過ごす――。