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リアクション
第9章 宮殿のコンサート
(うわあ、なんか場違いかも)
風馬 弾(ふうま・だん)は、シャンバラ宮殿の入口で、カチコチに固まっていた。
「いらっしゃいませ。パンフレットはこちらになります」
その隣で、パートナーのノエル・ニムラヴス(のえる・にむらゔす)は、訪れる人々に笑顔で声をかけている。
(ステージに立つわけじゃないのに、緊張してちゃダメだよね)
ふうと大きく深呼吸をして。
「いらっしゃいませ」
弾も来客に丁寧に頭を下げた。
弾とノエルは、宮殿の前でパンフレットや、携帯品の販売を担当させてもらっていた。
弾とノエルには家族がいないから。
学費を稼ぐために働かせてもらっているわけだけれど、それだけではなくて。
以前、ティセラにもらった。
『誰かに愛されることではなく、愛することを喜びに』
その言葉を、自分達なりに解釈して。
『クリスマスを楽しみに来た人達に笑顔になってもらうことや、他の人と一緒に働くことを喜びに変えて、がんばってみよう』
そう思って、今日と明日、2人は空京で働くことにしたのだ。
「会場はこちらになります」
「パンフレットをどうぞ」
訪れる人々は皆、貴族の様に見えた。
ドレスコードは、略礼装(平服)らしいが、場所が場所だけに、タキシードを纏った男性や、煌びやかなロングドレスを纏った女性の姿が多くみられた。
(あ、御神楽環菜さんだ)
(夫婦でご出席ですね)
(素敵だな……)
弾とノエルは目で会話をして、微笑み合った。
「パンフレットをどうぞ。プログラムはこちらです」
「どうぞごゆっくりお楽しみください」
弾とノエルは、御神楽 環菜(みかぐら・かんな)と、彼女の旦那である御神楽 陽太(みかぐら・ようた)に、パンフレットを手渡す。
「ありがとう」
「ありがとうございます。楽しませていただきますね」
環菜は素っ気なく、その分陽太が微笑んで2人に言って、2人は会場へと向かっていった。
「そういえば……カップル多いね」
「ええ、クリスマスですから」
ふと、弾の目に男性が女性の腰に手を回してエスコートする姿が入って。
なんだか恥ずかしくなって、弾はちょっと顔を赤らめた。
「皆さんにとって、素敵な時間になるといいですね」
そういったノエルも、僅かに赤くなっていた。
小さく頷き合って。
「いらっしゃいませ」
「会場はこちらになります」
2人は場の雰囲気に合わせた丁寧な口調、丁寧な挨拶で来客を迎えていく。
その日は、片付けまで手伝って。
次の日は、空京でお菓子の販売のアルバイトをして。
2人は人々の笑顔を自分達のクリスマスプレゼントにした。
〜帰り道〜
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