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レターズ・オブ・バレンタイン

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レターズ・オブ・バレンタイン
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リアクション

10)

水上の町アイールにて。
ルース・マキャフリー(るーす・まきゃふりー)は、
メルヴィア・聆珈(めるう゛ぃあ・れいか)を「デート」に連れ出していた。

「恋人としてのデートではなく、
父と娘のバレンタインデートを楽しみませんか?」
「父と娘……。
私は以前から言っているが」
「さあさあ、行きましょう!」
ルースは、反論しようとしたメルヴィアの手を取って、
街中へと繰り出した。

「お、おい」
「あまり、堅苦しく考えないでください。
父と娘が幼いころにするような、他愛もないお出かけだと考えていただければ」
ルースのやわらかな笑みに、
メルヴィアは肩をすくめた。
「しょうがないな。今日は付き合ってやろう」
「ふふ、ありがとうございます」
そう言って、ルースは、ファンシーショップへと向かった。

「わあ……」
かわいらしいぬいぐるみや、色とりどりの小物。
そこには、メルヴィアが好みそうな、
かわいらしいものがたくさんあった。
「何でも欲しいものを言ってください」
ルースは、胸を張り、ぽん、と手で叩いて見せた。
「いろいろ奢ってあげますよ。こう見えてそこそこお金は持ってるんです」
その仕草がおかしかったのか、メルヴィアは、
ふっと、小さく笑みを漏らした。
「わかった。では、お言葉に甘えるとしようか」
「光栄です」
メルヴィアは、小さな鳥のマスコットを手に取った。
「これは……鳥人型ギフトのマスコットですか?」
お世辞にもあまりかわいいとは言い難い。
つい、そう言いかけたルースだったが。
「かわいい」
メルヴィアが言ったので、あわてて口をふさいだ。
「これがいい。買ってくれるか?」
「もちろんいいですけど、もっと大きいのでなくていいんですか?」
「ああ、これがいいんだ」
メルヴィアがそういうので、ルースは、レジでマスコットをラッピングしてもらった。

そして、2人は、街を散策する。
お昼ごはんをおごったり、
休憩がてらお茶したり。
ルースとメルヴィアは、のんびりと、休日を過ごした。

「どうです、『お父さん』とのデートは楽しいでしょう?」
喫茶店でアイスコーヒーを片手に言ったルースに、
メルヴィアは、睨むような視線を向けた。
「別に、まだおまえのことを認めたわけじゃないからな」
「つれないお言葉ですね」
ルースが、眉を下げて見せる。
「だが……」
メルヴィアは、そんなルースに、紙包みを差し出した。
ピンクの包装紙に、黄色いリボン。
かわいらしくラッピングされた箱だった。
「これって?」
ルースが、目を見開き、メルヴィアを見つめる。
「言っておくが、義理だからな。
私も、奢られてばかりでは居心地が悪いというか……。
たいした意味はないんだからな!」
そう言ったメルヴィアの頬は、わずかに紅潮していた。
「あ……」
ルースは、腕で目元を覆った。
「ど、どうしたんだ」
「ありがとうございます!
感激で涙が……!
お父さんはうれしいです、メルヴィア!」
「だから、誰がお父さんだ!
義理チョコだって言ってるだろう!」
感激するルースに、メルヴィアが怒鳴る。

こうして、幸せなデート(?)は、
ルースの大切な思い出になったのだった。