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ゴチメイ隊が行く2 メイジー・クレイジー

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ゴチメイ隊が行く2 メイジー・クレイジー

リアクション

 
「男湯には、誰もいないのだ」
「男湯は白と。位置も先月から変化無しね」
 ジュレール・リーヴェンディ(じゅれーる・りーべんでぃ)から報告を受けたカレン・クレスティア(かれん・くれすてぃあ)は、先月号の月刊世界樹内部案内図にメモを書き示した。
「まったく、ゴチメイのリンちゃんはこのへんだと目星をつけてきたんだけど、外れだったかなあ」
「いないと、我が勝てないのだ」
 なぜか、べったりと厚化粧したジュレール・リーヴェンディが、カレン・クレスティアに言った。ヴァイシャリーでリン・ダージと出会ったときに、雪国ベアに二人ともおちび扱いされたために、自分の方が大人だとなんとしても証明したいらしいのだ。その結果が、この厚化粧である。
「そうは言っても、そういう行為自体がお子様なんだよねえ……」
 困ったもんだと、思わずカレン・クレスティアがつぶやいた。
「何か言ったか?」
「ううん、なんでもないよ」
 あわててカレン・クレスティアがごまかそうとしたとき、女湯の方から男女の悲鳴が聞こえてきた。
「行くわよ、ジュレ!」
 何事かと、二人は急いで隣にある女湯に駆けつけた。
「ああん、痴漢よー」
 裸のレロシャン・カプティアティがカレン・クレスティアに助けを求めてだきついてくる。
「大丈夫だった?」
「うん」
 カレン・クレスティアに聞かれて、涙目のレロシャン・カプティアティがうなずいた。
「ジュレ、そっちは?」
 一応、椿薫の方のことも心配して、カレン・クレスティアが訊ねた。
「大丈夫、女王の加護であろう。原型は保っておる」
「そんなものつついちゃいけません!」
 しっかりと視線は逸らさず、カレン・クレスティアはジュレール・リーヴェンディに注意した。
「とにかく、後は風紀委員に任せようよね」
 通報を受けて、すぐにアリアス・ジェイリルがやってきた。
「すぐに廃棄しますから、あなたたちはもう行っていいですよ」
 そう言うと、椿薫の方を見て一瞬フッと笑ってから、一緒に来た男子の風紀委員たちに運び出させる。
「ち、違う……。拙者は違う……んだ……」
 椿薫は必死に訴えたが、今は誰も聞いてくれなかった。
 
「もう、酷い目に遭ったです。厄落としに、一緒にお風呂入りなおしましょう」
 レロシャン・カプティアティに誘われて、カレン・クレスティアたちは地下の大浴場へと入っていった。
「ああ、いたのであるー」
 大風呂まで進んだジュレール・リーヴェンディが、リン・ダージを見つけて叫んだ。
「どっちが、大人か勝負である!」
「勝負って、その顔で?」
 突然指名されて、真っ正面から勝負を受けてたちかけたリン・ダージが、ジュレール・リーヴェンディの顔を指さして言った。
「なんのことである?」
 わけが分からないジュレール・リーヴェンディが、きょとんとした。
「カレン、いったいなんのこと……」
 振り返ったジュレール・リーヴェンディの顔のファンデーションやらマスカラやらその他化粧一式が、浴室の湿気を吸って脆くも崩れ始めている。なまじ、慣れない厚化粧で必要以上に塗りたくったのが災いしたようだ。たっぷりと空気中の水分を吸って、だらだらと流れ出し始めていた。
「ああ、もう、顔洗いましょ。早く!」
 ぽかんとするジュレール・リーヴェンディを小脇にかかえると、カレン・クレスティアはシャワーにむかって走った。
 
    ★    ★    ★
 
「やったー、念願のお風呂です」
 女湯の脱衣所に辿り着いて、ラズ・ヴィシャがほっと一息ついた。ぽいぽいと、邪魔なビキニを脱ぎ捨てる。
「あら、あの箱はなんでしょう」
 脱衣所の隅においてある大きな箱を指さして、アルダト・リリエンタールが誰にともなく訊ねた。
「どれどれ……」
 すでになけなしの服を脱ぎ終わってタオルを手にした羽高魅世瑠が、箱に書かれた文字に目をやる。
「スライム捨て箱……。なんだってえ、スライムだってえ!」
 そう叫ぶなり、羽高魅世瑠とフローレンス・モントゴメリーが悲鳴をあげて浴室へと逃げ出していった。後に残されたラズ・ヴィシャたちがあっけにとられる。
「スライムって、なんなんだ?」
 
「どいてどいてー」
 全力で脱衣所から逃げる羽高魅世瑠とフローレンス・モントゴメリーは、前を歩く小柄な人影にむかって叫んだ。なんだろうとその人物が振り返るすぐ横を、猛スピードで二人が駆け抜ける。
「は、裸のおねーちゃん!? なんで、そんなのが走ってるんだ?」
 自慢のリーゼントの形を突風で崩されそうになって、新田 実(にった・みのる)はあわてて両手で頭を押さえた。
 この大浴場は、水着着用か、脱衣所に備えてある入浴用の大判タオルを腰や身体に巻いて入るのが基本ルールのはずだ。だとしたら、いったい今のストリーキングの二人はなんだったんだろう。もしかして幻だろうか。
「変なおねーちゃんもいるもんだ。ああいうの、露出狂って言うのかなあ」
 ひとまずそれはおいておいて、新田実はチャイ・セイロンを捜した。魔法使いの先輩として、魔法関係の書の使い方を教えてもらおうと思っていたのだ。なんでも、読むことができれば魔力を増幅してくれる本らしいのだが、いかんせん、今の新田実の能力では本を開くことすらできない。何か方法があればと思うのだが。さすがに、こういうときは、魔法使いのえらい人に聞くしかなかった。とはいえ、イルミンの生徒では、何を今さらそんなことをということで教えてくれそうもなかい。そこへ、ちょうどタイミングよく今回の騒動である。なんとかチャイ・セイロンを見つけて助けてあげれば、お礼にいろいろ教えてくれるかもしれない。
「それで、あのときリンが失敗したので……」
「なによ、あのときはマサラのせいじゃないの」
 奥の方から聞き覚えのある声を聞いて、新田実は顔を輝かせた。ゴチメイたちの声だ。もしかしたら、チャイ・セイロンもそこにいるかもしれない。
「おーい、ちょっと教えてほしいんだけどさーあ……」
 足湯の道を抜けて洗い場へ出た新田実が、見つけたリン・ダージたちに声をかけた。
 とたんに、盛大な悲鳴と、かわいいという歓声があがる。
「なんで、女しかいないんだ……」
 思わず、新田実は絶句した。しかも、リン・ダージのように、何人かは平気ですっぽんぽんでいる。
「キミ、のぞきとはいい度胸だね。このボクが完膚無きまでにデストロイしてやろう」
 黄色い桶を手に取った桐生円が、酷薄な笑いを唇の端に浮かべながら言った。
「ちょ、ちょっと待って、ミーはのぞきなんかじゃ……」
「その格好で説得力なんかあるかあ!」
 桐生円が、ビシッと新田実を指さした。
 あらためて自分を見てみると、腰に巻いていたはずのタオルがない。たぶん、羽高魅世瑠たちとすれ違ったときに吹き飛ばされたのだろう。
「問答無用!」
 無数の桶が宙を舞った。
 
第9章 
 
『キンコンカンコーン。校内放送をお送りいたします』
 イルミンスール魔法学校内の放送用スピーカーから、一斉に狭山珠樹の声が流れた。
『――ええと、エリ……、いえ、校長、これでいいんですよね』
『うるさいですぅ。いいからさっさと放送するですぅ』
 カフがあげっぱなしになっているのか、後ろで打ち合わせしている声がだだもれだ。
『下校の時間になりました。皆さん、早く寮に帰りましょう。なお、時間になると、他校の生徒は強制的に学校外に出されますので御注意ください。繰り返します、下校の時間になりました……』
 
「なんだ、この放送は? まだ、みんな戻ってきていないんだけどなあ」
 困ったように、ココ・カンパーニュはペコ・フラワリーと顔を見合わせた。
「とにかく、ここで待たせていただくしか……」
 ペコが言い終わらないうちに、再び放送があった。
『つべこべ言わずに下校するですぅ。これ以上、世界樹をしっちゃかめっちゃかにするのは許さないですぅ。えーい!』
 大音声で、スピーカーからエリザベート・ワルプルギスの声が響き渡った。
「えーい?」
 なんのことだろうと、ココ・カンパーニュが思ったとたん、それは起こった。
「うぎゃあ」
 どさどさどさと、たくさんの生徒がエントランスに強制テレポートさせられてきたのだ。中には、入浴中だったのか、すっぽんぽんの生徒たちもいる。そのまま、一山いくらという状態で、生徒たちは折り重なるようにしてエントランスに倒れていた。
「なんだなんだ、いったい何が起こった。どうなってるんだ!?」
 状況を把握する間もなく、ココ・カンパーニュを始めとする他校の生徒たちは、今度は一斉にエントランスから外へとはじき出された。
 
 ぺっ!!
 
「せ、拙者は無実でござる……」
「全員、デストロイだあ!」
「御主人様はどこだ!?」
「もう、これはどこの組織の仕業?」
「えっ? あたし、何か悪いこと言った?」
「デートの途中だったのにぃ」
「だから、違うと言っているでしょう」
「セクハラじゃないの! あくまで愛情表現なのよ!」
「どういうことなの……」
「ココにいらっしゃいましたわあ!」
「まだ、てっぺんから下りてくる途中でしたのよ」
「私の自転車が……」
「とりあえず、お土産だけでも、少し持って帰りたかったじゃん!」
「眠い……」
「せっかくの、ペコさんとの語らいタイムを……」
「きゅうぅぅぅ、もうらめぇ」(V どりーむ・ほしの)
「どり〜むちゃんを、みちゃだめ〜」
「せっかくの冒険屋の初仕事がぁ〜」
「かわゆいのう、かわゆいのう」
「せっかく、夕焼けが綺麗だったのに……」
「これは、察知できませんでした。」
「大丈夫ですか、マイロード」
「きゃあ、ボクの服はどこですう」
「ああ、せっかく樹液を入れた小瓶があ……」
「一歩踏み出した覚えはないぜ」
「危険は降ってくるですよ」
「地図!」
「どこで違う子拾っちゃったんだ!?」
「やれやれ……」
「あらあらあら」
「ティータイムの途中に……。無粋ですね」
「せっかくのハーブが……」
「世界樹怖い、世界樹怖い……」
「スライム怖い、スライム怖い」
「せめてマントで隠さないと怒られる」
「いつも似たような格好ですし」
「入部届があ……」
「だから、カレー味がいいと言ったんデース」
「石田散薬さえあれば、このような……」
「ビデオ回せ、ビデオ!」
「さっき壊されたんだな」
「海賊はどこにいるんだ」
「とりあえず、信用はされたはず」
「重い……。いや、そんなこと言ってないのじゃ」
「まだ区画分けの途中であるというのに」
「じゃわ〜」
「カリン党に喧嘩売るたあ、いい度胸じゃねえか」
「俺の拳はまだ語っちゃいねえ」
「お風呂、どこ行ったんだもん!?」
「ねーさま、なんで私の顔に落書きを……」
「あら、人形の顔でしたはずなのに……」
「読んでいた本が……」
「星剣か。よく分からないな……」
「ゴチメイはあっちだよお」
「ボルトなくなっちゃったあ……」
「あーん、みんな無視していくんだもん」
「ふふふふふ、ぷにぷにぷに……」
「いいかげんに離れやがれー」
 もあ、何が何だかよく分からない。
「くそう、あの世界樹、ぺって言ったぞ、ぺって」
「あーん、寒いよー」
「あらあ、早く服を着ないと、めっですよ」
「リーダー、無事ですか」
「なんで、我までここに飛ばされる……」
「ああ、もう、撤退だ、撤退」
 わけが分からなくなって、ココ・カンパーニュは叫んだ。
 裸のまま、翼を広げたマサラ・アッサムとリン・ダージが、ジャワ・ディンブラの翼の影に隠れる。二人の服を手早く拾い集めてきたペコ・フラワリーとチャイ・セイロンが後に続いた。
「とりあえず撤収!」
 そう叫ぶココ・カンパーニュたちを乗せると、ジャワ・ディンブラが空に舞いあがった。
「また、なげっぱかよー!!」
 地上からは、そんな声が彼女たちを見送ったのだった。
 

担当マスターより

▼担当マスター

篠崎砂美

▼マスターコメント

 遅くなってすみません。
 家族から風邪をもらって寝込みました。さすがに自分は気をつけていても、周囲がぶっ倒れたのでは防ぎようがありません。気力で看病してましたが、さすがに自分が持ちませんでした。皆様も、風邪にはお気をつけください。
 
 今回の内容はシリアスあり、カオスありという、比較的情報量の多い話になりましたので、いつもにもまして手間がかかりました。
 本当は、もっと早くに公開する予定だったので、意図せず「ホワイトデーはぺったんこ」に関わってしまった方々には申し訳ありませんでした。アクション作成期間に食い込んでしまいました。
 いや、当然のごとく、該当キャラたちはそんなアクションはかけていなかったのですが、特定の場所で待ち構えていた大ババ様とスペアボディの部屋に入り込む可能性があるアクションで、かなりの特定条件(蒼空学園で貧乳ではなく女性でちゃめっけがあって迷子になった人)にすべて該当したのがわずかに一名だけだったため、白羽の矢があたってしまいました。すべてこちらの都合ですので御勘弁を。

 一応、早期に全員見つかっているので、クリアです。時間切れは失敗フラグではありませんので。
 
 次の「双拳の誓い2」では、アルディミアクや海賊側の細かい事情が提示される予定ですが、はたしてどの程度まで表に出てくることやら。アルディミアク側のメインキャラは四人ですから、うまく絡んでくださいませ。もちろん、偏ると、情報も偏りますので、ゴチメイの方の反応も大事だと言うことで。
 というわけで、「双拳の誓い2」は次回はキマク編です。その後の予定はちょっと変更になります。予定では、双拳のヒラニプラ編、タシガン編と続いていきますが、アクション次第で変化しますので、あくまでも予定です。
 
追記 誤字脱字修正。学校名ミスを修正。その他、読みやすくなるように細かい表現の修正。