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ゴチメイ隊が行く3 オートマチック・オールドマジック

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ゴチメイ隊が行く3 オートマチック・オールドマジック

リアクション

 
    ★    ★    ★
 
「メカ小ババ様が、大量に現れたって!? なんでいきなり」
 突如次々にもたらされた報告に、レン・オズワルドが困惑した。さんざん探してもなかなか出てこなかったのに、なぜ突然一斉に姿を現したのだろうか。
「やっぱ、メカ小ババ様の目的は破壊活動じゃのうて、データのハッキングのようやな」
 集めたデータを影野陽太と共にまとめつつ大久保泰輔が言った。
 前回のようにケーブルを囓って破壊していたのであれば、それは異常なのですぐに発見できていただろう。だが、今回は、最初から見つからないように活動していたと思われる。明らかに、誰かの意図的、計画的行動だ。おそらく、初期に発見された小ババ様は、接続できる端子を求めて移動中のものがたまさか目撃されたに違いない。
「それで、メカ小ババ様たちは何をしていたの?」
 ノア・セイブレムが訊ねる。
「それが、おそらくこのデータを狙ったっていうところまでは絞り込んだんですが……」
 影野陽太がちょっと言いよどんだ。
 アクセスが集中していたのは、空京周辺の気象データベースであった。天候や、雲海を流れる気流の詳細なデータなどだ。気流のデータなどは、最新の調査による特別なものであり、それを押さえれば効率のいい飛空艇のルートを選定できるし、空賊たちにも有利に立てるわけであるから、かなり重要なデータだと言える。とはいえ、差し障りのない部分は公開されているし、パラミタの命運を左右するほどの重要データというわけではない。セキュリティレベルも中程度といったところだ。気流以外の気象データも、パラミタの土地の特性や、そこに住む生物のだいたいの分布を把握するには役立つが、それがすぐに何かに繋がるとは思えない。
「ダミーじゃないのか。それを狙っていると見せかけて、真の目的を狙っているとか」
「あるいは、他のサーバーをハッキングするための踏み台にされただけかもしれへんがな」
 それはもっと調べなくては分からないと大久保泰輔が答えた。
「それで、メカ小ババ様はどうなりました?」
「少し前から一斉に姿を現して移動中らしい。どうも統制がとれていないというか、まるで、命令系統が潰されて混乱をきたした部隊のようだな。とりあえず、各自が捕獲を試みているみたいだが、捕まえると自爆するので、手を焼いているみたいだ」
 影野陽太の問いに、レン・オズワルドが答えた。
「いや、ちょっと待て、一斉に移動を始めたらしい。目的地は……校庭だ」
 今入ったメールを見て、レン・オズワルドが言った。
 
    ★    ★    ★
 
「何が起きてるの? 揉め事? 揉め事!?」
 慣れない衣装を着せられてストレスがたまっていたココ・カンパーニュが、撤収作業の手を休めて目をキラキラと輝かせた。何やら、テントのむこうから歓声とも悲鳴ともつかない声と爆発音が聞こえてくる。
「だめよ、お姉ちゃん。まだ、私たちの服返してもらってないんだから」
「くそう、あいつらどこに行きやがったあ」
 アルディミアク・ミトゥナに言われて、ココ・カンパーニュがバシンと拳を打ち合わせた。漆髪月夜たちが、ココ・カンパーニュたちの服を着たまま、まだ返しに来ていないのだ。
 少し離れたキッチンブースでは、洗い物もメイドの大切な仕事と、お食事勝負に参加したチャイ・セイロンたちが、流しでせわしなく働いている。
「とにかく、ペコたちの方を見に行こうよ。チャイたちの勝負は見る暇なかったんだから、それくらいいいだろう」
 そう言うと、ココ・カンパーニュはさっさと駆けだしていった。あっと言う間に先に進んで行ってしまう。
「しかたないわねえ」
 アルディミアク・ミトゥナはウィングシールドをつかむと、それに乗ってココ・カンパーニュの後を追いかけた。
 お掃除勝負が行われている場所に辿り着くと、そこでは倒れたメイドロボが爆発し、なぜか学ランを着てその場にいるシニストラ・ラウルスがセスタスを拳につけてペコ・フラワリーを見据えているところだった。
「危ない!」
 アルディミアク・ミトゥナが、とっさに自分が乗っていたウィングシールドをペコ・フラワリーの方へと押し出した。
 間一髪、受け取ったシールドでペコ・フラワリーがシニストラ・ラウルスの攻撃を受けとめる。
「これはまた、やっかいなのが来たわね。まっ、あの子たちがいたんだから、二人がいても当然かあ」
 ココ・カンパーニュの姿を見たデクステラ・サリクスが、キャアキャア言って逃げ回るのをあっさりとやめると、追いかけてくるカレーまみれの日堂真宵を遠当てで弾き飛ばして言った。
「お互い面白い格好してるけど。少し楽しみましょう」
 タンと地面を蹴って、デクステラ・サリクスがココ・カンパーニュに突っ込んでいった。
 
    ★    ★    ★
 
「駆除しちゃだめです。ちゃんと捕まえて保護しましょう」
「メカでもいい、自爆しなければ部屋に飾っておけるじゃないか!」
「でも、メカ小ババ様ではしょんぼりです」
「飴じゃ手なずけられなかったのか。メカ小ババ様だったから食べなかっただけなのか……?」
「こんにちはですぅ。逃げないで挨拶してくださあい」
「ほーら、磁石にくっつくんだもん」
「いや、素顔を隠しているからと言って、俺がメカ小ババ様を操っていたわけでは。し、信じてください。警備員室は嫌あー」
「破片だけでも拾って、分析を……」
「やっぱり、メイドコンテストと関連があるんじゃ。会場の方にむかって逃げて行くぞ!」
「見なさい。ちゃんと記念コインにつられて小ババ様は出てきたじゃないですか」
「だせー、本物の小ババ様をだせー。ちゃんとここに連れてきなさいよー!」
「弁償するのだ。掃除機だってただじゃないのであるぞ」
 大量に姿を現したメカ小ババ様たちを追いかけて、あちこちで大騒動になっていた。なんとか捕獲を試みようとする者は多いものの、うまくいかずにそこかしこでちゅどーんちゅどーんと自爆音が鳴り響いた。
「待てー、メカ小ババ様!!」
「なんだなんだ!?」
 いきなり校舎の中から飛び出してきたメカ小ババ様とそれを追う生徒たちの姿に、メイドコンテストでのシニストラ・ラウルスとペコ・フラワリーたちの戦いに固唾をのんで見守っていた観客がざわついた。
「大変です。みなさん、避難してください!」
 ジェイドが、大谷文美の使っていた司会のマイクを奪って叫んだ。それが、混乱を拡大させた。
「もうやめて。私たちが戦う理由なんかもうなくなってるのに」
 ココ・カンパーニュと一緒にデクステラ・サリクスと拳を交えながら、アルディミアク・ミトゥナがかつての仲間にむかって言った。
「恨みがないと言えば嘘になるけれど……。それ以上に、こういうのって、なんか楽しいのよ。そうは思わない? 何をするのにも、生きていくのにも、何かの相手って必要なんだよ、お嬢ちゃん」
 巧みに二人の拳をさばいてみせながら、デクステラ・サリクスが答えた。
 そこへ、小ババ様の群れが学生たちを突破して押し寄せた。
「何よ、これ!?」
 こんな物は聞いてはいないと、デクステラ・サリクスが猫目を丸くする。
「潮時かな。デクステラ、引くぞ。もう給料分は充分に働いた」
 メカ小ババ様たちを見たシニストラ・ラウルスが、デクステラ・サリクスにむかって言った。
「そう簡単に、逃がすと思っているのですか」
 ペコ・フラワリーが、ウィングシールドから抜き取ったウィングソードから爆炎波を放ってシニストラ・ラウルスを牽制した。その間に、退路を断つようにマサラ・アッサムが移動する。
 武器をもたないマサラ・アッサムの方へ移動しようとしたシニストラ・ラウルスであったが、すかさず広げたマントを振られて、素早く身を翻した。あれに絡みとられて一瞬でも動きを止めれば、背後からペコ・フラワリーの剣が襲いかかってくる。いいコンビネーションだ。
「簡単じゃなければ、簡単にできるようにしてくれるさ」
 そうシニストラ・ラウルスが言ったとき。彼らのそばにもメカ小ババ様が押し寄せてきた。