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ゴチメイ隊が行く3 オートマチック・オールドマジック

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ゴチメイ隊が行く3 オートマチック・オールドマジック

リアクション

 
    ★    ★    ★
 
「なんだか、ココさんのブースはにぎやかですねえ」
 ひときわドタバタしているココ・カンパーニュたちの脱衣所を見て、大谷文美が言った。
「コンテストの意味を完全に間違えておるな。これは、御主人様を美しく着替えさせるメイドのコンテストであって、コスプレ勝負ではないのだがな。だいたいコスプレ勝負であれば、この魔法少……」
「あっ、何やらココさんたちの脱衣場に入っていく人がいますが、大丈夫なんでしょうか……。あっ、出てきました。何か紙袋をかかえて、樹月 刀真(きづき・とうま)チームの脱衣所へむかうようです」
 長くなりそうな悠久ノカナタの解説をぶった切って、大谷文美が言った。
 
    ★    ★    ★
 
「さあ、御主人様、そこにお立ちいただけますでしょうか」
「刀真……いえ、御主人様。脱げ……お召し物をお脱ぎください……」
 脱衣所の中で、封印の巫女 白花(ふういんのみこ・びゃっか)漆髪 月夜(うるしがみ・つくよ)が、樹月刀真を前にして言った。
「な、なんか新鮮……というか、くすぐったいですね」
 見たこともないようなパートナーたちの態度に、樹月刀真が少し戸惑いながら言った。いつもこれくらい従順だといいのにとはあえて口にはしない。
「さあ、御主人様。早く脱ぐ」
 漆髪月夜が、樹月刀真を急かした。待ちきれないように手をのばす。
「ちょっと待ってください。よく考えたら、なんで俺が脱がされなくっちゃならないんです」
 ものすごくまっとうな疑問を、樹月刀真が口にした。
「着替えるんだからあたりまえ。さあ、全部脱ぐ」
「あたりまえですか。でしたら、しかたないですわね」
 漆髪月夜の言葉に、封印の巫女白花が不承不承うなずくそぶりを見せた。もはや、嫌とは言わせないつもりだ。
「うん、しかたないから脱がす」
「ちょっと、今、目的と手段が入れ替わりませんでしたか!?」
 思わず、樹月刀真が抵抗してしまう。これは、コンテストとしてはまずい。
「刀真が嫌がると、私たちメイドとして失格にされる……」
 悲しげな目で、漆髪月夜が樹月刀真に訴えた。
「いや、せっかくのメイドコンテストなんだから、ちゃんとメイドらしい姿じゃないと雰囲気が出ないじゃないですか」
「それはそう」
 樹月刀真の言葉に、漆髪月夜がポンと手を叩いた。
「刀真、少し後ろいている」
 そう命じると、漆髪月夜と封印の巫女白花がごそごそと着替え始めた。ちゃんと背中をむけたものの、すぐ後ろで着替えられては、樹月刀真もちょっと気が気ではない。それは、外で観戦している野郎どもも同じであった。当然、審査員席も同じである。
「うーん、これはちょっと……」
「ええ。少し恥ずかしいですう。でも、着せ替えの手際も採点項目ですからあ、たとえシルエットでも、まったく見えないと採点ができません。なので、しかたありませんですう」
 審査員席で軽く唸る悠久ノカナタに、大谷文美が答えた。
 
    ★    ★    ★
 
「刀真……いえ、御主人様、もう振り返っても……いいよ」
 漆髪月夜の声に、樹月刀真は振り返った。
「ちょっ、あなたたち、その衣装はどうしたんですか!?」
 二人の姿を見て、思わず樹月刀真が言った。
「ココさんたちから借りてきました」
 アルディミアク・ミトゥナ(あるでぃみあく・みとぅな)のドレスを着た封印の巫女白花が答えた。漆髪月夜はココ・カンパーニュ(ここ・かんぱーにゅ)のドレスを着ている。
「まずは、服装と気分からメイドになるの」
 最初は形からと、漆髪月夜が言う。
「でも、月夜さん、これ凄く恥ずかしいですよ」
 少しぶかぶかの胸の辺りを手で押さえながら、封印の巫女白花がささやいた。
「よく貸してくれたものです。二人とも、まあまあ似合っているじゃないですか。そのことも含めて、後でちゃんとお礼を言いに行かないといけませんね」
 胸の辺りがちょっとぶかぶかしていて残念だと言うことは口にせずに、樹月刀真は二人を褒めた。
 だが、さすがは長いつきあいのこと、漆髪月夜は敏感に樹月刀真の視線を感じとっていた。
「どうせ、サイズが合わない……。刀真のバカ」
 背格好は髪の色や長さも含めて意外に二人ともココたちに近いのだが、いかんせんスレンダーな漆髪月夜たちでは、肉弾派のメリハリのある身体のココ・カンパーニュたちとは体格がまったく違う。
「さあ、今度は御主人様の番。脱ぐ!」
 言うなり、漆髪月夜が樹月刀真を脱がし始めた。
「うっ……」
 二人のぶかぶかの胸元になるべく目をやらないように努める樹月刀真が、あっと言う間にトランクス一丁の姿にさせられる。
「では、こちらのお召し物を……。ねえ、月夜さん、この服でいいんですか? 刀真さんが着るのは少しおかしくありません?」
 漆髪月夜が指定した服を手に持った封印の巫女白花が、ちょっと躊躇するように小声で漆髪月夜にささやいた。
「うん。これで……いい」
 いいからと、漆髪月夜が封印の巫女白花をうながした。
「ささ、御主人様、ばんざーい」
 まるで子供に着せ替えをさせるように樹月刀真に両手を挙げさせると、封印の巫女白花が上から白いワンピースドレスをすっぽりと被せた。
「刀真、かわいい……。ぽっ」
「ぽっじゃない! なんで、月夜がさっきまで着ていた純白のドレスを俺に着せるんだ。なんだか、生暖かいぞ!」
 少し顔を赤らめながら、樹月刀真が漆髪月夜の頭に軽くチョップを入れて突っ込んだ。身長差から、漆髪月夜のドレスではフレアスカートの裾がつんつるてんになって足が顕わになり、かなり恥ずかしい。男であるから胸囲はあるものの、幅の広いレース飾りに覆われた胸の辺りは、みごとなぺったんこで、漆髪月夜たちのようにぶかぶかと大きな隙間が空いてしまっている。
「御主人様、これをどうぞ」
 封印の巫女白花が、黒いストッキングと布製のエルボーガントレットを差し出した。それをつければ、少しはみっともない素肌も隠せるだろう。
「よりによって、なんで女装を……」
 脱いだ服をしっかりと漆髪月夜に取られて、樹月刀真はがっくりと肩を落とした。
 
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「さあ、樹月チーム、着替えが終わったようです。こ、これは……」
 脱衣所から出てきた樹月刀真の姿を見て、大谷文美が絶句した。
「女装とは。こちらもなにか勘違いしておるな」
 悠久ノカナタが、うんざりしたように言った。