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リアクション
第2章 黄金の羅刹、白銀の羅刹・その3
羅刹兄弟が敗北すると、死人戦士は大慌ててで戦線を後退させた。
深手を負ったラーヴァナはぐぬぬぬ……と呻いている、まだまだ元気そうなあたりしぶいとい奴なのだろう。
取り囲む仲間の間を抜けて、緋桜 ケイ(ひおう・けい)はラーヴァナの前に立つ。
「殺すなら殺せ! 負けておめおめとガルーダ様の元に帰れるはずもないっ!」
「別に命まで取る気はねぇよ。ただ、ちょっと訊きたいことがあるだけだ」
「なにぃ……?」
「あんた、菩提樹前駅に襲撃に来た時に『新に良い匂いのするナイスバディを手に入れ、復活を遂げたガルーダ様』って言ってたよな。もしかして良い匂いってのは、死人の身体じゃなくまだ生きてる身体って意味じゃないのか?」
キャラクエ『ナラカ途中下車の旅』での出来事である。
「……そんなこと言ったかな。まあ、ガルーダ様のお身体が生きたフレッシュボディであるのは間違いない」
「で、気になるのはどこから『その身体』を手に入れたかなんだ」
奈落人は死体や意識のない肉体に憑依することができると言う。
前回、ガルーダが携帯を使う仕草を見て、ケイにあるひとつの仮説が浮上したのである。
『あいつが憑依している身体って攫われたルミーナ・レバレッジ(るみーな・ればれっじ)なんじゃないか?』
ルミーナは意識不明の重体、つまり憑依可能な状態だった。
ガルーダが使った謎の転送技術、あれを使えば病室から誰にも気付かれず攫うことが出来るはず。
髪の長さや身体つき、そして何よりもあの翼……、ガルーダとルミーナには似通っている部分が幾つかある。
あらゆるものがひとつの可能性を指し示しているのだ。
「あの身体をどうやって手に入れたのか、何か知っていることはないか?」
「言っておくが俺は知らん」
ラーヴァナは肩をすくめる。
「だが……、ある者に貰ったそうだ。その者がガルーダ様の魂を再生させたとも言っていた」
「魂の再生とはどういうことじゃ?」
ケイのパートナーである悠久ノ カナタ(とわの・かなた)が尋ねる。
しばしモジモジと言いづらそうにしたあと、ラーヴァナはおそるおそる語り始めた。
「数千年前、ガルーダ様はガネーシャに敗北した。ガルーダ様も強いが、ガネーシャも強い。激しい戦いの末、ガルーダ様はチキンカレーにされて食べられた上に、魂もバラバラに砕かれてしまったのだ。おいたわしい限りだ……」
「カレー?」
「ガネーシャはとんでもなく危ない奴でな、キレると相手をカレーにして食べてしまう悪癖があるのだ」
「むぅ……、それは怖いな。しかし、魂を砕かれるとはどういうことだ?」
「奈落人は何かの肉体を借りているわけだが、本体は霊体のようなものなのだ。魂を砕かれるとは本体を破壊されることを言う。別に破壊されたからと言って死ぬわけではないが、復活するのに気の遠くなるほどの歳月がかかるのだ」
「それこそ数千年かかっても再生出来んというわけか」
話していて感じたことがある。
ラーヴァナは馬鹿っぽいが、本当に悪いやつらとは思えないと言うことだ。
彼を従えているガルーダももしかしたらそう悪い奴でもないのかもしれない……、ケイはふとそう思った。
その時である。
今まで気を失っていたクベーラがむくりと起き上がった。
「この馬鹿兄貴が! なにを仲良く余計なことをベラベラ喋ってやがるっ!」
「……もういいだろう、クベーラ。俺たちの負けだ、しかもおまえに至っては自滅だ。恥ずかしい奴め」
「うるさいわいっ! 自滅はノーカンだ! 俺はまだ負けを認めちゃいねぇ!」
ウガーと熊のように吼えると、スタコラサッサと逃げ出した。
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