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リアクション
第二章 山路越え5
【マホロバ暦1187年(西暦527年) 6月3日 4時51分】
山路――
話は少し戻る。
その頃鬼城 貞康(きじょう・さだやす)一行とは別の道を通っていた者たちがいた。
セリス・ファーランド(せりす・ふぁーらんど)と彼の機昌姫ヴェルザ・リ(べるざ・り)、そして玉藻 御前(たまも・ごぜん)である。
彼等は別の『鬼』を追っていた。
「朱天童子(しゅてんどうじ)そのものが悪とは違うような気もするな」
セリスはこの時代の鬼の話を聞くにつれ、そう思えるのだと言った。
彼も仮面をつけて素性を隠している。
「まあ、鬼というくらいだから人々から恐れられもするだろうさ」
「わらわからしてみればできの悪い弟のようにしか思うぬがのう:
玉藻は先ほどから不穏な空気を感じている。
ヴェルザが警告を発した。
「何者かが、いる」
三人が鬼をめぐらせる。
セリスは動いた草むらに向かって大剣をつきたてた。
葉が大きく揺れ、中から一雫 悲哀(ひとしずく・ひあい)が現われた。
「鬼の一味か?」と、セリス。
悲哀は首を振った。
「怪しいものではありません。私は、鬼を目撃したのだという情報を追っていたのです。なぜかいつも……タイミングよく鬼城 貞康(きじょう・さだやす)さんが狙われている。そんな気がしたものですから」
悲哀はこれらを企てている真犯人を知りたいと言った。
「貞康さんを亡きものにしたければ、いずれ直接何かを仕掛けてくるかもしれません。流された情報といい、鬼が現われるときには何か兆候があるはずです」
その悲哀の推測のもと、その兆候を探すことにした。
――と、すぐ近くで戦っている者たちの姿を見た。
朱天童子と戦う人々である。
「あれは……!?」
玉藻が目を凝らす。
空中に鬼の顔をした仮面が浮かんでいる。
仮面は笑っているかのようである。
「鬼の仮面? 俺がひきつける。君も手伝ってくれ!」
「……はい!」
セリスの動きに必死についていきながら、悲哀は『鬼の仮面』に向かっていった。
「あなたは誰? ここで何をしているの!?」
不意をつかれた仮面は朱天童子らからわずかに離れる。
「このまま仮面をひきはがすぞ!」
彼等の働きによって、朱天童子から『仮面』の働きが弱まっていたことを記しておく。
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