校長室
インベーダー・フロム・XXX(第2回/全3回)
リアクション公開中!
【4】 GURDIAN【1】 舞台は再び、学院に。 天学の荒くれガール狩生 乱世(かりゅう・らんぜ)はカモフラージュで隠れながら、大文字先生を見張っていた。 と言っても、大文字の行動を怪しんで監視しているわけではない。その逆だ。 「クルセイダーに破壊されたプラントで作られた”何か”は、普通科に運び込まれていた。殺害された研究者たちは、普通科とつながりがあった。そしてスーパーロボット理論を唱える大文字勇作先生も普通科……。 以上のことから考えられるのは、謎のフロアと”G計画”ってのは、従来のイコンの常識を覆す”新型スーパーロボット開発計画”じゃないかってことだ。旧体制時代のような強化人間の犠牲も無く戦力強化出来るなら、正に理想的じゃねぇか。 ……逆に言えば、敵にしてみればそんなものが開発されれば困ったことになるわけだしな。わざわざ”普通科”を隠れ蓑にしていた理由も、今回のような妨害を予見してのことかもしれねぇ」 となると、 「次に狙われるのは大文字だ……!」 時刻は夕暮れ時。大文字は普通科校舎の前で、同僚の万馬と、それから訪ねてきた七枷陣と話し込んでいた。あと傍に、柚木桂輔の姿も見える。 「……あんなとこで何の話してやがんだ?」 怪訝な顔を浮かべたその矢先、学院を異変が襲った。 喧噪が遠ざかり、世界が灰色に染まっていく。泥に埋もれてしまったように、空気が重くのしかかり、身動きが出来なくなる感覚。この感覚を乱世は知っていた。 「来たな、シャドウレイヤー!」 そして予想通り、どこからともなくクルセイダーも出現した。 「我等、神に祝福されし理想の尖兵。我等が道を遮る理想の敵に安らぎを。安らかなる眠りを」 「させねぇ!」 乱世は仮契約書で魔法少女に変身する。 黒レザーのビスチェに、ボンテージデザインを取り入れたミニスカ魔法少女コスチューム。 正直、人の目がスーパー気になるが、恥ずかしがってもいられない。 「暗い闇夜を引き裂いて、クロスファイアが悪を討つ! 外道魔砲少女ラディカル☆ラン、推参!!」 二丁拳銃で銃撃を浴びせ、ランは弾幕を張った。 「敵の狙いは大文字だ! 早く連れて移動しろ!」 非契約者である大文字と万馬は静止状態で固まったまま動けずにいる。 「……いや、連中の狙いは大文字先生やないで」 「なに?」 陣の言葉に、ランは眉を寄せた。 ちょうど連絡を入れた直後のため、携帯を手にしていた真奈。そこにはシャドウレイヤー発生の直前に教団に潜入した仲間からのメールが入っていた。次のターゲットと思しき人物の写真、それは……。 「万馬博士だぁ?」 「シールベント!」 陣は封印のカードに万馬博士を閉じ込めた。 「詳しく考えるのは後回し! 博士を逃がすのが先決や!」 「だ、大文字先生は?」 桂輔は言った。 「う……、そのまま担いでくしかないやろ」 「だ、だよなぁ……」 桂輔が頭を持ち、陣が脚を持って、えっさらほいさと運ぶ。 「後ろはあたいに任せときな!」 ランは尾瀬 皆無(おせ・かいむ)を召喚する。 既にマスコット化していた皆無は、もふもふなワンコの使い魔姿だった。 「いつもニコニコあなたの後ろに這い寄る淫獣ナイナイだナイ〜。さあ今日元気でもワッフルワッフル、わんこ姿でセクハr……ごほっ!?」 「うるせぇ!」 ランは挨拶代わりに暴行を加えて黙らせた。 「……ぜーはーぜーはー! 俺様しもべとして、頑張っちゃうナイ〜!」 ナイナイは秘儀・セクシーコマンドで、メンタルをアサルトしつつ、ヒプノシスを放った。 「寝る子にハラスメントナイ!」 しかし、先ほども言ったようにクルセイダーの状態異常、精神異常の耐性は高い。 「我等、神に祝福されし理想の尖兵。加護に守られしこの身に下賎な力は通じぬ」 「ナイ!?」 クルセイダーは”聖剣アシュケロン”を槍状に変化させ、ナイナイを串刺しにした。 「ナイ〜〜〜〜!」 カップ麺が出来るよりも速く戦闘不能になった淫獣だった。 「……なんて使えない奴!」 「頑張ったのに、そりゃナイナイ〜〜!!」 ランは舌打ちして、二丁拳銃を構えた。 「トカレフ・マカロフ・ドラグノフ★ マグナム・ベレッタ・ニューナンブ☆ みんな一緒にトリガーハッピー♪」 凄まじい早撃ちで、銃弾の豪雨をクルセイダーにばら撒いた。 「さあああああち、あああんど、ですとろおおおおおい!」 「助太刀するわ! ラディカル☆ラン!」 突如、響いた声に、クルセイダーは振り返った。 魔法少女は見下ろしてなんぼのセオリーに従って、街路灯の上に登場したシャノン・エルクストン(しゃのん・えるくすとん)は、仮契約書で魔法少女に変身した。 「越えちゃいけないライン(年齢的な意味で)を華麗に飛び越え、ここに参上! 魔法少女ラインオーバー!」 フリフリの大人げない魔法少女コスチュームは、20歳なら世間的にはまだ許容範囲内だが、地元の知り合いには絶対見られたくない。 それがラインオーバーの引いた、人に見られて平気なライン。 「そして、マスコットのグレゴ!」 街路灯の真下を、ラインオーバーは指差す。 そこにはグレゴワール・ド・ギー(ぐれごわーる・どぎー)が幽鬼のように立っていた。 「貴様らは侮辱した。高貴なる獅子心王と癩王を、聖戦に命を懸け散っていった我がテンプルの戦友と聖ヨハネの名のもとに集った騎士達を。貴様らは十字騎士を騙り、あの聖戦に参加したもの全てを侮辱した」 呪詛のように吐き出される言葉は、顔面を覆う兜のため表情がわからなくとも、彼が並々ならない憎悪と憤怒に取り憑かれていることを教えてくれた。 テンプル騎士の英霊であるグレゴにとって、クルセイダー(十字軍)を語る彼らは赦しがたき存在だった。 「故に我は報復する。我らが名を詐称し混沌を拡散させようとするのであれば、例え誰であろうと、我はテンプル騎士として、十字騎士として、そして彼の地で戦った一人として、報復する義務がある」 マスコットにあるまじき凶悪さだった。 と言うか、変身する前との姿の差異は、頭に自分のストラップひもが付いてると言うことぐらいだった。 こんなマスコット、お子様の前には出せない。 「クルセイダーを騙る痴れ者共! 貴様らにその名が持つ意味を、テンプルの騎士がその身に刻み込もうぞ!」 グレゴは剣を引き抜くと、盾を構え突撃。ラインオーバーが援護を務める。 「謎空間に紛れて行う悪行の数々……。完全に越えちゃいけないラインを越えてるわ。よって成敗! 安全基準オーバーの致死電流! オーバーサンダー!!」 ラインオーバーの掌から稲光がほとばしった。 「我等は神に祝福されし理想の尖兵。加護に守られし我等に恐れるものなど無し」 だが、死の恐怖を超越したクルセイダー達が怯む事は無い。 稲妻の間隙を縫って迫ったグレゴは、敵の一撃を盾で防ぐと、そのまま盾を振るい殴りつけた。 「!?」 態勢を崩した敵を剣で叩き斬る。 その一撃は致命傷だったらしく、クルセイダーは爆発して散り散りになった。 「汝の罪は死を持って償うべし」 憤怒を宿した剣をぎらぎら光らせ、グレゴはクルセイダーに殺気を放った。 「……ちょっとグレゴ」 ラインオーバーが言った。 「む?」 「全然、マスコットっぽくないじゃない。一応、マスコットなんだから、それらしく振る舞いなさいよ」 「……いいだろう」 グレゴは、クルセイダーの振るった長剣を盾で流した。 「我と契約して、神の愛と救済を知ろうよ………………だが、貴様らに救いは訪れぬ!!」 剣を喉元に突き刺し、もう一人も絶命させた。 単身、敵陣に突撃し、怒濤の攻撃を繰り出すグレゴだが、しかし数の差と言うものは、埋めきれないものだ。 「ぐぬぅ!!」 背後から斬り付けられ、彼は大きくよろめいた。 そこに重ねて、クルセイダーは斬り付ける。 「ぐううう……!!」 鮮血が飛び散った。 「腕を断たれ、脚を断たれ、どれほど身が砕かれようと剣を振るう。これぞ狂信。貴様らには狂信が足りない……!」 闘志を燃やし、グレゴは剣を振るった。