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紅蓮のコウセキ

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紅蓮のコウセキ

リアクション

「風紀委員の癖に弱いヤツからカツアゲしてんじゃねぇ」
 身分のあるパラ実生風の格好をした、男――吉永 竜司(よしなが・りゅうじ)、そして巫女服を纏った大岡 永谷(おおおか・とと)も、戦闘に加わっていた。
「隊長は既に倒されたようだな。住民に被害が出ないよう場所を移動したいところだが」
 教導団で学んだ知識をもとに、永谷は状況を分析していく。
 工房に向かった者からの報告も踏まえると、奴らは建物や工房を盾にしているようであり、郊外へ引っ張りだすことは困難だろう。
「住民への避難警告をしてくれている人もいるし、極力被害を出さないよう注意を払いつつこの場で片付ける必要がある」
 避難が進んでいない場所に逃げられた場合こそ危ないと永谷は考えた。
「突破するぞ、てめぇら!」
 恐竜騎士の一人が大声を上げる。
「あいよー。殴って言う事聞かすタイプみたいだし、うちらがそれ以上に殴っても文句ないよね?」
 にっこり、テレサ・エーメンス(てれさ・えーめんす)は微笑みながら、腕まくり腕まくり。
 鏖殺寺院の制服を纏い、般若のような面をかぶり。手には怪力の籠手。
 殴るるるるる〜気満々だ。
「あの男が、指揮者といえるな。あの男を狙おう!」
 指揮系統を乱せば、敵の戦力を減らすことができ、勝利が楽になる。
 永谷はそう皆に説明してあった。
「おお!」
 竜司が吼えて、光学迷彩で姿を見えにくくし、スパイクバイクで従恐竜騎士へと近づく。
「こっちだよ!」
 テレサがその従恐竜騎士に声をかけながら、ヒプノシス。
「ん、うおおおおおっ!?」
 竜司のその身を蝕む妄執の攻撃により、恐竜が暴れだす。
「うう……おっ」
「うおりゃッ! てめぇは風紀委員のオレの舎弟だ!! 」
 眠気に抗いながら、恐竜にしがみついている従恐竜騎士に、竜司は忘却の槍を繰り出して、記憶封じを狙う。
「ぐ……っ。な、なに? なん、だ?」
 刺されて地に落ちた従恐竜騎士は、竜司の言葉に混乱する。
「後は、大人しく見届けろ」
 巫女姿の永谷が背後から近づいて、縄でその従恐竜騎士を拘束して路地へと転がす。
「お、俺は本校に戻るぜ!」
「本部に戻って報告だー!」
「は、腹減ったからな! 後は任せるッ」
「どけどけどけ、邪魔するやつは、踏み潰すぜ!!」
 他にリーダーとなれる存在はいないようで、従恐竜騎士はバラバラに突破を図り始める。

「風紀委員同士の戦い? それとも他の勢力も加わってんのかは判んないけど、あたいの敵は決まってる」
 スパイク小型飛空艇コンドルに乗った、御弾 知恵子(みたま・ちえこ)が上空に現るなり、魔銃カルネイジで従恐竜騎士に攻撃を浴びせる。
 知恵子はエリュシオンに反感を抱くパラ実生だ。
「恐竜野郎の狼藉を見過ごすわけにはいかないねえ!」
「なにぃ! パラ実の虫どもがッ!」
 怒りをあらわに、攻撃を受けた団員が降下した千恵子の方へと恐竜を走らせる。
「小型の恐竜だと思ってナメんなよ!」
 彼らの乗るストルティオミムスは、恐竜にしては小柄だが、とても素早く駆け回ることが出来る恐竜だ。
「街中はやめておいた方がよさそうだね。それじゃ、こっちだ」
 しかし、千恵子のスパイク小型飛空艇コンドルはそれを上回るスピードを出せる。
 生身よりも小回りはきかないが、飛んでしまえば障害物を越えられるし、恐竜に乗った騎士団員よりも全体的な大きさも小さく、有利に走行できた。
 商店街や民家を避けて、人の少ない場所へと騎士団員を誘っていく。
「風紀委員に従わない奴らがどうなるのか、わかってんだろうなー!」
「あんたらの他にも、風紀委員いるようだけど? そっちに従ってるってことにしておくよ。ま、エリュシオンに刃向ったとみなされても、あたいは別にいいんだけどね」
 頃合いを見て、千恵子はUターン。
 疲れ切っている恐竜、恐竜騎士に突っ込んでいき、銃を連射。クロスファイア、ヘルファイアと連続攻撃を加え、火達磨にする。

「待てえい!」
 戦いが続く、街中に大きな声が響き渡る。
 振り向いた者達が見たものは――包帯だった。
 いや、全身に包帯を巻いた人物だった。顔までぐるぐると包帯が巻かれているので、性別も種族も全く不明だった。
「恐竜騎士団! これ以上、お前たちの悪事を見過ごすわけにはいかない!」
 建物の屋上から、そのミイラは包帯をたなびかせ、びしっと銃を恐竜騎士団員に向ける。
「何者だッ、顔を見せやがれ! それともそのまま恐竜のエサになるかァ!?」
 従恐竜騎士の言葉に、しばし迷った後。
「……ハングドマンだ」
 そう答え、そのミイラ=緋桜 ケイ(ひおう・けい)は、両手に持った黒薔薇の銃で恐竜騎士達を撃っていく。
 ケイはとある竜騎士との戦いで、重傷を負い、現在は入院中だった。
 話を聞いて、病院から抜けして加勢しようとしたものの、ロイヤルガードという立場上、大っぴらに恐竜騎士団と事を構えるのは……今は良くないかもしれない。
 そう考えて、こんな変装をしてみたのだ。
「くぅぅ、銃で攻撃するミイラなんてどこにいるんだよ!!!!」
 撃たれた恐竜騎士団員は激怒しながら、銃を撃ち返してくる。
「くっ、攻撃を受けようが無問題。見ての通り先に手当ては済ませてある!」
 負傷しながらもケイは攻撃の手を緩めない。
 黒薔薇の銃弾で傷ついた恐竜、従恐竜騎士数人が眠気に襲われていく。
「眠っている場合か!」
 また一つ声が響く。
 突入してきたスパイクバイクが、うとうとしていた恐竜、従恐竜騎士を跳ね飛ばしていく。
「くっ……何者……」
「なに、通りすがりレスラーだ」
 バイクに乗っていたのは、覆面モヒカン女レスラー、B・B・女王(びっぐばん・おんな・わん)。
「ふざけた格好しやがって」
「プロレスを甘く見るなよ!」
「これのどこがプロレスだァ!?」
 プロレスを知っているらしい、従恐竜騎士が槍をB・B・女王という名の瓜生 コウ(うりゅう・こう)に繰り出していく。
「プロレスは最強! 強ければ銃もバイクもプロレスだ」
 コウはバイクを走らせて攻撃を躱すと、擲弾銃バルバロスで擲弾を射出していく。
 直撃せずとも、爆発で周囲にダメージを与える凶悪な武器だ。
「これが、プロレスか……ぐふっ」
 吹っ飛んで恐竜から落ちた騎士団員が、口から血を流して倒れた。
「さあ、奪った物を返してもらおうか」
 従恐竜騎士達が工房で強盗行為をしていたことはコウもプロレスラーとして知っていた。
「貴様とは初対面だろうが! なんも盗ってねぇぞ」
「ならば、パラ実らしく……頂いてゆくっ!」
 銃弾まき散らしという、凶悪なプロレス技を決めながら、コウは従恐竜騎士の道具袋を奪っていく。

「街の人々にまで暴力を振るうなんて……っ。ほんと許せないわ!!」
「覚悟は出来てる……?」
「あなたの街の魔法少女、参上っ!」
「反省しなさいっ」
 ミニスカートの少女が4人、塀の上に立っている。
 すた、すたたっと、道路に降りたって、従恐竜騎士達に武器を向けていく。
「いくわよ!」
 最初に飛び出したのは、ゴスロリ衣装をまとった少女。
 お目目ぱちっりでとっても可愛い。
「ええーいっ」
 バニッシュで恐竜を怯ませた後、爆炎波で乗っている従恐竜騎士を攻撃。
「人の心を踏みにじるような真似、許すことはできないっ。折檻よ!」
 ゴスロリ少女――変装した鬼院 尋人(きいん・ひろと)は、従恐竜騎士に吸精幻夜。
「う、ううううう……お前らは恐竜のエサじゃねぇ、俺らのエサにしてくれる〜」
 朦朧とした従恐竜騎士は、卑猥な笑みを浮かべて魔法少女の方へと突進してくる。
「魔女っ娘ヘルちゃんは、魔法でサポートー。みんな頑張れ〜」
 一番後ろにいるメイド服姿の長身の女の子(ヘル・ラージャ(へる・らーじゃ))は魔法ステッキを掲げて、サンダーブラスト。
 辺りに雷が降り注ぐ。
「魔剣少女、クオーレ☆ユノ、行きますっ!」
 クオーレ☆ユノ(ユニコルノ・ディセッテ(ゆにこるの・でぃせって))は、若葉分校生に加勢していく。
 走り回って、盾で仲間を守るレヴィへの攻撃や、光学迷彩で隠れている竜司から敵の目を逸らさせる。
「こちらです。掴まったら大人しくエサになりますよ」
 分校の行方は神楽崎優子の立場に関わる問題。
 大切な友人であるアレナが笑顔でいられる場所を守るためにも、ユノは若葉分校生を護りたいと思っていた。
「ありがとー。こっちも援護いくよ!」
 テレサが弾幕援護。ユノに迫っていた敵を後退させる。
「ありがとうございます」
 礼を言った後、ユノは一旦その場から離れる。
「くっ……土産を一つくらい持って帰らねぇとなァ!」
 走り回る可愛らしい魔法少女ユノに、恐竜騎士団員達の視線が集まっていく。
「よそ見してていいのかしら? マジカルガンナー☆ユッキー、ロイガに変わっておしおきよ!」
 最後の一人、お揃いのメイド風の魔法少女衣装をまとった愛らしい少女、ユッキーが曙光銃エルドリッジで、従恐竜騎士達を攻撃。
「ぐふっ」
「はぐわっ」
 発射された光の弾丸に打たれて、従恐竜騎士達の顔が歪む。
 しかし……。
「げへへへっ、捕まえたぜ。こっちの女は俺がもらった。てめぇら、退かねぇとこの女、ここで辱めるぞ!」
 恐竜を捨てて、スキルで気配を消してユッキーの背後に回り込んでいた騎士団員が一人いた。
「な……。やめなさい!」
 もがくユッキーを従恐竜騎士は羽交い絞めにしようとする。
「おしおきよ! おしおきったら、おしおきよ!」
 魔女っ娘ヘルから指定された決め台詞を繰り返しながら、ユッキーは蹴りをげしげし入れていく。
「ごふっ、げはっ……お、大人しくしろっ」
 従恐竜騎士は、締め上げて押さえつけようとする、が。
「あっ」
 足がもつれて、一緒に転倒。
 ユッキーは押し倒される形になり、従恐竜騎士の顔が彼女の下半身に直撃。
「悪さをするのは、この足かァ、ここで頂いちまお……」
 スカートの中に顔を突っ込んだ従恐竜騎士の言葉が、突如途切れた。
 魔法美少女戦士ユッキー(早川 呼雪(はやかわ・こゆき))のスカートの下には――見 て は な ら な い も の が あ っ た。
「見ぃーたぁーなー!」
 どたどたどたどたと突っ込んできたのは、魔女っ娘ヘル。
 ユッキーが従恐竜騎士を蹴り上げるより早く、殴り飛ばす。
 そしてボコボコに、ボッコボコに、ボッッッコボコに、見るに無残な姿に仕立て上げていく。
 ……殴りつける前に、既に欲望まみれの従恐竜騎士は真っ白になっていたのに。哀れなり。
「……さて、残る敵は」
 ユッキーは何事のなかったかのように平然と立ち上がる。
(中も魔法少女化してくるべきだったか……いや、ヘルが許してくれないか?)
 そんなことを考えながら、あたりを見回す。
「あともう少し、頑張りましょう」
 ユノは疲れを見せながらも、分校生の――アレナの為に走り回っている。
(……アレナには見せたくない格好だな。黙っていれば俺とはわからない、とはいえ……)
 見られないためにも、彼女が到着する前にケリをつけなければならない。
「とどめ、いくわよー!」
 ユッキーは銃を撃って、相手の動きを止めた後、飛び掛かって蹴りを打ち込む。
 ……今度はスカートを押えたまま。敵はいいが、不可抗力で仲間に被害者が出ては困るから!
(……ゼスタもこっちに来るかもな。その前に終わらせないと)
 ゴスロリ魔法少女に扮した尋人も、ガツン、ゴスン、ゲスンと相手の記憶を奪う程の猛攻を従恐竜騎士に加えていく。
「やめてください、おやめください〜」
 吸精幻夜で幻惑されている従恐竜騎士はついに泣き出して尋人に縋り付いてきた。
「もうっ。泣いたら許されると思わないでよね! 今度やったらヘルちゃんに任せるわよ!」
 ぷんぷん怒りながら、尋人はヘルの方を指差す。
 魔女っ娘ヘルにボコられた従恐竜騎士はもうぴくりとも動かない。身体も精神もズタボロ、ボロ雑巾になっていた。