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リアクション
「この、恐竜にしか乗れない原始人共が! 無能、低能」
工房を飛び出た従恐竜騎士達に罵詈雑言が浴びせれる。
しかし、声の主の姿は見えない。
「クズ、ゴミ、便所虫野郎!!」
声の主は、ゆる族の森猫 まや(もりねこ・まや)。光学迷彩で姿を消し、更に建物の後ろに姿を隠している。
「な……んだとっ。もういい、建物ごと、ここら一帯破壊する!!」
従恐竜騎士の1人が振り向いて、バズーカーのような武器を構える。
「風紀の意味をお間違えではありません!?」
飛び出した綾瀬が、奈落の鉄鎖で動きを鈍らせる。
直後にブリザード。軽く固まらせて、更に動きを鈍らせる。
「馬鹿どもがぁ! 穴だらけにしてやるぜ!!」
まやは、アサルトカービンで、恐竜騎士団員にスプレーショット。
「うぐぐっ、雑魚の癖に……!」
「貴様ら、覚えてろよ!」
「忘れねぇよ! オラァ!!」
まやの攻撃に、従恐竜騎士と恐竜は防御に専念。
綾瀬の先ほどの攻撃により、動きが非常に鈍っていた。
「まさか、これで終わりにはなりませんわよね?」
にこにこ、綾瀬は口元に笑みを湛えながら――。
「ハッ!」
ハイアンドマイティをフルスイング!
工房を狙っていた従恐竜騎士、加えて恐竜に跨り体勢を整えようとしていた従恐竜騎士達を吹っ飛ばす。
「まだやりますか?」
武器を真っ二つにされ、地に伏している従恐竜騎士に、鬼眼発動状態でにっこりほほ笑む。
「き、今日のところはこのくらいで勘弁してやるぜ……っ」
駆けてきた恐竜に飛び乗って逃げようとする従恐竜騎士!
「逃がしませんわよ!」
突如、物陰から飛び出した少女が、竹箒を手にその従恐竜騎士に飛び掛かる。
「えいえいえいえいえいえいえいえいえいえいえいえいえいえいえいえいえい!!!」
「ぐふっ、ごふっ、げほっ、がはっ、ぐひっ、ごぼっ……」
ぶっ叩いて、恐竜から振り落とし、叩いて叩いて叩きまくる。
若葉分校生でもある、百合園の城ヶ崎 瑠璃音(じょうがさき・るりね)だった。
「よくも……仲間をやってくれましたわね。許せませんわ!!」
勝てる相手ではないと思いながらも、瑠璃音は決して退かない。
若葉分校生のブラヌの友人であれば、自分の仲間。
そして、総長である優子に贈るはずだった鉱石を奪ったという話を聞き、いてもたってもいられなくなった。
瑠璃音は地元の民らしい変装をして、目立たず工房の中でチャンスをうかがっていた。
「逃げるのなら、追いませんわよ?」
綾瀬は、ハイアンドマイティを振り上げる。
途端、恐竜は騎士を置いて猛スピードで逃げ去った。
「はあ、はあ、はあ……。やりました、わ……」
後に残ったのは、ズタボロになった従恐竜騎士1名。
「ここは任せてよさそうですわね。少し、町の方々が心配ですわ……」
綾瀬は瑠璃音にこの場を任せて、町の人達へ注意を促すため、その場を後にする。
残りの恐竜騎士――敵風紀委員は、他の風紀委員達に追われながら他の隊員との合流を急いでいる。
……と、思われた。
「ここに訪れた人達から略奪したものは、どこにありますの?」
「中、に……あ、ぐふっ、る……」
瑠璃音の問いに、従恐竜騎士はそう答える。
瑠璃音は、汗をぬぐいながら工房の中へと戻る。
しかし、工房に足を踏み入れた途端。
凄まじい速度で近づいてきた何かに、瑠璃音は転ばされてしまう。
「毒……は必要ないか」
そんな声が響くと同時に、彼女の体に紐がぐるぐると巻きつけられる。
「あ……っ」
何が起きたのかよく解らないまま、瑠璃音は引っ張られて、隅に座らされた。
「分校生っつっても、生粋のパラ実生じゃないようだしな」
声の主――道具とスキルで行動速度を速めて瑠璃音を拘束したのは国頭 武尊(くにがみ・たける)、風紀委員にして、若葉分校生。
「あなたは、誰? どうしてこんなことを……!」
「オレは、そう。謎の覆面風紀委員『スーパーパンツマシン1号』とでも言っておこうか」
「すーぱーぱんつましんいちごう!?」
武尊は覆面をしており、瑠璃音は変装をしているため、互いに誰だかはわかっていない。
「工房内に、爆弾を仕掛けてある。下手なことはすんなよと、仲間に伝えろよ」
どこからか、声が響いてくる。
光学迷彩で姿を隠した猫井 又吉(ねこい・またきち)の声だ。
「ここだよ!」
姿を消していたまやは武尊達に見つかることなく、近くまで来ていた契約者達を呼んで戻って来た。
「大丈夫ですかっ!」
真っ先に駈け込んだのは、真口 悠希(まぐち・ゆき)だった。
「爆弾が仕掛けてあるそうです。気を付けてください」
「わかりました。必ず、お守りします」
悠希は剣を手に細心の注意を払いながら、瑠璃音の元へと急ぐ。その前に武尊が立ちはだかる。
「……退いてください」
かつて、虐めをうけていた弱者として、弱き人々を虐げる者は許せない。
だが、正体がバレてしまうと立場的に問題がある可能性もあるため、悠希は男装をしていた。
悠希には迷いがある。悩みながらの同行だった。
だけれど、今この場で立ち塞がる者を退けること、捕らえられた友達を守るという強い意思は持っている。
「悪いな。治安維持の観点から、お前らを阻止しなきゃならないんだ。上には逆らえない」
答えるスーパーパンツマシン1号の声からは、迷いと苦悩を感じられた。
「組織に囚われず、貴方も自分の信念を貫いてください。貴方の本心は……弱きものを虐げたいのですか!?」
「そういうわけじゃ、ないんだが……っ、くっ」
迷いながらも、武尊はブランド時計、アクセルギアを用いて悠希の攻撃を躱し、足を払ってその場へと倒す。
「風紀委員なミネルバちゃんの舎弟をよくもやってくれたなー、表にでろー」
続いて、ミネルバ・ヴァーリイ(みねるば・う゛ぁーりい)がバーンとドアを開け放って現れる。
若葉分校の名前は一切出さない。ゼスタから風紀委員のひとりと交渉をしたという話を聞いていたため、自分達風紀委員以外の分校生を連れてはいない。
「用があるなら、入って来い」
「爆弾が仕掛けてあるそうです、気を付けて」
武尊はカウンターの方まで下がり、瑠璃音が注意を促す。
「爆弾!? えっと、みんなこっちに来ちゃだめだよー」
後に続いている分校生達に声をかけた後、ミネルバはそろーりと工房の中に足を踏み入れる。
「風紀委員の、ミネルバか……」
彼女の後ろには、桐生 円(きりゅう・まどか)とオリヴィア・レベンクロン(おりう゛ぃあ・れべんくろん)の姿もある。
きわめて分が悪い。
「厄介な相手だな」
又吉は、道具でスキル封じを試みようとするが、隙がありすぎるように見えて、ミネルバは殺気看破などのスキルを使い警戒に努めており、射程に入ってこない。
光学迷彩は完全に姿を消す術ではないため、物陰から出てしまえば、発見されてしまうだろう。
「しかし、罠があるからな。迂闊にこっちに近づけはしないさ」
又吉は記憶術でしっかりと敵対するものの顔を覚えていく。
「うん、わかった」
円はゼスタに状況を報告し、指示を仰いでいた。
ゼスタは同行はしていないが、電波の通じる場所にまで出てきている。
「ミネルバ、工房ちょっとくらい爆発しちゃってもいいって。店主はもう逃げたみたいだし、あの時とは状況違うしねー」
「わかったー。ミネルバちゃん、とっつげきー! 引き摺りだすぞー!」
「うっ」
「そ、それはやめておいた方がいいぞ。早まるな!」
無論、武尊達は爆発の被害を受けない場所にいたが。罠を仕掛けてあったのは本当だ。
又吉は止めようとするが、ミネルバは笑顔で突撃突進。
「大丈夫です。ボクが守ります!」
悠希は動けない瑠璃音に飛びついて守る。
幾重にも張り巡らされているロープのうちの一つが、爆弾へと伸びており。
ミネルバが踏んだ瞬間に――。
どかーん
工房の一部がふっとんだ。
「交渉は無理のようねぇ〜」
恐竜騎士団員をわざと逃がして、アスカは小隊のリーダーの元にたどりついていた。
報告を受けた小隊のメンバーは全員恐竜に乗り、敵対する者を暴力で押さえつけようとしていた。
「いくぞ」
まず、ルーツが歴戦の魔術で攻撃。避ける為に、敵の隊列が乱れる。
「アスカ、頼むわよ!」
続いて、オルベールがミラージュで相手の混乱を誘い、隙を作る。
「蛆虫どもが、俺の街から去れ!」
リーダーが槍を振り回す。
アスカは行動を予測して、攻撃を躱すと、刃物を手に鬼神力で肉体を強化した力で、恐竜の足を狙う。
「うっ」
暴れだした恐竜から、振り落とされたリーダーに3人で飛び掛かって押さえつける。
「より多く反逆者をぶっ殺したヤツが次のリーダーだな!」
しかし、リーダーが捕らえられても隊員達は止まることなく、刃向う者――刃向わない者にまで、手を出していく。
「酒杜は上手くやってるようだが、この状況は看過できない、か」
集まった恐竜騎士団員が暴れ始める様に、様子を見ていた唯斗も重い腰を上げる。
「やってもいいんだな?」
エクスの問いに、唯斗は「ああ」と答える。
直後にエクスは意気揚々と、近くの恐竜騎士団員に向かっていく。
「私も手伝います。このままでは、町も人も壊されてしまいます……っ」
紫月 睡蓮(しづき・すいれん)は、高台へと走る。
「他のパラ実風紀委員も動いてるみたいだし、こっちも気にすることはないか」
特に変装はせずに、唯斗は向ってきたリーダーの恐竜に疾風突き。
「叩き潰してくれるわ!」
光の閃刃で全体攻撃をした後、エクスは炎雷の都を放つ。
「罪のない人にまで手を出すなんて……見過ごすわけにはいきませんっ!」
更に、高台から睡蓮が狙いをつけて、恐竜騎士団員を傷つけていく。
「皆さん、家の中へ避難してください。窓をしっかりしめていてください!」
睡蓮は矢を放ちながら、人々に呼びかけていき、人々は足早に近くの建物の中に避難していく。
「タチの悪いカツアゲじゃないかと思っていたが、ここまでするか、お前らはーーーー!!」
明子は怒っていた、とにかく激怒していた。
だが、明子本人は正面から向かってはいかない。
「人化して動きまわンのもひさしぶりだなァ……とかのんきに言ってらんないよな」
魔鎧のレヴィ・アガリアレプト(れう゛ぃ・あがりあれぷと)は、暴れている恐竜騎士団より、背後の暴力魔……ではなく、明子の怒りのオーラの方が怖かった。
龍鱗化、ディフェンスシフト、アイスプロテクトと防御を固めて、走り回る恐竜達の前へ出る。
欠けたラスターエスクードを構えて、九條 静佳(くじょう・しずか)と鬼一法眼著 六韜(きいちほうげんちょ・りくとう)を守りつつ、前進。
「ちょっとお前ら、行って来い!」
自分自身は動くことが出来ないため、ペットの剣竜とパラミタ猪を道路へと放つ。
「さあ、かかってこいやー!!」
大声を上げたレヴィに気づき、恐竜に乗った団員が剣竜と猪を退け、スクーターを超える速度で接近してくる。
「抑えられるか……いや、相手は恐竜にしては小柄だっ」
「簡単には近づけさせないって」
一番後ろについている六韜の炎の聖霊の発動により、敵の動きが鈍る。
「そこそこ近づける必要はあるけどね」
真ん中にいる静佳は、弓で騎士団員を狙った。作戦上や場所の問題上、恐竜を狙って下手に暴れられるより、乗っている人物を狙った方がいいと考えた。
サイドワインダー、スナイプで、手、足、頭と狙っていく。
致命傷こそ与えなかったが、騎士団員に確実にダメージを与えていた。
「さーて、こちらもガンガンいきますよー」
六韜は血のインクで魔法攻撃力を上げて、アシッドミストを放つ。
強力な酸の攻撃に、恐竜が悲鳴のような声をあげる。
「はいはい、攻撃はまだまだこれからですよー」
続いて、凍てつく炎、天のいかづちと攻撃を加える。
「うおおっ」
先頭の恐竜騎士団員がレヴィに接近。
繰り出される槍を、レヴィは盾で防いで耐える。
「今なら頭を狙えそう」
静佳が狙いをつけたその時。
「道路で寝てろ!」
そんな声が響いたかと思うと、その従恐竜騎士はぽーんとはじけ飛び、道路に転がった。
……明子の鉄拳制裁だ。
「マスター、相変わらず、えげつないぜ……頭が陥没してね?」
そう言葉を漏らしたレヴィ。
「やっかんしー! 頑張って作ったプレゼントカツアゲするチンピラに情けなんて掛けるかばかー!」
そんな言葉が響くが、隠れ身で潜んでいるため、明子の姿は見えない。
ただ、ブラインドナイブスで刺されて血を吹き出したり、歴戦の魔術の凄まじい魔法がさく裂し、一般人までもが悲鳴を上げだしたり。
見えない刃を持った台風が周囲を走り抜け、従恐竜騎士達を深く傷つけていく。
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