空京

リアクション

■イコン整備・救護活動

そのころ、空中ドックの甲板では。

「彼我の戦力差はほぼ絶望的と言っても過言ではありませんが、
今までもこちらが不利でもそれをひっくり返してきました。
今回もきっと出来るでしょう」
「敵さんは待っちゃくれないよ。
整備が終わってないのはこっちで面倒見るから早く持ってきな。
そんで、終わったのからどんどん出撃だよ」
長谷川　真琴（はせがわ・まこと）と
クリスチーナ・アーヴィン（くりすちーな・あーう゛ぃん）が中心となり、
イコン整備を行っていた。
天御柱学院では、【整備のリーダー】と呼ばれている真琴が
リーダーシップを取り、着々と整備は進められていく。

同じく整備科所属の神楽坂　紫翠（かぐらざか・しすい）と、
パートナーのシェイド・ヴェルダ（しぇいど・るだ）も、
忙しく走り回る。
「これは……激戦となりますね……忙しいですが……少しでも手伝いできれば」
紫翠がつぶやく。
「おい、無理するなよ？
休憩しながら、やらねえと持たねえぞ？
目の回る忙しさなのは、分かるが」
汚れも疲労も厭わずに整備を続ける紫翠に、シェイドが言う。
「大丈夫ですよ？
……自分、こんなぐらいしかできませんし……根性と気力は……有りますから」
紫翠の綺麗な顔は、油まみれになっている。
「紫翠さん、無理はしないでくださいね。
効率的に整備をするためにも休憩は必要ですよ」
真琴も、紫翠を気遣う。
「あんたもな、真琴」
クリスチーナが言う。

シャンバラ教導団の【新星】メンバーの、
ハインリヒ・ヴェーゼル（はいんりひ・う゛ぇーぜる）と、
天津　亜衣（あまつ・あい）も、
傷ついたイコンの修復にあたる。
「いくら工兵科のオレでもイコンの修理は専門外なんだが、そんなコト言ってられねーか」
「爆発しそうな箇所や、有毒物質の漏れてるところはないよね？」
ハインリヒと亜衣は、十分に注意する。

「オレの好みにばっちし合う娘を見付けるまでは、
滅んで貰っちゃあ困るんだよ！
地球もシャンバラも他の場所も全部な！」
ハインリヒの想いが、機械の音にまぎれて響く。

「滅ぶと言われても……納得できません……
意地でも逆らいます……何もしないで後悔するより……マシですから」
紫翠が、披露した自分を鼓舞するように。
「俺は、まだ、やりたい事も沢山あるんだ。
あいつにも告白してねえし、こんな所で、諦められねえよ」
シェイドが、パートナーの横顔を見つめながら。
「大切な人達と暮らすこの世界を身勝手なわがままの為に滅ぼさせはしないっ！」
真琴の、仲間への気持ちが。
それらは、想いの力となって、空にとけていった。

■

一方、医療班は。

伊礼　悠（いらい・ゆう）と
ディートハルト・ゾルガー（でぃーとはると・ぞるがー）、
高峰　結和（たかみね・ゆうわ）と
エメリヤン・ロッソー（えめりやん・ろっそー）は、
蒼十字として活動を行っていた。
「私なんかじゃ何も出来ないかもしれない……
でも、それでもこの世界を終わらせたくないんです！
大切な人が……大切な人達がいるから……！！」
悠とディートハルトが、小型飛空艇に載せて運んだ負傷者を、
結和とエメリヤン、
新風　燕馬（にいかぜ・えんま）と
ザーフィア・ノイヴィント（ざーふぃあ・のいぶぃんと）が、
空飛ぶ箒シーニュへと載せる。
「悠、伏せるんだ！」
「！」
ディートハルトとエメリヤンが、
追いついてきたアンデッドを屠る。
（ごめんね、誰も、君たちの所へ連れて行かせる訳にはいかないんだ）
エメリヤンが、動きを止めたアンデッドたちを悲しい瞳で見下ろす。
「大丈夫です、必ず助けます。
……皆で護った世界で、皆で幸せに、生きましょう」
結和が、負傷者の傷を魔法で癒しながら、優しく、力強く言う。
「エリュシオンの龍騎士さんも、協力してくれています。
私たちが今までやってきたことは、無駄じゃありませんでした。
きっと誰もが、分かり合える。
これから平和になっていく……
いいえ、皆で平和を作っていくこの世界を終わらせはしません」
「幸せになろう。皆で一緒に」
結和とエメリヤンが、負傷者に優しく言う。
今まで、敵味方関係なく負傷者を助けたことで、
龍騎士たちとの絆も深まっており、
蒼十字の腕章を見れば、龍騎士たちは身を挺して守ってくれた。

他方、
「これからなんだよ、何もかもが！
俺は終わってなどやらないし、誰も終わらせはしない！」
「僕の物語には、まだまだ続きがあるんだ。
監督でもないくせに余計な茶々を入れるなよ」
燕馬とザーフィアの想いが、空にほとばしる。

こうして、後方支援のおかげで、
負傷者の戦線復帰や、味方の士気の上昇もあり、
ゴーストイコンとの戦いは有利に進むのだった。