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七不思議 恐怖、撲殺する森

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七不思議 恐怖、撲殺する森

リアクション

 
    ★    ★    ★
 
「ルンルン君、何かいい物はありましたかですぅ?」
 イルミンスールの森で山菜を探しながら、咲夜 由宇(さくや・ゆう)ルンルン・サクナル(るんるん・さくなる)に訊ねた。
「ちょっと待ってね。うーんと、くんくんくん……」
 狐の獣人化したルンルン・サクナルが、鼻を鳴らして山菜の匂いを探した。
「あっちに、いい匂いの物があるよ」
 そう言うと、ルンルン・サクナルが走りだした。
「でかしたですぅ」
 何を見つけたのだろうかと、咲夜由宇がルンルン・サクナルの後を追いかける。
「わあ、キノコがたくさん♪」
 木の根っこ近くにたくさんのキノコを見つけて、咲夜由宇が歓声をあげた。
 貧乏な彼女としては、これだけの食材がただで手に入るというのは実にありがたい。はたして、何日分の食料となるだろうか。
「ルンルン君、さっそく採るですぅ」
「はーい」
「ちょっともらいますね」(V)
 いそいそと二人がキノコを集めていると、静かに近づいてくる人影があった。
「さあ、お前の胸のサイズを数えるんだもん」
「へっ?」
 突然どこからともなく問いただされて、咲夜由宇とルンルン・サクナルは驚いて立ちあがった。キョロキョロと周囲を見回すと、少し離れた場所にある木の後ろにハリセンを持った人影が見える。
「ええっと、Bですぅ!?」
 反射的に、咲夜由宇が正直に答えた。本当は、もうちょっと胸に栄養がほしいところではある。
「ルンルンはA竏窒セよね」
 それはえぐれているのかと突っ込みたくなるルンルン・サクナルの答えであった。
「失礼したんだもん。ぺったんこに罪はないよね。敵はたっゆんのみ。さらばだもん」
 人影はそう言うと、バーストダッシュで風のように去っていった。
「いったい、今のはなんだったんですぅ?」
「さあ」
 咲夜由宇の問いに、ルンルン・サクナルも肩をすくめるしかなかった。気をとりなおして、二人でキノコを採り始める。
「あなたの鈍器はなあに?」
 また、突然の質問が投げかけられる。
「私は殴るときは素手ですぅ」
 またかと、咲夜由宇は、顔もあげずに答えた。
「だめです。素手なんかもってのほかです。殴るときはメイスを使うべきです。こういう風に!」
「えっ?」
 なんの話だと咲夜由宇が顔をあげようとしたとき、ガツンと後頭部を殴り飛ばされた。
「はうわぁ」
 思いっきり吹っ飛ばされた咲夜由宇が、山菜の自生している茂みに頭から突っ込んだ。
「素敵、安い食材に埋もれて死ねるなんて……」
 犯人はヤス……とダイイングメッセージを残して、咲夜由宇は気を失った。
「きゃー、ぶたないでー。ああん♪」
 次は自分の番だとぞくぞくしながら、ルンルン・サクナルがお約束通りに嬉しそうに撲殺されていく。
 ふくらんだ尻尾をピンと立てて、ルンルン・サクナルは満足そうに咲夜由宇の上に折り重なるようにして倒れた。
「なぜ、みんな途中で黙ってしまうのでしょう」
「本当だね。僕たちはちゃんと挨拶しているというのに」
「いつものことだよ。他の所に行って、もっとちゃんと挨拶のできる人を探そうよ」
「でも、あまり遠くに行くのは……」
「忘れたのかい、世界樹には、僕たちと同じ人たちがいるんだよ」
「そうそう」
「そうでしたわね。さあ、気をとりなおして、行ける所まで行きましょう」
 咲夜由宇たちを見下ろしていたメイちゃんとコンちゃんとランちゃんは、決意を新たにして再び世界樹にむかって移動していった。
「あらあら、大変です。あんな所に倒れている人が……。ご奉仕開始……ですね」(V)
 メイちゃんたちが去ってしばらくして、イルミンスールの森をあてもなく散歩していた高務 野々(たかつかさ・のの)が、倒れている咲夜由宇を見つけて駆け寄ってきた。
「犯人は安い……? 何か売ってる人が犯人なのかしら。それよりも、大丈夫ですか?」
 とりあえず、ナーシングで治療しようとする。
「そこまでです!」
 突然現れた緋桜 遙遠(ひざくら・ようえん)が、高務野々を呼び止めた。
「これ以上の狼藉は、このハルカちゃんが許さないのです」
 ちぎのたくらみを使った武装幼女デパガールハルカちゃんになった緋桜遙遠が、ブライトフレイルを掲げて言った。
「まあ、困った人ですね。そういう困った人を私は探していたのです。困った人を探し求めてさ迷うメイド、高務野々の伝説が今始まるのです」
 助け起こしかけた咲夜由宇たちをポイッと投げ捨てて、高務野々がすっくと立ちあがった。手に持ったデッキブラシで、トンと地面を打つ。
 高務野々が求めているのは困っている人たちではない、困ったちゃんな人なのだ。まさに、今目の前に、それが現れたのである。
『あなたが、撲殺犯ですね!!』
 高務野々と緋桜遙遠は、声を揃えてそう言った。
『違います。撲殺犯はあなたでしょう!!』
 なぜか、二人の台詞が完全にシンクロしてしまっている。一瞬、なんなんだと二人は顔を見合わせたが、考えてもややこしいだけなので、無視することに決めた。
『まあ、しらばっくれるとは許しません。お仕置きです』
 またもや息もぴったりに同じ台詞を吐くと、二人は嬉々としてどつきあいを始めた。
「わーい、まぜてまぜてー」
 戦いの音に気づいて、真犯人であるコンちゃんたちがあわてて戻ってきた。
「お友達!!」
 ごすっ!!
「はうあ……」
「つきあってください!」
 どがっ!!
「きゃっ……」
「仲良くしましょ! あれ? また静かになっちゃった。みんな、なんで寝てしまうの?」
 メイちゃんたちは、気を失って倒れた高務野々と緋桜遙遠を見下ろして、淋しそうに言った。