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ミッドナイトシャンバラ2

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ミッドナイトシャンバラ2

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ふつおた

 
 
「ふつおたコーナー♪
 さあ、やってきました、恒例のふつおたコーナー。
 まず最初のおハガキは、ペンネーム、超プリチーな白熊さんからです。
 こんばんは、シャレさん!
 夏の暑さは長らく続いていたものの、今ではすっかり秋ですね。
 そうですねえ。秋祭りも終わりましたし、急激に冷え込んできましたねー。
 秋といえば秋祭りということで、この前ボクも、曳き山笠に参加しました!
 あら、なんと、参加していたんですか。どの山笠を曳いていたんでしょう。ペンネームからすると、白熊山笠のメンバーの誰かさんなのかなあ。まあ、詮索はやめてきますね。
 エキサイティングしすぎたのがいけなかったのか、他の山笠ともども大破しちゃいましたけど。てへっ☆
 シャレさんも司会お疲れ様でした。
 
 話は全然変わるのですが、シャレさんはクマとパンダはどっちが好きですか?
 ボクは断然クマ派です。最近パンダが各地で大人気みたいだけど、負けないぞ!」
 パンダは希少種ですからねえ。
 ぬいぐるみなら絶対にパンダなんですが、熊も嫌いじゃないですよ。
 秋祭りはなんだか負けちゃったみたいですが、また冬祭りとか春祭りとかで頑張ってくださいね。
 次のお便りは匿名希望さんからです。
 俺には大切な人がいました、だけど傍にいた俺が護りきれずにいなくなってしまいました。
 その人はとても有能なので一人で様々な仕事をこなしていました。
 その人はお金持ちでとても我が儘で人の事を部下や使用人扱して色々と仕事を押し付けてこき使っていました。
 そんな人なのでその人は独りでいる事が多かったです。
 でもその人はそうやってこちらをを試している気がして俺はそんなその人の事を放っておけなかったので、できるだけ傍にいて我が儘を聞きました。
 いつかその人が安心して当たり前のように我が儘を言って笑って欲しかったのです。
 でもその人は俺の目の前でいなくなってしまいました、その時その人は「躊躇している暇はない」と言ったのです。
 だから俺は立ち止まらず先に進もうと思います。
 ただ言えなかった疑問が胸の中にありました…傍にいようとしたのが俺でなければ、その人は信じて頼り全てを話していたのではないか?と
 護ろうとしたのが俺でなければ、その人を護りきれたのではないか?と
 この問いかけをしたくて葉書を送りました、聞いて下さりありがとうございます
 真面目なお便りですね。
 多分その通りなのでしょう。
 でも、その人がすべてを話したかもしれない人なんて、誰にも分からないじゃないですか。
 そういう人がいたかもしれないし、いなかったかもしれない。そして、そういう人は、もう現れないかもしれないし、どこかの誰か、そう、今日お手紙をくれた誰かがそれになれるかもしれない。本当のことなんて、多分その人にも分からないんだと思います。
 でも、もうその人はいなくなっちゃったんですよね。
 だったら、探しましょう。
 探さなければもう一生会えないかもしれませんが、探せば再会できるかもしれません。それもまた、誰にも分からないことなんだろうと思います」
 
    ★    ★    ★
 
「刀真、お腹が空いた……ナポリタン食べたい」
 樹月 刀真(きづき・とうま)と一緒にデータ整理をしていた漆髪 月夜(うるしがみ・つくよ)が、唐突とも言えるタイミングで言いだした。
「そうだな。夜食にしますか。少し待っていてください」
 そう答えると、樹月刀真は、キッチンに一人でむかった。
「ナポリタン♪ ナポリタン♪」
 データ整理を続けながら漆髪月夜が夜食の完成を心待ちにしていると、BGM代わりにかけていたラジオから、樹月刀真の投稿が聞こえてきた。さすがに、その内容に考えさせられてしまう。
「私だって……」
 樹月刀真が言う人物を守れなかったということでは、漆髪月夜もまったく同じだ。できたこと、できなかったこと。思うこと、思っているだろうこと。どこに違いがあるというのだろう。
「できましたよ」
 両手につけたキッチンミトンの上に熱いナポリタンの皿をそれぞれ載せ持った樹月刀真が、エプロン姿のままキッチンから戻ってきた。
 ケチャップで味つけされた赤いパスタから、酸味のあるトマトと香ばしいベーコンの香りが漂ってくる。
「このテーブルの上でいいですよね」
 両手がふさがっているので、樹月刀真はミトンの上で皿をすべらせて、テーブルの上に二つのナポリタンを同時におこうとした。すかさず、漆髪月夜が手を出して片方の皿をテーブルの上におく。片手が自由になった樹月刀真が、簡単に礼を述べながら自分のナポリタンの皿を、両手を使ってテーブルの上においた。
「刀真、傍にいた『俺が』じゃない『俺たちが』だよ……。勝手に一人でかかえ込まないで。守りきれなかったのは私も同じ……」
「そうだね」
 漆髪月夜の真摯な言葉に、樹月刀真は静かにうなずいた。
「立ち止まっている暇はないな。そうだな……、まずは、このナポリタンを二人で食べるのが俺たちの仕事だ」
 小さくお腹の虫を鳴らした漆髪月夜に、樹月刀真はそう言った。
「あっ、フォーク!」
 いざ食べようとして、漆髪月夜が今さら気づいて叫ぶ。
「いっけねー。一緒に取りにいこう」
 そう言うと、樹月刀真は漆髪月夜と共にキッチンへと二人でむかった。