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リアクション
七尾蒼也(ななお・そうや)
ゆりかご内でもそっち系の男性囚人ばかりがいるというエリアに俺とパートナーの機晶妃ペルディータ・マイナ(ぺるでぃーた・まいな)はやってきた。
男性同士の囚人が、仲よさそうに身を寄せあい、牢屋内のベットに肩を並べて座っていたり、通路にいる囚人たちもほとんどが男同士の二人組で、腕を組んだり、手をつないでいる者たちもいる。
和やかなんだが、やはり、この風景に違和感をおぼえてしまう俺は、普通なんだよな?
「ペル。こういうのは、どう思う」
「あたしのメモリに録画した映像を後で、推理研のみんなにもみてもらうわ」
「なんか、おまえ、楽しそうだな」
「薔薇の学舎ではこれくらいは日常なんでしょうけど、こうして直に目にするとなかなか興味深い。
もっと過激なのは、人にみられない場所で、とか」
「はぁ。意味がわからんぞ」
いかにもそれ風な男が、俺たちに近づいてきた。
「新入りさんじゃないわね。あなた、見学者でしょ。なにを学びたいの」
外見は若干なよっとした感じの角刈りの少年? だが、口調は完全に女性の、いや、そっち系の男性のものだ。
「あたしたちに興味があるわけ。
ぱっと見、そうはみえないないけれど、もしかして、あなたも」
同意を求められた部分を、まずきちんと否定しておいた方がいいと思った。
俺の身の安全のためにも。
「俺は、違う。
シュリンプについて調べているんだ。彼は美男子で、薔薇の学舎の生徒で、舞台では女性の役を演じたりもしていたようだから、私生活でも、だったんじゃないかと思って」
「EBIに興味があるんなら、彼に直接きいたら、いいじゃないんですかね」
「それはできない。
さっき彼は、大講堂で」
シュリンプが殺害された事実を告げると、少年は瞳を見開き、口に手をあて、驚愕の表情を浮かべた。
「やっぱり、そうなんだ。だから、あの子に近づくと危険だって」
あの子って。
「それは誰のことだ。シュリンプは危険な人物とかかわっていたのか」
「え、え。なんの話。
あたしはなんにも知らないわよ。あんたに教えてあげられることなんて、これっぽっちもありませんっ」
あわてて首を横に振る彼は、やはり怪しい。
よほど、“あの子”が恐ろしいのか、彼は背をむけ、俺たちから離れようとした。
ペルが、彼の肩に手をかける。
「待ってください。あたしたちはシュリンプさんが殺害された事件の捜査をしているんです。
どんなささいなことでも知っていたら、教えて欲しいんです。お願いします」
「ちょっとさわんないでよ。女のクセに。
なれなれしいわね。やめてよ、もう」
人あたりのいいペルがここまで言われるのはめずらしい。
相手が相手だから、しかないか。
悲しげに顔をゆがめているペルの肩を俺は軽く叩いた。
彼は、ペルよりも俺を歓迎してくれる世にも変わった人種なのかもしれない。
「俺はあなたの力になりたいんだ。
さっき、あなたが言った、“あの子”からあなたを守りたい。
あなたがシュリンプのようにならないように俺があなたを守る。
嘘じゃない。
俺を信じて話をきかせてくれ」
隣でペルがあきれているのを感じながら、熱く語ってみた。
いや、実際は、よくわからないんだが、彼みたいな人には、こう言った方が効果があるかもと思ったんだ。
「なにそれ。
あんたがあたしに気があるって意味」
なんで、そうなるんだ。
「恋愛感情じゃなくて、俺は、危険な犯罪者からあなたを助けたいと思って」
「はん。
あたし自身がその危険な犯罪者なのに、あんた、なに言ってるの。
あたしがどうして、ここにいるのか、あんた、知ってるの。知らないでしょ。
ふふふ」
「あ、ああ。すまない。そういうつもりではなくて」
「いいわ。あんたとだけ話してあげる。二人きりで。
今日は、あたしフリーなんだ。時間はあるの。
ねぇ、あたしの部屋へきて。その人は、ここに置いていってよ。
このへんにいられると、通行の邪魔だから、どこか別の場所で待っててもらえばいいわ」
彼の笑顔と、ペルの冷たい視線、俺はどちらも恐ろしい。
「どうぞ。蒼也。いってらっしゃい。
あたしは、先に食事会へ行ってるから。
ごゆっくり。
じゃ、後で」
ペルは、問答無用のそっけない笑顔で、片手を振ると、俺から離れていった。
「邪魔者は去ったわね。さ、どんなお話しをしようかな」
彼が俺に寄りかかってくる。
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