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リアクション
『――UUUU……!』
と、地の底から唸り声が響いた。
それを聞いた契約者たちは思わず息を飲み、窪んだ地面へと視線を向けた。
あの攻撃を受けてまだ立ち上がってくるのか――皆の頭の中にはそんな言葉が過ぎる。
『――GAAAAAAAAAAAAAAAAA!!』
N‐1の咆哮が轟いた。
そしてのそのそとN‐1はその姿を現す。
元々奇怪な姿をしていたN‐1だったが、今はそれをさらに醜いものにしていた。
N‐1を守っていた硬い皮膚はほとんどが焼け爛れ、再生が追いついていない。
皮膚がないので、空気が触れるだけでその身に激痛が走るはずだ。
だが高い生命力はその身に宿すこの怪物は、この程度では倒れたりはしなかった。
しかし受けたダメージはやはり大きいようで、その場からあまり動こうとはしない。
じっと再生の時を待っているようだ。
「――もらったぜぇッ!」
と、いままで仲間たちと一緒に協力して戦っていたゲドー・ジャドウが背中から氷の翼を生じさせると空に舞い上がった。
そして弱ったN‐1へと近づくと、封印の魔石を取り出して封印呪縛の呪文を唱え始める。
「ヒャハハッ、こいつは俺が捕まえてやるッ!」
呪文を唱え終わると、ゲドーが叫んだ。
彼の手にした封印の魔石が魔性の輝きを見せる。
だが、突然伸びてきた触手が彼の手の中から封印の魔石を奪った。
「何ィッ!?」
ゲドーは目を見開いて触手が伸びてきた方へと顔を向ける。
すると、輝夜に支えられて立っているエッツェルの右手首を突き破ってその触手は伸びていた。
「アレを調べてはいけない、研究してはいけない……あなたが人でありたいならば……ね」
エッツェルはそう言うと触手に力を込め、掴んだ魔石を粉々に粉砕した。
すると彼は意識を失ってその場に倒れ込む。
力を使い果たし、気を失ったのだ。
輝夜は驚いた声を上げながらそんなエッツェルを抱き起こす。
(こんなにボロボロになってまで戦っていたのに私は――)
彼女はエッツェルの姿に恐怖してしまった自分のことを深く後悔した。
エッツェルが力を使わなくてもいいように、自分が支えなくてはならない。
輝夜はそう思いながら、倒れたエッツェルを介抱するのだった。
「――今が攻め時だな」
再生の追いついていないN‐1の姿を見て、そうつぶやいたのは源鉄心。
彼は敵を牽制しながら相手を観察し、好機をうかがっていた。
そんな鉄心が遂に動く。
彼は銃型HCを取り出すと、上空に待機していたティー・ティーに連絡を入れた。
「ティー、作戦通りに行くぞ」
「わかりました、鉄心」
ティ=フォンでの通話を終えたティーは空を飛翔してN‐1の真上へと向かう。
鉄心は地上を走りながら仲間たちに声をかけていき、N‐1を一気に畳み掛けるための布陣を引いた。
「作戦開始だ……!」
鉄心はそう言うとN‐1に向かって魔導銃を放ち、敵の聴覚を誤魔化すような弾幕を生み出した。
するとそれを合図にして他の契約者たちも一斉に行動を開始する。
博識な鉄心は、N‐1の最大の武器がその”再生力”であると見抜いた。
だが先ほどのエッツェルの攻撃でN‐1は見るからにその力を落としている。
全員の持てる力を合わせて先ほどと同等かそれを超える攻撃をN‐1へと叩き込めば、今ならば確実に敵の再生力を超えて倒すことができる――鉄心はそう踏んでいた。
「このチャンスを逃しはしない」
鉄心はそうつぶやくと弾幕援護を続ける。
『――GUUUAAAAAAAA!!』
迫り来る敵たちの臭いを嗅ぎつけたN‐1が吼える。
――すべてを喰らう。
ボロボロになりながらもN‐1はその命令を実行しようと動き出した。